第二話「覚醒の刻」
黒服に取り囲まれる俺達…万事休すかと思われた…その時、救世主が現れた。
「よいっしょ!」
「ふっ!」
二人が家屋の屋根から飛び降りる。
そして、俺達を取り囲む黒服達に刃を向ける。
「飯岡、何分で片付ける?」
「十分で充分だ。」
次の瞬間、彼らが人間の速さよりも素早く走り、黒服達を薙ぎ倒してゆく…
こいつらも亜人…?いや、亜人は女だけ…なのに…どうして?
「あっ、ヤベ。そっち行った!」
「君達、避けろ!」
なんと黒服が放った銃弾が俺と六花に向かって、飛んでくる。
しかも、その弾の軌道上に六花がいる。
六花は…
俺はさっと六花の横顔を見る…すると、戦慄していた。
当たり前か…目の前で人が何人も死んでんだ。冷静な方が可笑しいよな…よな…
…"なんで俺冷静なんだろう"…いや、今はそんなことどうでもいい。六花を救わないと…
俺は六花の前まで走る…そして、六花に背を向け、両手を広げる。
俺の命なんてどうでもいい。六花を…六花を守る…それが俺達が交わした約束だ。
そして、俺の胸に銃弾が撃ち込まれる。
あー、これは死んだわ…六花…すまねぇ…だけど、お前は守れるんだ…悔いは…ないって言ったら嘘になるが…後悔は…していない。
カキン
金属音が辺りに響き渡る。
俺の胸を見ると…皮一枚のところで手裏剣が刺さっていた。手裏剣が刺さって普通に痛いけど…九死に一生を得た…誰が投げたんだろ…金髪の人かな?それとも眼鏡の人?
そう考えていると…六花が俺の背中に抱き付いてきた。
「何してるの!?銃弾が当たって!?」
「大丈夫だ。何故か生きてる。」
俺は胸に刺さった手裏剣を捨てる。
そして、向き直り、六花に元気な姿を見せる。
「大丈夫だ。六花。この通り元気だ。胸がちょっと痛いけど…」
「もう…心配させて…危ない真似はしないでね。」
まぁ、しょうがない。六花を守る手立てがそれしかなかった。
俺が…もう少し強ければな…命を懸けずに守れるんだけどな。
その時だ…突然俺の体が光出す。
なんだ…何が起こるんだ?
「飯岡、なんか共鳴が起こってるぜ。」
「素人がいきなり共鳴…何が起こるか分からんな。」
なんだ…体が軽い…これなら、黒服達を…制圧できる。
俺は約50mを一秒で走り抜け、黒服達の背後を取る。そして、軽く手を振り下ろした。
すると、黒服達の背骨がへし折れ、その場にグシャグシャに潰れる。内臓も見え隠れして、かなりグロッキーだ。
そんな様子を見た黒服達が撤退を始める。
俺は追わないが…青年二人が逃げた男達も殲滅する。
青年二人が黒服達を全員始末すると俺達に近寄ってくる。
勿論、俺は警戒する…六花を後ろに隠れさせ、俺は前に出る。
すると、そんな俺達を見た二人は手を上げて、武器をしまう…
「安心してくれ、俺達は敵じゃない。俺の名前は柳沢周。亜人達を保護する組織の一員さ。」
金髪の男は陽気に話す。先程まで屍を作っていた奴には見えない。
すると、黒髪眼鏡の人も話し出す。
「俺の名前は飯岡優羽。同じく亜人を保護する組織『プロテクト・アナザー・エデン』…通称『PAE』所属の一員だ。」
亜人を保護する組織…だから俺達を守ったのか。だけど、信用してもいいのだろうか。騙されて何か人体実験でもされるんじゃないのか?
不安に駆られていると六花が呟く。
「信用するしかないんじゃない…他のところに行ってもまた狙われるだけだよ。」
「…そうか、お前が言うなら…分かった。」
俺は仁王立ちで柳沢と飯岡に宣言する。
「お前達についていく…だが、六花には変な事するなよ。変な事したら殴るからな。」
「へいへい、分かりましたよ。王子様。」
柳沢はやれやれといった様子で俺達の方を見る。
「じゃあ、行こう。案内する。」
すると、飯岡が先導して俺達を案内する。
あっ…そうだ。これ言わないと…
「どっちが分かんないけど、手裏剣ありがとう。お陰で銃弾が弾かれて九死に一生を得たよ。」
すると、飯岡と柳沢…二人とも首をかしげる。
「俺じゃないぞ。」
「俺でもないぞ。」
…あれ?じゃあ誰なんだ?
その頃、電柱に立つペストマスクに黒装束の人間がいた。
「…この事は御方に報告しなければ、それにしても、やはり共鳴も強力だった。」
人はペストマスクを外す。
すると、そこには銀色の髪に瑠璃色に光る瞳…そして、左目の上から下にかけて古傷があった。
背格好は150cmにも満たない小さい体…
だが、小さい体から出る覇気は巨大だった。