冬のある日
冬のある日
代官は、仕方がないんだ。いまは冬に入ってる。だから仕方がないんだ。
思考回路は止まったままだった。
冬が始まり雪が降ったが、余り積もらない。この地の事情だった。とはいえ、寒かった。
娘の桜は、朝、起きるのに苦労していた。目が覚めると顔が寒い。身体を布団の外に出せない。
ようやく起き上がり、服を重ね着し、身体を動かします。
朝食を父の執務室で、二人で食べます。ここに来て出来た習慣でした。
「お父様、縄文の森の人は来ないの?」
「仕事の話をしたくない。」
代官は、先程仕方がないと考えた問題を再び考えた。
春だ春になれば会うんだ。冬に知らない森には入れないから、仕方がないんだ。
そう思い直し、娘に告げた。
「ごめんな、強い言い方をしてしまった。急に話を振るからだぞ。縄文の森の人は春だ、春になったら会えるさ」
娘は、急に明るくなり、話を留めました。
外では日が昇り始めていた。
縄文の森の雪は少し多かった。
雪の量が多く、しかも溶けない。
山彦は、いつものように婆様の穴へ入った。
「婆様、山の雰囲気はどうだい、落ち着いたろ」
婆様はニコニコして答えた。
「熊を使って脅すとは、お前も森を支配できるようになってるな、感心したぞ」
婆様の言葉に、あれは森のルールを教えただけだ。山彦は、婆様の言う通りに動いただけだ。そう思って、集落へ向かった。
小屋では、長靴のようなものを乾燥させた草を編み込んでいた。蓑笠のようなものも、乾燥した草で編まれていた。雪が深くなる為の準備だ。
山彦は、集落を見て回っていた。
皆は落ち着いているようだ。代官が来た事は、我々の暮らしを揺るがせない。山彦は、自信がもてた。
歩いてると、小屋の中から老人が出てきた。
「族長、余所者が来て、米を取り上げた。佐久の集落では、受け入れられてるのか?」
「爺さん、俺も観察中だよ、争いは起きてないみたいだな」
山彦は、警戒は続いていることを告げる。それは、集落を守るための工夫でもある。
浅間山は噴煙を上げている。
そして、雪が降ったり、晴れたり、寒さは厳しいが、穏やかな日々が続いていた。
桜は、外を見あげ、浅間山の噴煙を飽きずに見ている。
縄文の森とは、どんな所なのだろうか。彼女は、想像するしか無かった。
縄文の森では動物と話す人がいるのかか。これまで見たことのない花が咲くのか。想像は尽きない。
今まで近畿圏での代わり映えしない日々に比べれは、まだ見ぬ未開な世界がそこにある事に、ワクワクせずにはいられない。
森は静かに、その時を待っているようだった。
青い空が明るく光り、自然は沈黙を続けていた。




