探索
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代官は、ふと自分に戻ると、山の民の話を思い出していた。
近畿圏は、山の大巫女の筋があって、山の民とは仲良くしていたはずだと思い始めていた。
兵のひとりを呼び出し、命令する
「山の民を捕まえて、話がしたい。頼めるか?」
兵は、山の民といっても平民だろう。
何も出来ないはずだから、4、5人連れて行って、捕まえてきます。
と、我々は戦う兵ですよ。捕まえるのは、楽だと思います。
「そうか、やってくれるか。頼む」
兵は大きく頷き、出て行った。
一方、山彦が、婆様と話していた。
「山彦よ、戦うなよ」
何故だ、蹴散らしたら良いじゃないかと、山彦は訴える。
「来たものと戦ったらキリがなくなる。良いか、戦うな」
山彦は、確かにキリがなくなるという言葉にハッと気が付き、頷いた。
集落の皆を集めて、話した。
「婆様が戦うなという。俺も戦うのはキリがなくなると思う。だから、見張り役のものは、新たな道を作り、惑わすんだ。他の者は、壁に土を塗り、落ち葉を貼り付けろ」
皆は、それぞれ、動き出した。
道を作るものは、獣道を利用して、葉や木をきり倒して、土をならして、別の道を作る。谷底だったり、違う方向へ導いたりの道だった。
土壁は、湧水や川の水を使い小屋の壁に土を塗り、落ち葉を被せた。
良いカモフラージュが出来た。
その頃、兵へ4、5人を連れて、縄文の森へ入ろうとしていた。
出来た新たな罠の道に立って、待っていた。
簡単に誘われ、兵は苛立っていた。
戦えば勝てる。
彼らが準備をしているとは思わなかった。
彼らの小屋まで辿り着ける者は居なかった。
夕方になっても道が分からなくなる。
兵は暗くなると、山を降りた。
縄文の森の冬はもうすぐ来る。
兵は代官に報告した。
「縄文の森は、簡単には入れません」
「何故じゃ」
道がないんです。行けども、道が塞がっていて、集落も見れませんでした。
もっと深く入るには、何日か必要です。と、悔しそうに兵が答える。
「もうすぐ雪が降る。早めにな」
兵は、山の民などほっとけば良いと感じていたが、代官の命令なので、大きく頷いた。
その夜の月は高く、満月だった。




