ナニから始める!?
「あの・・・イチカワさんですよね」
「ええ、そうですが・・・」
「良かった!!私、サクラです、神谷桜といいます。今日はよろしくおねがいします」
と少女は会釈をする。
よろしくって・・・何をよろしくなんだよ、一体。
その日から嵐のような日々が続いたのは明白だった。
「キミはいくつなの?」
「ピチピチの14歳、中学3年生」
溜息が出た。14って・・・もう10歳以上も離れてるじゃないか。
正直、こんな年端も行かない制服少女を連れまわすなんてことはできなかった。
とりあえずファミレスに駆け込み、親戚なんかの類を装ってこうやって説得するしかないのだ。
こんなとこお巡りさんに見られでもしたら、悪・即・斬である。
「経験って・・・何か欲しいものでもあったの?」
「いえ別に」
頼んだ『イチゴパフェ・デラックス・スペシャル 1100円』をほお張りながら言う。
「じゃどうして・・・ああ、もういいやこれ食ったらもうお家に帰れ」
「嫌」
「頼むからさぁ」
「だって家に帰ったて誰もいないから・・・寂しいんだ」
「寂しいのは俺だって同じだ」
そう、寂しいのは・・・誰だって同じなんだ。
って思っていたそんな時だった。
「あっ、市川じゃん!!何してんの」
ちょうど目の前を通った女性は同僚の田村だった。
「あっ、まぁこれはその・・・」
まずい、非常にまずい。何するよりも会社の人間には見られたくなかった。
「へぇ・・・かわいいじゃない。親戚の子?」
「ああ、紹介するよ姪のサクラだ」
よし、あとはアイツが口裏を合わせれば乗り切れるっ!
「どうもサクラです。いつもおじさんがお世話になってます」
「ホントにいい子ね・・・それじゃねお2人さん」
田村はそのまま店から出て行き、こちらに笑みを浮かべてどこかへ消えた。
「ふぅ・・・なんとかなった」
「1つ貸しだね」
「へぇ?」
「これとかどうかな」
服をこちらに見せながら、丈を合わせている。
嵌められた。というか、俺が甘いのか・・・いや激甘だ。
「決まったか?」
「うん、これにする!!」
さっき欲しいものなんて無いって言っていた。だけど、ああやって喜んでいる顔を見ているとそんなことどうでも良くなってきてくる。自分は危ない橋を渡っているということを忘れるぐらいに。
「もう暗いぞ、親御さん心配するんじゃないか」
「うん。でもここまでしてもらって何か悪いよ・・・」
「貸し1つ、なんだろ」
「じゃあ、もっと貸しを作ればいいんだよね」
「おい勘弁して・・・うっ」
サクラは思いっきり、俺に抱きついた。
「大好き」
小声でそう言って、走り去っていった。
もうこれで終わったんだろうか・・・・でもなんか、割り切れないな。
そんな春のことだった。