続き
◆
今日も公園に、女の子はいた。
カレシを待っていた。
急に会えなくなってしまった、大好きな人。
「なゆ、なんで公園こなくなっちゃったのかな。」
きれいな顔をして、体の弱そうな彼は、 なゆた と名乗った。
一度だけ、彼の家に遊びにいったことがあった。
けれど、そこへ向かう間も彼と話すのに夢中だった彼女は、その詳しい場所を覚えていなかった。
もしも彼女がそれを覚えていたとして、訪ねれば彼は喜ぶでもなく、ただ彼女の記憶を消してしまうだけだろう。
彼女、ユゥちゃんは、自分の待っている相手が魔物であることを知らない。
けれど、来ない人を待ち続ける日々よりは、忘れてしまったほうが幸せかもしれなかった。
「ユ・・・ちゃーん」
不意に聞こえてきた遠い声は、男の子。
「なゆ?!」
ユゥちゃんは、大好きな人の姿を探す。
けれど、そこにやってきたのは昨日一緒に遊んだ男の子だった。
「はぁ、はっ・・・
何してんの?」
公園の外から走ってきた彼は、やや息を弾ませながら言った。
「カレシ待ってるっていったじゃん!」
がっかりした彼女は、ついキツい言い方になる。
「ダメだよ、ここ、ホントにオバケでるんだよ!ぼくたちと一緒に違うとこであそぼ?」
「なにそれ。明るいからヘーキだよ!」
ユゥちゃんは男の子の誘いをつっぱねる。
「だって、オバケみておかしくなっちゃった男の人が入院したんだってよ?」
「男の人ってだれ?」
「知らないひとだけど、
ホントだよ!
学校の先生がいってたもん。」
学校の先生が、生徒にそんな話をするわけはない。
が、彼は忘れ物を取りにいった時に、先生同士の立ち話をたまたま耳にしてしまった。
先生がウソをいうはずはない。
じゃあ今日はほかの場所で遊ぼうよ、という話になり、みんなで歩いていたところユゥちゃんを見かけ、声をかけたのである。
公園の外では、彼のトモダチが怖々公園の中をうかがっている。
「やだ。
ユゥちゃんいかない。」
言ったあと、彼女はどんなに男の子が説得しても、首をタテに動かすことはなく、男の子は他の友達に呼ばれるまま、なごりおしそうに去っていった。
ずっと、ずっと彼女は待っていた。
友達の誘いも断って、たった一人、来る日も来る日も。
オバケのウワサのせいで、誰もいなくなった公園にたった一人ぽつんと立つ姿は、まるでとり付かれたように。
公園の幽霊を見ると発狂する
光る子供の生首が飛んでくる
公園の前を歩いていたサラリーマンが幽霊に襲われた
発狂・・・入院・・・廃人に・・・
死にはしないものの、日常生活すらままならないほどに精神を破壊されてしまった犠牲者が、数日おきに一人、二人と増えるたび、ウワサは町全体へと広がっていく。
(続)