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居候日記  作者: narrow
24/95

4 オトナ、とかコドモ、とか。

 後になって思えば、前日

 「こないだユゥちゃんに言ってた“彼女”ってぇ、もしかして、やっぱり・・・あたしだったり…する?」

 期待をおさえきれない顔で訊いてきたレイに、テンション激低で

 「は?」

 と、返したのも、無関係とはいえないのかもしれない。

    ◆

 いつも家にいる零を気づかう、というよりレイはただデートがしたいだけだった。

 「ねぇ零さん、あした映画みにいこっ、映画。」

 情報誌を手に、レイはうきうきした表情をしていた。

 「ぁ?」

 それに対して、零は声のトーンで小さくウンザリしていることをアピールするだけだ。

 「これこれー、あたしこれ見たくて、ちょっと付き合ってほしいなーって。でぇ、できればその後一緒に買い物とかー、ね?」

 ここで遠慮するのなら、最初から話しかけないほうがマシだ、とレイはさらにおねだりをくりだす。

 零の方には、使い魔の契約によりじわじわと義務感が生まれ始めていた。

 淡いそれは、従わなければ落ち着かないものの、無視しても影響はない。

 というのも、レイの言葉は決定を相手にまかせたもので、どう聞いても命令には聞こえないからだ。

 命令であったとしても、すぐに零は撤回させてしまったりするが。

 その交渉は、多少の精神力を必要とするものの、反抗にはならないようで、特に不利益は生じなかった。

 この場合もそうだ。

 「気が進まない。あきらめろ。」

 交渉というよりは、逆にこちらのほうが命令にきこえる。

 「えー、とりあえずほら見て見て、これ!」

 すぐ隣にくっつくと、レイは雑誌を零の目のまえに持ってくる。

 零の小さな舌打ち。

 「近い近い、・・・ん?これは・・・おい、こっちにしろ。これなら見に行く。」

 「・・・え?マジで?・・・って、えー?これえ?」

 一瞬喜んだものの、零の指差すタイトルを見て、驚きつつあきれた声を出すレイ。

 そのレイに、あぁ、と答えた零の顔が真剣だったため、渋々“それ”を見に行くことにしたのだが。

    ◆

 次の日、レイが起きると零の姿はなかった。

 ボーゼンとし、考える。

 デートすっぽかされた?

 いやいやいや、だって自分で見に行きたいって言った映画だし。

 でも、油断させておいて、とかあの人ならやる気がする。

 えー、超ショックなんですけどお。

 てかやっぱあたしの事なんか全然、なんとも思ってなかったんだぁ。

 零さんにとってめんどくさいんだ、めんどくさいんだあたし。

 ぐるぐると悲観的なことを考え、レイが泣き出しかけたころ、玄関のドアが開く音がした。

 白い顔がのぞく。

 「零さん!」

 ベッドから玄関へ駆けだす。

 「な・ゆ・た。」

 軽く迷惑そうな顔をした零のうしろには、なぜかユゥちゃんがいた。

 「おはよーレイちゃん、ねー髪の毛くらいとかせばぁ?きゃはは、アタマはねてるぅ」

 「ゆーっ、ちゃっ、えっ?!今日、どしたの・・・」

 からかわれたのに気づく余裕もなく、レイはカミカミで質問するのが精一杯だった。

 「今日はぁ、なゆとデートぉ!きゃーっ、きゃははは!」

 自分の声よりさらに高いユゥちゃんの声が、寝起きのレイの耳にキンキン響いた。

 「デートって、なゆくん、そうなの?」

 デートは、あたしとじゃないの?

 とは思ったが、状況からして間違いない。

 間違いないが、抗議の意味をこめてレイはきいてみた。

 「そうだな。それから、学校のことは心配ない。担任には、俺からよく言っておいた。」

 そういえば今日は平日なのだが、どうもユゥちゃんを学校から連れ出してきたらしい。

 零の言う、よく言っておいた、とは多分、暗示をかけてユゥちゃんがいると思い込ませたとか、まあつまり“そういう”ことだろう。

 ということはレイの今日の役割は、ユゥちゃんと零の保護者になることだ。

 デートじゃない上、子供をつれて電車で映画館へ行って、きっとお金も自分もち。

 文句を言おうとしたレイを、零が制した。

 「ユゥも好きなんだよ、“アンパンジャー”」

(続)

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