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第6話:医者の言葉

冬の光が差し込む病院の待合室は、放課後の校舎とはまったく違う冷たさに包まれていた。床のタイルは冷たく、壁の白さがまぶしい。僕は手のひらに汗をかきながら、椅子に座る。

隣には、いつもの黒髪の少女――ミナが座っている。手を重ねると、指先がわずかに震えた。冷たくも温かいその感触に、胸が締め付けられる。


診察室の扉が開き、医者が静かに出てきた。僕たちは無言で呼ばれるのを待つ。

「ミナさん、少しお話があります」


診察室の椅子に座る。医者の声は優しいが、その口調の奥に冷たく現実的な重さを感じた。

「病状は思ったより進行が早く、長くないかもしれません」


言葉が頭の中で何度も反響する。空気が急に重くなる。

僕は呼吸を整えようとしたが、胸が押し潰されそうで、言葉も出ない。

ミナはノートに何かを書き、僕に差し出す。そこには小さくこうあった。


> 「最後まで、一緒に曲を作ろう」




胸の奥に熱いものが込み上げ、視界がにじむ。僕は言葉を飲み込み、指先で彼女の手を握り返す。

冷たさと温もりが混ざり、震える鼓動が互いに伝わる。部屋の空気が厚く、息が詰まるようだった。


僕たちは病室ではなく、心の中にあるピアノ室に戻った。

想像の中で鍵盤に手を置き、音を紡ぐ。右手でトリルを刻み、左手で低音を押す。ペダルの振動が指先に伝わり、残響が心の奥に染み込む。

その旋律の中に、笑顔も、温もりも、焦燥も、すべてが溶け込んでいく。


「守らなければ」

僕は心の奥で強く決意する。

どんなに短い時間でも、この瞬間の幸福を、音楽を、笑顔を、絶対に失いたくない。


外の光はやさしく差し込み、冬の冷たい空気が部屋の中に入り込む。雪はまだ舞っていないが、冬の匂いが指先に伝わる。

僕は彼女の小さな手を握り、音を紡ぐ指先に自分の想いを重ねた。


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