第一話「亜人」
亜人…それは駆逐されるべき害獣…らしい。
俺…一式渡はそんな一般常識を疑問に思いながら生きていた。
亜人…それは女性が突然変異した特殊な能力を持った人間のことを指す。
特殊な能力と言うのは基本的には身体能力の向上…その中でも特殊個体は現実を逸脱した能力を持つらしい。
亜人になる理由は…現在何も解明されていない。勝手になる…らしい。
亜人はなると国の迫害対象となる。誰も例外なく殺される。
「ーーーお~い!渡!」
そうそう、俺には幼馴染がいる。幼稚園からの付き合いだ。名前は神風六花…才色兼備、勉強良し、運動良し、なんでもできる女だ。今通っている高校ではかなりモテる。
俺は密かにそんな六花に恋をしている。
…当たり前だろ…こんなに可愛い幼馴染がいるんだ。思春期男子としては恋しない方が可笑しいだろ。
「ふふっ、渡が変な顔してる…どうしたの?」
「な、なな、なんでもねぇよ。ほっといてくれ。」
嗚呼、良い…こんな日常が俺が大好きだ。
神様、こんな良い人生をくれて、ありがとう。
「渡、先行くよ?」
「待てよ六花!」
俺達は軽い足取りで学校へ向かった。
…
キンコンカンコーン
学校が終わる音色が校舎内に響き渡る。
皆、部活なり、帰宅なり…各々の時間を過ごす。
「六花…今日はどうする?」
「…うん、今日は真っ直ぐ帰ろ…なんか頭が痛いし…」
「…そうか。」
…今日は遊びたかったんだけどな。仕方ない。家でゲームでもするか…
俺達はゆっくりと家に帰った…
…
「よし、そこだ!死ね!」
「お兄!邪魔しないで!あー、死んじゃったじゃん!」
俺は妹の一式若葉とゲームをしていた。妹は中学生なのだが、中学校では生徒会長を勤めるエリート…家の姿とは大違いだ。
「やだやだやだ!負けてないもん!勝ちだもん!」
「負けは負けだ。罰ゲームだぞ。」
俺はテレビゲームを普通のテレビに変え、ニュース番組に変えると…絶句した。
「…嘘だ…嘘だ…何が…起こった?」
そこに映し出されていたのは…神風六花が亜人化したことだった。
話を聞くと近所の人が神風家から悲鳴を聞き、中を確認すると…血塗れの六花と倒れる両親の姿があったらしい。
「嘘だ…六花は人殺しなんてしない…」
亜人化すると凶暴化すると聞いているが…六花がそんなことをする訳がない。六花は家族を大切にする奴だ。
「若葉…お兄ちゃん…ちょっと外に出るから…」
「お兄ちゃん…ダメだよ。亜人に与する者は殺されるんだよ!六花ちゃんのことはーー」
「諦めれる訳ないだろ!六花は…大切な幼馴染だ!」
俺はそれだけ言うと家から飛び出した。
残る若葉は溜め息を吐いた。
すると、何処かに電話をかける。
「すみません。引き付けミスしました。」
…
六花なら…あそこにいる…いつも俺と景色を見ていた丘に…あいつが俺に助けを求めるなら…
俺は一直線で思い出の丘に向かった。
いつもの夕焼け…小さい頃に初めて交わした約束…"私達は何があってもいつも一緒"…
何があっても…亜人化していたとしても、約束は約束だ。
すると、ベンチに座る一人の女の子がいた…髪が白い…老婆かな?いや、制服を着て…
まさか…
「六花なのか?」
俺はもう既に声をかけていた。
すると、六花が俺に抱き付いてくる。
「渡…どうしよ。私…亜人になっちゃった。お母さんもお父さんも誰かに殺されるし…もう生きていけないよ。」
声は強い筈の亜人のモノとは認識できなかった。そこにいるのは両親を殺されたか弱い女の子だった。
やっぱり六花は殺していない。普通の人間と変わらない。亜人になっても六花は六花だ。
俺はそう言い聞かせて、六花の手を掴む。
「逃げよう六花!大丈夫!俺は何があっても味方だ。」
「渡…」
とりあえず何処に逃げるか…こいつ血塗れだし、白髪赤目だし、目立つよな。とりあえず俺ん家か?
そう考えている時だった。
「目標確認…殺戮態勢に入る。」
なんとスーツを着た男が四人現れた。手には銃を持っている。糞が…もうバレたのか?
俺達は黒服とは反対側に走る。
黒服達は俺の存在に戸惑うものの銃を乱射する。
俺の体を掠り、血が滲み出るが、関係無い。
ここで逃げなければ六花は殺される。
俺は六花を生かしたい一心で走る。
だが、上手いことはいかないな…
俺達は住宅街に入り、ジグザグに動くが、囲まれてしまう…
人数も十数人に増えてるし、これは万事休すか…
その時微かに声が聞こえた。
「…あれ?ピンチじゃね?」
「助けよう。話は後から聞けば良い。」
すると、家の屋根から二人の青年が降ってくる。
片方は金髪、もう片方は黒髪眼鏡だ。
「さぁ、いっちょやりますか!」
「柳沢、あまりやりすぎるなよ。」
俺達は知ることとなる…この青年達の底力を…そして、この日本の闇を