近畿圏の女
近畿圏の女
代官が屋敷を空けている。
冬の夜、カンタが山彦の所に駆け込んできた。
「族長、どうしましょう。兵の一部が代官に断りもなく、集落のひとつに入り込むらしいです。」
「裏切り?か。」
「どいつだ。分かるか?」
「はい、かつて、3人組で戦いに来た頭の兵士です。始めから狙ってたみたいです」
「よし分かった。誘われても適当に誤魔化して、屋敷に留まれよ」
「いまなら、誘われてますから、裏切り者に付いていけますよ。」
「良いんだ。代官は、確かに弱腰だったが、近畿圏の力は上だ、屋敷にいろ」
肝心なのは近畿圏の動きだ。
と山彦は言い切った。
カンタは、山彦を信じ、急いで戻る。
翌朝、代官の屋敷の待機所に集まる数人の兵士。
屋敷の者達は、何が起きてるか分からない。
総勢15名の兵が、佐久平の集落に向かった。
カンタは、誘われたことも含め、黙って見送っていた。
佐久平の集落は点在していて、この3年で兵は、自分たちで纏められそうな集落を決めていた。彼らにも近畿圏との繋がりがあったのだろう。
佐久平でのこのような動きは、諏訪湖でも山梨方面にも伝わっていた。
浅間山という自然の脅威が目の前にあるが、広い平地の豊かな土地は、狙い目の場所であった。
しかし、動きはこうした動きは、伝わるが、動くにはまだ時間がかかった。
縄文の森の穴の中、婆様と山彦が話し合っていた。
「婆様、動いたぞ、裏切りだ。」
「裏切りとは違うかもな。多分その兵達にも近畿圏のつながりがあるんだろう。佐久平は、広い」
「という事は、他からもまだ来るのか?」
「そう成るじゃろう。」
こりゃ徹底的に隠れる必要があるな。
山彦は、隠れ里としてのこの集落を守らねば、世の中の動きに巻き込まれる。
婆様の穴はかなり深い所だが、集落の維持の為には、集落の場所をもっと深くに、移していく必要を感じていた。
春になり苗木を育てる時期になり、代官が戻ってきた。
山彦は、行列が戻るのを見ていた。
パカ、パカ、パカ
行列を見て、兵が増えている事に気が付いた。
《こりゃ、婆様のいう通りだな、裏切りというより、増殖だな》
荷車も多い。
四角い大きな箱のような荷場所も来た時と同じだ。
《あれは、娘が乗ってたよな、帰ってきたのか?》
4年目の行列は、民たちにも知れ渡り、見に来る連中も増えていた。
山彦は、見に来てる皆の姿を真似していたので、区別がつかない。
屋敷の門の近くで、眺めることにした。
四角い大きな箱が入って来た。
代官が降りてきて、次に現れたのは、娘じゃない。
黒髪のスラッと伸びた。いかにも雅な女性であった。
これが、近畿圏の女か。
山彦は、威圧とは別の圧倒する力を感じ、立ち尽くしてしまった。
春になった、明るい日差しが差し込み、緩やかな風を感じていた。




