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居候日記  作者: narrow
14/95

続き 5

   ◆

 「零さん・・・何ソレ・・・」

 レイが呆けた声でたずねた。

 「大盛り。」

 「や・・・にしても

  ちょっと盛りすぎ

 じゃ、ないかな・・・それ」

 キッチンから零が運んできた2人前のハズのスパゲティ。

 それは片方だけ異様な量が盛られており、少しでも振動を感知しようものなら、ただちに大崩壊を起こしそうに見えた。

 その異様なスパゲティを絶妙なバランス感覚で運んでくると、零はそれを自分のほうへ置いた。

 成長期ってことなのかな、と

レイは思ったが、怒られそうなので言わない。

 がつがつ、がつがつ。

 いつもと同じ無表情、無言で零がスパゲティをほおばる。

 その動きはイライラとせわしなく、あわただしい。

 「何か、急いでるの?

       零さん。」

 「・・・別に。」

 せかせか、がつがつ、せかせかがつがつがつ・・・。

 子供の体には多すぎる量のスパゲティが、みるみるうちに減っていく。

 「ヤケ食いみたい。」

 イライラと大量の食事をたいらげる彼を見ての、素直な感想に意外な反応が返ってくる。

 「正解。」

 「え・・・。」

 一言だけで答えると、零はまた続きを口に運び出す。

 とても人間くさい行動が意外

すぎて、レイはポカンとして

しまう。

 そうなりながらも、もりもり

食べている彼を見ていると、

なんだかすごくおなかがすいて

いる気がしてきて、自分の分に

手をつけた。

 零の作る食事は、特別うまくもマズくもなく、実はレイ自身が作るもののほうがおいしい。

 それでも、彼が作ってくれたというだけでレイにとってはゴチソウだ。

 だから、彼女はその本当は大しておいしくもない食事を、おいしい、と思いながら食べる。

 「ん、今日のもおいしー。ねぇ零さん、なんでヤケ食いなんかしてんの?」

 「イライラしてるから。」

 それはそうだろうが、こういう場合はそのイライラの原因を答えるべきだろう。

 零は、答えをはぐらかしていた。

 なぜなら、説明が面倒だから。

 だが、レイのウザさはそんなことではごまかせない。

 「なんで?」

 きょとんとした顔で、彼女はつっこんでくる。

 答えずに零は、残り少なくなってきたスパゲティを口につめこむ。

 無視されて、やっと、レイはきいちゃいけない事だったのかな、などと考え始めた。

 彼女がまだ三分の一も食べないうちに零は食器を片付け始め、冷蔵庫からなにか出してくる。

 「チョコレートプリン・・・。」

 可愛い!という言葉をのみこんで、レイは彼が出してきたものの名前をつぶやく。

 確かに子供がプリンを食べる姿は可愛らしいのかもしれないが、とんでもない量のスパゲティを一気食いしたあとにプリン、というのはそれにあてはまるのだろうか。

 その後、彼はさらにミルクプリンにイチゴプリンにマンゴープリンを、冷蔵庫から出しては食べ続けた。

 ただ、最後のマンゴープリンは失敗だったようで、一口食べるとスプーンがとまった。

 「あれ?どしたの?おいしくない、とか?」

 レイの言葉に、やや渋い表情をして無言でうなずく彼。

 「あの、いらないんだったら・・・それ、ほしーなー・・・。」

 やはり無言のまま、彼がプリンをレイのほうへ押しやった。

 「やったぁ!」

 レイはマンゴープリンがキライではなかったし、零の食べかけというのも実はちょっと魅力だった。

 子供のように、たかがそのくらいのことではしゃぐ彼女を、ホンモノの子供にしか見えない零は少しあきれた目で見る。

 「ところで、なんで普通のプリンは買わなかったの?売り切れ?」

 「好きじゃないんだ。」

 じゃあなんでわざわざプリン買ったのかなー、と思うが、機嫌をそこねたくないのでツッコまないでおいたレイだった。

(続)

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