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居候日記  作者: narrow
27/95

続き 3

    ◆

 ふだんより少しうっとうしさが増している気はしたが、その日眠るまでレイに変わったところはなかった。

 圧迫感を感じて、零は目を覚ます。

 レイがいた。

 上から、零の顔をのぞきこんでいる。

 憎らしげに自分を見る暗い表情は、とても彼女とは思えない。

 彼女は、自分の隣で寝ている。

 しかし、今ベッドの横に立って零の顔をのぞきこんでいるのも、レイだ。

 これは生霊、と呼ばれるものだ。

 強い思いに支配されて、無意識に憎い相手や、愛しい相手のもとへ精神だけがさまよい出てしまったりするもの。

 これだけ近くにいながらそんなものが出るのは、理解できないが。

 「なんだよ、言いたいことがあるなら直接言えよ。」

 カラダから抜け出るほど、何を思いつめるというのか。

 心当たりがあるとすれば、今日遊びにきたユゥのこと。

 しかし、まさかあんな小さな子供に、そこまで対抗心を持てるものだろうか。

 疑問に思いながら零は、とりあえず説得してみる。

 「戻れ、カラダに。そんなんでフラフラしてると簡単に死ぬぞ。言いたいことがあるなら明日きく。」

 冷たくみえたレイの顔が、やや見慣れているスネた表情に変わる。

 零の顔をのぞき込むのをやめると、両手をグーにして、ばたばた腕をふりまわした。

 まるで、だだをこねる子供だ。

 「お前なあ・・・」

 子供、なら子供にライバル意識を持つだろうな。

 半身を起こし、ちょいちょい、と零は小さく手招きした。

 レイは、ばたばたをやめるとふくれっツラで零を恨めしそうに見た。

 零は、なおも手招きする。

 口をとがらせた表情で、レイが顔を少しだけ近づけてくる。

 手招き。

 レイがさらに顔を近づける。

 そのアタマを、よしよししてやる。

 一瞬びっくりした顔をしたレイだったが、零の目を見て、ゆっくり満足そうに笑った。

 声は出ないようだが、笑うカタチに口が開いている。

 両手を広げて、大の字に背中からベッドに飛び込むと、そのままカラダに戻ったらしかった。

 寝ているレイ以外に、部屋にはもう誰もいない。

 彼女なりに、無理をしていたのだろう。

 心と体が、バラバラになるくらい。

 「そこまでガマンすんなよな・・・。メンドくせぇ。」

 面倒といいながら、改めてベッドにもぐりこむ零の口元は少しゆるんでいた。

 つまりは、それほどまでに想われているのだ、と。

(続)

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