第10話 裏切りの兆し
鈴は、鳴らさない高さで一度だけ風を渡した。
それが合図のように、王命は三つの方角へ走り出した。霜の峠、灰の渡し、薄紅平原。峠には柵の杭が運ばれ、渡しには角を残した石が積まれ、平原には夜だけ灯して消す囮灯の藁が束ねられた。都では労役の募集が始まり、門の紙片は昨日より一枚多く配られ、倉の前の広場には薄い列が、朝の冷えに肩を寄せ合って伸びた。
手は動く。声は短い。紙は薄い。――すべてが、動き出したはずだった。
最初にずれたのは、数字だった。
倉の受け渡し台帳は、乾いた紙の上に規則的な線で並び、出納官の癖字が一定の間隔で続いていた。三十俵の粟に小さな点が打たれ、その横に「運搬中に紛失」と記される。翌日には、麻袋ごと十俵が「虫害として廃棄」。字体は同じ、墨の濃さも同じ。だが、行の余白が一箇所だけ狭く、数字の腹の膨らみが別の日よりもわずかに細い。楓麟は眉をひそめ、筆の腹を視線で摘まむようにして台帳をしばらく眺め、それから何も言わず、出納官を静かに更迭した。
同時に、密偵頭に命が飛ぶ。倉周辺に二重の張り番を置き、倉印と同じ形の「偽の倉印」を数種、わざと控えめに散らす。出入りする車輪の轍は刻み目の間隔を測り、荷車の板から落ちる木粉の色まで記録させる。車軸に塗られた油が何の獣脂か、その匂いの濃さが昼と夜で変わるか。路地の角ごとに、砂粒の流れを紙の上に写し取り、雨のない都で流れるものは何かを、静かに数え始めた。
夜の回廊で、藍珠が報告する。
「粟と一緒に、武具の油紙包みがいくつか消えた」
白い衣の裾は影になじみ、彼女の声は短い。
「売り払うには目立ちすぎる。内部に運ぶ窓口があるはず」
遥は胸がざわついた。井戸の泥の匂いが、掌の裂け目から再びのぼる。祠の影で粥を煮ていた少年の指。桶の底に落ちた音。
「民が飢えてるのに、なぜ」
吐き捨てるようにこぼれた言葉に、楓麟は即答した。
「飢えは剣より鋭い。『今日を生きる』ために人は明日を売る」
彼の目の灰は薄く、耳の毛は寝ている。冷たいのに、言葉の骨が軋まない。軋まない骨は、腹の中に真っすぐ刺さる。
翌朝、灰の渡しへ向かう労役の列から、怪しい動きが見つかった。配給所で、同じ男が二度、粟を受け取ろうとしたのだ。男の手には「王命の札」があった。札は巧妙だ。印の弧は正しく、墨の濃淡も似せられている。だが紙が違う。王宮の札の紙は、乾いていながら繊維が長い。粗い指で擦ると、指の腹にわずかに糸が残る。偽物は粉の匂いが強く、擦れば粉が落ちる。
取り調べで、若者は震えながら白状した。
「城下の裏長屋で札を配る男がいる。『王はおまえらを見捨てる、紅月に付け』と。粟は倍になる、と」
倍――という短い音の甘さは、舌の上では甘いのに、腹の中では冷たい。
密偵が裏長屋を張る。夜半、黒衣の影が出入りする。尾行した先は、王宮近くの文官宿舎。部屋には灯りが落ち、窓は開かない。だが、戸の桟に新しい擦り傷があり、敷居の砂は外へ向かって流れている。内通者が宮中にいることは、もう疑いようがない。
楓麟は直ちに「偽の軍議録」第二案を用意した。霜の峠の兵を意図的に手薄にするふりをする文面だ。書き付けには、敢えて二カ所、別々の文言の癖を混ぜ、紙質は王宮のものと同じ、ただし切り口の角をわざと丸くした。書記机の中でも限られた者しか触れられぬ抽斗の裏へ、楓麟はそれを置いた。翌朝には「消えた」ことにする段取りだ。紙は紙のままで、罠になる。
同じ夜刻。倉の裏門に、馬車が一台入り込む。荷には「虫害廃棄」と墨書きされ、蓋の釘は打ち直された光をわずかに返す。張り番の合図で路地の両端が静かに塞がれ、藍珠が前に立った。外套の影が揺れ、刀の柄に触れる手は、まだ刃を求めない。
馬車から転げ出たのは、中堅の会計官と、倉番頭の甥。顔は蒼白で、足の裏の泥は乾いていない。さらに、包みの底から、紅月国製の鐙と革紐が出てくる。革の匂いは甘く、縫い目は白風の職では見ない幅だ。
「虫害廃棄」の印は、新しい。新しい印で古い荷を覆う。覆いは軽いのに、目は重く騙される。
取り調べは苛烈に行われた。だが藍珠は剣を抜かない。
「斬れば口は閉じる。今は『線』を辿る時」
彼女は腕を組み、目だけで男たちの顔の汗の筋を追った。汗は目に入ると痛い。痛みの位置で、嘘の重さがわかる。
吐いた名は少ない。少ない名前は、逆に濃い。会計官が震える唇で絞り出した一語が、場を凍らせた。
「……書記官長」
王命文の写しや印章の管理を握る、実務の要。
薄い息が重くなる。重さは音を持たないまま、広間の床石の隙間へ沈んだ。
楓麟は直ちに書記官長を召す。
書記官長は蒼白な顔で現れ、「誤解だ」「誤解だ」と繰り返した。手は震え、額には脂汗。汗は額の端からこめかみへ流れ、耳の後ろで消える。
楓麟は彼の机に歩み寄り、引き出しの奥の紙屑の中から、昨夜「消えた」はずの偽軍議録と同じ紙質の切れ端を、静かに取り上げた。切れ端の角は丸い。丸い角は、楓麟がわざとつけた印だ。
沈黙。
書記官長は膝を折り、嗚咽混じりに吐いた。
「紅月の将が、私の娘を人質に……。文を一つ写せば、娘を戻すと」
遥は呆然と立ち尽くした。裏切りは、利得だけでなく、守りたいもののためにも行われる――頭では理解できても、胸は焼ける。胸の焼ける匂いは、鉄の匂いに似ている。
「娘はどこに」
楓麟に先んじて、遥の口から問いが落ちた。
「城外の旅宿……『蒼鷺の宿』の裏部屋に」
楓麟は即決する。
「救出する。囮を張る。――王、許可を」
遥はためらいなく頷いた。
「必ず助ける。罪は罪として裁く。それでも、人質は取り戻す」
◇
夜。
旅宿の裏手は静かで、人の気配は薄く、犬の骨の音だけが遠くにあった。屋根瓦は欠け、樋は曲がり、裏戸の蝶番は最近油が差されたように音を立てない。藍珠隊は影の中に溶け、ひとり、ふたりと壁へ貼り付く。
藍珠は刀ではなく短い棍を持っていた。刃は人を黙らせすぎる。今夜は、声を黙らせるが、命は落とさせない。
見張りの隙を縫って、窓から二人、梁から一人。床には砂がない。誰かが掃いたばかりだ。掃いた先は、裏戸ではなく床の間。床の間の脇に、薄い襖が一枚。襖の向こうに人の息の音――細い。
少女は無事だった。口には布、手足は縛られている。目は見開かれているが、焦点は揺れない。藍珠が布を外し、縄を解き、抱き上げる。抱き上げた体は軽い。軽いのに、ここへ至るまでの重さが残っている。
同じ瞬間、旅宿の屋根から狼煙が上がった。黒ではない。灰の細い煙が、夜の風に乗って伸びる。紅月側の合図だ。
城下の数カ所で小規模な火事が起きた。倉の路地の端、商の屋根、門の外の空き地。火は小さい。小さいのに、兵は走る。走れば、空気が乱れる。乱れた間隙を縫って、誰かが王宮の塀を越えた。
痕跡は僅かだ。窓枠に異国製の鉤爪金具が一つ残り、軒瓦の欠けた破片が内側へ落ちている。見張りの兵は誰も倒れていない。倒れていないことが、逆に怖い。狙いはおそらく天印の間、あるいは倉の印章庫。どちらも、王の「印」と国の「印」の在り処だ。
火はすぐに消し止められ、侵入者も取り逃がした。
だが、城は「破られた」という事実に冷えた。石は熱を取り戻すのに時間がかかる。冷えは声の高さを変え、人の足音を固くする。
楓麟は会議の席で短く告げる。
「これで決まりだ。敵は内部に手を持ち、外で圧をかけ、内で根を腐らせる。次の一手は、必ず『王の心』も狙ってくる」
視線が遥に集まる。石の椅子の角が背に触れ、額の布の結び目がわずかにきつい。喉で脈が跳ねる。跳ねた脈を、歯で噛み殺す。
試練は、もう入口ではなく、真ん中にある。
◇
翌朝、倉の裏門には、昨夜の馬車の轍が薄く残り、木粉の筋が風に流れ残っていた。密偵の少年が膝をつき、粉を指に取り、鼻で嗅ぐ。
「楡です。都の南の工房の削り粉」
楓麟は頷いた。
「車輪の輪は、南で打ち直した。――合図の煙は、北の空気に薄い。二つは別の手」
別の手。二つの指が違う方向から同じ喉を掴む。
長風が札を一枚取り出した。札の裏には、歌の短い旋が記されている。
「昨夜、偽の軍議録は三つの旋に分けられて流れました。今朝、紅月の方向から返る風に混じっていたのは――『霜』」
霜の峠。手薄にするふりをした文言に、敵は食いついた。
藍珠は嘴を結び、地図の上の峠の札を指で押さえた。
「囮は囮のままに。実の兵は、昨夜の位置から半歩も動かすな。――ただ、峠の裏の斜面に、石を三つ落とせ。音で数を誤らせる」
軍務卿は黙って頷いた。
商務司の筆頭は、倉の台帳の「虫害廃棄」の行に目を落とし、細い指で自分の唇を一度なぞってから、言葉を置いた。
「虫害の紙の書き付けは、今日から倉ではなく風府で記す。倉の番の筆ではなく、風府の筆で。――粉の匂いは、筆の匂いに紛れる」
楓麟は目だけで礼をした。
王命は紙の上で、一行だけ増えた。
『虫害廃棄の書付、当面、風府にて代行』
城下の裏長屋は、昼間は静かだった。干からびた洗濯物が細い竿に並び、桶の底は白い粉を吹き、戸の隙間からは声が漏れない。密偵は、昼の静けさより夜の静けさを好む。夜は、音が浮く。浮いた音は、拾える。
夜半、黒衣の影が再び動き、今度は文官宿舎の裏ではなく、倉の印章庫へ向かった。扉の錠は重い。重い錠の周りに、新しい傷。傷の角は鋭く、刃は異国製。
楓麟は印章庫の鍵を一晩だけ移した。移した先は天印の間ではない。王宮の北の塔の二階、風が通り過ぎるだけの階段の踊り場にある、小さな扉。扉の前には鈴がない。鈴がない代わりに、巫の歌の一節が刻まれている。歌に触れた者の息は、歌の高さで乱れる。乱れは風府の札が拾う。
罠にかかったのは、倉番頭の甥の友で、夜間だけ文官宿舎の掃除を請け負っていた男だった。男は「紅の者」に札を渡され、印章の影を見た、影の数は三つだった、影は動いた――と、要領を得ないことを喋り、最後に唇を固く閉じた。閉じた唇を藍珠はこじ開けない。こじ開けるのは、彼の後ろにある「線」だからだ。
書記官長の娘は、旅宿から戻された。髪は短く切られ、目はまだ揺れていた。揺れは恐れの振動だけではなく、楽器が音を止めた後に残る響きに似ている。
楓麟は書記官長を王前に再び呼び出し、娘を同じ場に立たせた。
「娘は戻った。――さて、あなたは」
書記官長は膝をつき、額を床に近づけた。額は汗で滑り、石は冷たい。
「罪は、罪でございます」
彼は言葉を選ばず、短く言った。選ばないことで、言葉の重さだけが前へ出る。
遥はその場で裁きを下すべきか迷い、額の布の下で天印が薄く熱を持った。逃げるな、と糸が引く。
「人質のための行い――その重さはわかる。だが、王命の印は、国の息だ。息を止めれば、民は倒れる。……裁きは、法に従って行う。娘は、守る」
言葉は短い。短い言葉は、楓麟の灰の目の隅に、小さな肯きを生んだ。
◇
都の夜は、それからしばらく、静かに落ち着かない日々を続けた。
霜の峠の柵に詰められた草は乾き、落とし穴の口は薄く偽装され、灰の渡しの堰は夜々に音を変え、薄紅平原の囮灯は強い風の夜にだけ燃え、小さな火の群れが遠目には動く兵に見えた。
倉の台帳の行は、余白の幅が揃い直され、虫害の書付は風府の筆の香に変わり、偽の札は紙の繊維で見分けるより先に、歌で見分けられるようになった。長風の歌は、鈴の鳴らない高さで路地を柔らかく縫い、紅月の旋を薄く上書きする。
それでも、裏切りの影は消えない。消えない影は、形を変える。形を変えるたびに、心の内側のどこかを薄く擦る。擦られたところが痛む。痛みは、怒りと悲しみの境目にある。
ある夜、遥は天印の間の前で立ち止まった。扉は厚く、白い。白い板には傷がない。傷がないことが、逆に不安を呼ぶ。ここは、最初に彼が光に焼かれて倒れた場所だ。あの眩しさは、夢の中でだけ今も、ときどき再生される。
扉の前には鈴がない。ない代わりに、歌の文字が薄く刻まれている。
遥は手を伸ばし、扉には触れず、歌の線に指先を近づけた。指先に熱はない。額の布の下の天印は、温かい。温かさは罰ではない。罰に似せた印の、別の側だ。
「王は、まだ揺れている。……だが、足は地を踏み始めた」
楓麟の塔の上の言葉が、遅れて胸の内側で響いた。響きは強くない。強くないのに、長い。
回廊の角で、藍珠が立っていた。
「眠れないのか」
「少し」
遥は正直に言った。嘘をついても、彼女には響きでわかる。
「書記官長の裁きは、明日、言い渡す。……俺は、まだ怖い。怖いのに、言わなくちゃいけない」
藍珠は首を横に振った。
「怖さを捨てるのは蛮勇。怖さを抱いたまま前へ出るのが、王の勇だ」
同じ言葉を、彼女は二度は繰り返さない。だが、今夜だけは繰り返した。繰り返すことで、言葉は別の音になる。
「王の勇は、剣ではなく、印の前で言葉を立てること」
遥は目を閉じ、開けた。
「明日、言う」
◇
朝。
倉の裏門には、また新しい車輪の跡があり、今度は粉が薄い。粉は南ではなく西の工房の匂い。密偵の紙には、印の形が増え、歌の旋は三つが二つになり、一つが消えた。消えた旋は、霜の峠を食いつくための餌だった。餌は半分飲まれ、半分吐かれ、吐かれた部分は風に散った。
書記官長は、王前に立った。娘は別の部屋にいる。扉は厚く、白い。白い板には傷がない。
楓麟が法の文を読み、巫が短い歌を置き、長風が札を一枚静かに動かす。
遥は前に出る。
「書記官長」
声は低い。低いが、石の床の端に届く。
「あなたの罪は重い。王命の印は、国の息だ。息を止めようとした。――だが、人質は戻った。娘は守られる。あなたは、法の通りに裁かれる。家は、今のところ、取り潰さない。家族が今日を生きるための粥は、王の倉から出る。紅月の約束は、今ここで切れ」
書記官長は深く頭を下げた。
「王」
その一語は、彼の生涯でいちばん重い一語だったに違いない。重さは短く、床に落ちた。
裁きは、冷たく、しかし整って言い渡された。整った冷たさは、憎しみを少しだけ遠ざける。
会議に戻る。
楓麟は、地図の上の札をひとつ動かした。霜の峠の裏、細い山道に小さな白い札が増える。
「内は、今夜から三重にして張る。印章庫は北の塔へ。天印の間には、巫の歌を二つ重ねる。――それと」
彼は視線を遥に送った。
「王の寝所の前の鈴を、ひとつ外す」
藍珠が目を上げた。
「鳴らさない高さに、風は通すのですね」
「そうだ。音は敵だけに聞かせるものではない。我ら自身にも、広すぎる音は恐れを増やす。王の心の前に、静けさを一枚、置く」
静けさは、鎧になる。
遥は深く息を吸い、喉の奥の震えを噛み殺した。
「次の一手が、俺の心を狙ってくるなら――俺も、見たものを持って、そこに立つ。井戸の底の音。門の紙片の薄さ。台帳の余白の幅。……それを、心の前に並べる。並べて、崩れないように結ぶ」
言いながら、額の布の下の天印が、温かくなった。温かさは罰ではない。印だ。
明日の印だ。
◇
夜、塔の上で、楓麟はまた風を読んだ。
雲は薄く、星は少ない。東から乾いた風。鈴は鳴らさない。巫の歌は短く、長風の札は軽い。藍珠は見張りの列の巡りを一度崩してから、別の順で組み直し、足音が同じ角で重ならないようにした。
都のどこかで、誰かが眠れずにいる。眠れない息は、夜の匂いを濃くする。匂いの濃さは、明日の朝の言葉の高さになる。
楓麟は塔の縁に指を置き、石の冷たさを確かめた。冷たさは、熱を薄める。薄められた熱は、言葉を短くする。短い言葉は、届く。届いた言葉は、動く。
遠く、国境の暗がりで、また狼煙が一つ、かすかに上がった。今度は灰ではない。赤だ。赤は挑発で、合図で、時に虚だ。
彼は目を閉じ、ひとつ、息を吐いた。
「王は、まだ揺れている。だが、足は地を踏んでいる。……揺れは、折れではない」
風が返事をするように、塔の上を渡る。
鈴は鳴らない高さで、夜を通した。
◇
翌日――倉の広場に、少年が立っていた。祠の影で粥を煮ていた、あの少年に似ている。似ているが、違う。目の底の光が、昨日より深い。彼は紙片を差し出し、口の端で笑った。
「王さま。……昨日、僕の母さん、粥が少し濃かった」
遥は頷いた。
「今日も、少し濃くする」
少年は礼をして走り去り、砂埃が薄く舞った。薄い舞い方は、風が鈴を鳴らさない高さで通った証だ。
小さな感謝は軽い。軽いが、心の前で結ぶ紐になる。紐は細い。細いが、切れない。
裏切りの兆しは、今日もどこかにあるだろう。あるだろうが、結ばれた紐は、心を外に落とさない。
王は、まだ揺れている。
だが、揺れたまま、歩いている。
歩く足の裏に、石の目地が触れる。
目地は細く、確かだ。
確かさは、罰ではない。
明日の印だ。