縄文の森の人
縄文の森の人
代官は兵に縄文の森を任せ、黙って任せていた。
代官には、娘がいた。
連れて来ていた。
本当は長男が必要だったが、娘が生まれた後、妻が死んでしまった。
娘は、15歳になっていた。
近畿圏の中のかなり上の位の息子として育ち、早いうちから政治を学んでいて、難しい土地として、佐久平に東山道の管理を含めた佐久平の代官に抜擢されていた。
娘は乳母によって育てられ、朝、食事をする時に会うぐらいだったが可愛い存在ではあった。既に跡継ぎで家を守ることは、考えてない。娘の自由にさせてやりたいと思う代官だった。
娘の名は桜といった。
桜は、自分の名前が好きな桜の花の名である事に加え、植物や小鳥などに興味を持つ女の子であった。
実りの秋なのに、既にこんなに寒い事にガッカリしていて、春が来ないかと待ちわびていた。
しかし浅間山の噴煙や深い森の存在には関心があった。
そんな時、兵が縄文の森という所に居るらしい山の民を捕まえようとしていた事に気が付いていた。
父が、朝、顔を合わせると、イライラしているのが分かった。
そして三日目に大きな異変が起きたのであった。
縄文の森ては、婆様が山彦に伝えていた。
「山彦、そろそろ顔を見せてやれ、兵がイライラして森に被害が出てもつまらん。顔を出して、来るなと言ってみい」
山彦は、脅して良いんですねと、断り、婆様のアナから出て行った。
自分たちの小屋のある方向とは違う深い森に兵のリーダー的な男を見つけ、誘い出した。背中を見せて、追いかけさせ、振り向いた。
「兵隊さん、ここには来るな」
と、山彦は振り返りさまに言った。しかし、この野郎、と兵は追いかけてくる。サッと木の陰に隠れると、兵は見失って、キョロキョロしてる。すると、突然、後ろから出てきて山彦が、低い声で、また告げる。
「縄文の森は、お主らを嫌ってる。もう来るな。熊様が怒ってるぞ」
と、山彦が消えた。
兵は、何処に行ったと、またキョロキョロすると、木の深い部分がブァッと黒く大きなものが、飛び出してくる。
熊の冬眠用の穴の傍まで、引っ張ってきていたのだ。熊は冬眠前の興奮状態で兵を襲う。反対側は、来た道が真っすぐだったので、慌てて逃げて、何とか逃げられた。
空は、すっかり暗く厚い雲が広がっており、雪が振り始めていた。
仕方がなく、屋敷に戻り、代官に謝るしかなくなっていた。
「代官様、申し訳ありません。縄文の森は、深すぎて熊に襲われてしまいました。」
頭を下げ、謝る兵に何も言えない
「縄文の森の者に、来るな入るなと言われました。どうしましょう。」
何と、目の前に出てきたのか。
動きが早すぎて捕まえるどころでは無かったと兵が言ってきた。
少し考えて、代官は言ったのであった。
「もう雪だ、来年の春以降にいたそう」
白い雪が辺りを白く染めていた。




