続き 2
ユゥちゃんの母親も、当然自分の娘が心配になった。
まさかあの公園で遊んでいやしないか、と。
「ううん、行ってないよ。」
ユゥちゃんはウソをついたが、彼女の母親は自分の望んだ答えに疑問を持つことをしなかった。
「そう、暗くなくても
そんな危ないところに
行っちゃダメだからね?」
「うん!」
そうして彼女は、今日も公園にいる。
オバケが怖くない
わけではない。
けれど、昼間の明るいうちならきっと大丈夫だと思っていた。
どうしてもどうしても、また、 なゆた に会いたかった。
ただ立っているのもタイクツになり、ブランコに座って、少しゆらしてみる。
ゆらゆら、ゆらゆら。
とん。
背中に何かがあたり、ブランコが大きく揺れる。
「え?」
自分以外いなかったハズの公園で、何が背中を押したのだろう、と振り返る。
影が立っている、ように見えたのは一瞬。
「なゆ!」
上下とも黒い服に身をつつみ、太陽の似合わない青白い顔をして、ずっと会いたかった彼は、唐突にそこにいた。
「これ、
ゆらすと楽しいんでしょ?
もっとゆらさなきゃ。」
ずさっ。
彼の言葉に逆らおうとしたわけではないが、ユゥちゃんは地面に足をつき、ブランコを止めた。
もちろん、彼の顔を見て話すため。
「なゆ、あのねっ、
ユゥちゃんねっ・・・!」
嬉しくてたまらないユゥちゃんに、なゆたが優しく笑いかけた。
何か言うでもなく、鎖に手をかけると、ユゥちゃんの乗っているブランコのあいたところに片足をのせ、もう片方の足で地面を蹴った。
止めようとするユゥちゃんなどまるで無視して、二人をのせたブランコは空へ向かって飛ぼうとするように動いた。
「きゃーぁあ…ぁははは!」
急に速く、大きく動いたブランコに一瞬悲鳴をあげたあと、体全体に感じる風や、流れては戻る景色に、ユゥちゃんは楽しくなって笑い出す。
なゆた も、楽しそうな声を出す。
「あっははは!
ぁあ、気持ちいいな!
…ほら、もっと高く、いくよ!」
「キモチいーねーぇ、
あはははは!!」
風、景色、スピード感、ユゥちゃんの”キモチいい”はブランコで遊ぶことを言っていた。
なゆた の“気持ちいい”は、別の理由。
彼はユゥちゃんがあふれさせる”楽しい”、という気持ちを喰って快感を得ていた。
「ねえ、なゆ次はオニゴッコ!それで、その次は、んと、かくれんぼしよう!」
「ん。」
低く、けれど機嫌よく答えた彼の声をユゥちゃんの笑い声がかき消していく。
「きゃあはははっきゃーっ!」
「ふふふ・・・あははは」
軽やかな笑い声がまったく彼らしくないことに、小さなユゥちゃんは気づかない。
ただ、大好きな彼と再会できた喜び、そしてその彼と思い切り遊ぶ楽しさに心を奪われていた。
(続)