接触
接触
代官は落ち着くと、兵に命令した。
「税を徴収してこい。」
そのひと言に、気がついたように続けた。
「大王様は、優しくしろと仰せだ。」
近畿圏の王の言葉は、あくまでも徴収を力で収めてはならないと言ってる。本当にそんな事が出来るのか?
しかし兵には、集落の長と話をして、上手く集めて参れと、言い切るしかなかった。
山彦は、婆様のところにいた。
「これからどうする」
婆様が、答える
「そうじゃな。佐久平を治めに来たんじゃろうから、米を巻き上げるんだろうな」
米が佐久平の主食で冬越しにも重要なものであることは、理解していた。
しかし、何処からか、やって来て、米を作るんじゃなくて、取っていく。
理屈が分からん。
「代官たちは兵がおるじゃろ、兵の力で支配する為に、税として米を取るんじゃ」
兵の力?そりゃ兵は強いかも知れんが、
政治じゃよ。と婆様はいう。
理解はできないが、支配がそうさせるのかと理解するしかなく、冬の前の忙しさから、穴から出でいった。
冬は待ってくれない。
集落では、果物や木の実を取って、水に晒して、乾燥させる。
動物は狩ったら捌き、日に晒して保存食にする。それぞれの小屋に行っていた。
山彦は、雪が降る前に八ヶ岳に行って石を貰ってくることにした。
これも冬越しの準備だ。
何時もは、力の強い男を伴うのだが、代官が来た事で佐久平の様子が読めない。
そこで女を誘うことにした。
彼女は素早さで、狩りの仲間であった。
「リカ、今日からよろしく」
「族長、私で良いんですか」
疑問は最もだ。山彦は、佐久平の様子を伝え、兵と打つかるかもしれない事を伝え、逃げる時には別々に走ることを伝えた。
集落を避けて、八ヶ岳に向かった。
佐久平では、兵が集落から米を荷車に載せているのが見えた。
「族長、あれ何してんですか?」
「米を集めてるんだそうだ」
何で、そんな事してるのか?には、答えられない。
とにかく急いだ。
佐久平の北側を通り、出来た屋敷の外側を八ヶ岳に目掛け、走った。
肉の乾燥したものを担いで急いだ。
立科まで来ると一休み。夕方になっていたので、野営した。
翌日、八ヶ岳の岩の採れる部落は、密かに暮らしていた。
そこで加工した石を幾つか干し肉と交換して、一晩泊めてもらった。
佐久平に入るのは直ぐだったが、慎重になっていたので朝早く出発し、佐久平に出た。
石を担ぎ、早足で歩いていたら、兵達が荷車を引いている所に打つかってしまった。
山彦は、声をかけた。
「リカ、真っ直ぐ行け、俺は兵の横を抜ける」
とっさの判断だった。
リカは、真っ直ぐ縄文の森方面に入って行った。
山彦は、わざと、兵達の荷車に突っ込む形でスーッと横を通り抜けた。
「何者」
と、怒鳴る兵には見向きもせずに、抜け、まんまと縄文の森へ入った。
兵達は、何が起きたか分からなかったが、荷が盗まれなかった事に安堵した。
あれが縄文の森のものかもと考えたが、代官の屋敷に向かった。
代官は、最後の米の収穫に安堵していた。雪が来たら動けない。
最後の兵達に向かって安堵の意を告げると、兵が切り返した。
「代官殿、多分、縄文の森の者とすれ違いました。」
「縄文の森の者?」
兵は集落から聞いたことに答えた。
「縄文の森の者たちは、浅間山の森深くに住んでいるもので、この屋敷の建築の時も来ていたそうです」
「浅間山の森の奥、、、そんな所に人が居るものか」
いや、確かに集落のものが、と兵は口もごんだが逆らわず、下がった。
代官は初めて聞いた森に住んでいる。いや、確かに昔は森に住むものがいたと聞いたことがあったな、、、
米の収穫、さらに近畿圏への奉納の準備、することが多かったので、考えを止めた。
浅間山の森の先で、噴煙が上がっていた。




