雨が続く
雨が続く
昨日から雨が続いて降っていた。
昨日の事は、忘れろと娘に伝えた代官。
山彦も間違えて森に入ったと言っていた。
縄文の森は、得体が知れない。
もう代官は、相手にしなくて良い。
彼らは我々とは違う所で生きている。
そう考えていた。
朝の食事で、忘れろと言われてしまった。
しかし桜は、名前も知らない森の男への憧れが膨らんでいた。
あの方は、優しい声で話しかけてくれた。
世界を知っていた。
雨が強く降っていく。
縄文の森では、雨が強くなるのを恐れて懸命に動いていた。
山彦は、それぞれの小屋を周り、足りないものが何かないか、手伝えることがあると…手を出し、歩き回っていた。
春の嵐のような雨になっていた。
兵達は、待機場所に集まっていて、縄文の森について話し合っていた。
「奴らは、許せない。」
「あんな奴ら、戦えば勝てるんだ。」
「森をゆっくり攻め込めば、いいんだ。」
冬が過ぎ、春になって現場の兵達が、言うことを素直に聞かない縄文の森の事を敵視する。
連中は、大いに怒りを盛り上げていた。
集落を周り、雨の強さを確認した山彦は、ようやくひと息を尽き、例の穴に入って行った。
「婆様、雨が酷くなったが、何とか準備は整ったぞ」
「ご苦労だったのぉ。山彦、昨日の昼過ぎ、大変じゃったな。ようやった」
何かと別なことがあったか?
山彦は何をしたのか忘れていた。
「屋敷の娘を助けたじゃろ」
あ、山彦はやっと思い出した。
今日の雨の騒動ですっかり忘れていた。
あれは、当たり前の事をしただけだ。相変わらず、キョトンとしていた。
「山彦よ、お主はそれで良いが、罪な事をしたな。騒が起こるかもな」
婆様は娘の思いや兵達の心の動きが気になっていた。
兵の心の動きは、春の嵐より大変だ。
理を崩してるのは奴らの方なのに。
人の動きは、ままならない。山彦は、何が起きても受けて断つしかないと、覚悟していた。
雨は春の嵐。
雲が流れてしまえば、晴れ渡る。
夕方には佐久平が真っ赤に染まっていた。




