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さくら  作者: 早川 楓
3/3

約束

次の日俺は何食わぬ顔で仕事に行った。

というかそれしかなかった。

「ふぅ・・・これで最後っと」

適当に書類整理を済ませ、コーヒーを一杯注ぐ。これが俺の至福の時間であった。

「ちょっといい?」

コーヒーを飲む横で、田村が口を挟む。

そして耳元で「ホントは親戚でもなんでもないんでしょ」と呟いた。

「ぶうっ!!」

焦って飲んでいたものを少し吹きだしてしまった。

「大正解ね」

「それがどうしたんだよ、俺は最低のロリコン野郎ですよ」

「まぁそう言わずにさ」

「何が言いたい」

言いたいことは分かっている。口止めか何かだろう。

「女の私から1つアドバイス、別に何も干渉しやしないけど・・・・道だけは踏み外さないでよ」

「それって、セッ―」

俺が言いかける前に彼女は行ってしまった。

でも彼女の言うとおり、まだ自分でも道は踏み外してないと思う。

だけどあんなのがまた続いたりしたら俺は・・・・手、出しちゃうのかな。

愛の前には理性も法律も常識も意味を成さない。ただの障害でしかない。

だけど、サクラが一瞬見せてくれたあの笑顔は実際かわいいものだった。

もっと見たい、いやもっと笑顔にさせたい。そう考えるのは果たしていけないことなのだろか。

哲学的なことを満員電車の中で考えた。


家に着いて携帯を見る。また彼女からメールだ。

「この前は楽しかったよ。服買ってくれてありがとう」

・・・貢いでる。俺は少女に貢いでる。貢いだ対価はつまり・・・・考えないことにした。

「いや、いいんだよ。笑顔が見れただけでも」

「ホントにいい人なんだね。驚いちゃった」

「驚いたって?」

「だって、出会ってたのがアナタじゃなかったら、私見知らぬ人とエッチしてたかもしれないよ」

確かに。確かにそうだ。俺じゃなければ、彼女は知らない男と身体を重ねてたかもしれない。

「俺がそういう奴だったら、どうした?」

そう聞かずにはいられなかった。

「それでも・・・エッチしてたよ。エッチしてお金もらってそれでオシマイ」

「もっと自分を大切にしたらどうだい」

「大切にするほど・・・・自分はそんな存在じゃないよ」

どうやら彼女には何か深い闇を隠し持っているようだった。あのときにはあんな輝かしい笑顔を見せてくれたのに。

「じゃあ、あのときの笑顔は偽りかい?」

「あのときは特別。本当に楽しかった。もう忘れられないよ・・・」

そのとき、1つの決心がついた。1人の大人として、1人の男として、サクラに光を見せてやりたいと思った。

また会おう。また会って、ちゃんと彼女と向き合おう。そのほうが・・・絶対にいい。

「また、デートしよう。こんどはちゃんとデートしよう。デートして楽しい思い出をたくさん作ろう」

もう俺は引き返せないところまで走り抜けた。

法律違反だかそんなのはいい。少女1人も笑顔にできないようなものに意味なんて無い。

私たちは常に無意味なものに誘導され、無機物的に操られているのだ。


その週の休日、俺はあの公園で彼女を待った。


もう一度あの場所で再会する―


それが『約束』だった。



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