トケマッチ事件は「金融崩壊対策」から生まれた悲劇だった!?
筆者:
本日はこのエッセイを選んでいただき誠に光栄です。
今日は高級腕時計シェア会社「トケマッチ事件」について個人的な解説を行っていきます。
「トケマッチ」運営会社の元社長である福原容疑者は、
預かった高級腕時計を無断で売り捌いた業務上横領の疑いで指名手配されていて、
全国での被害は18億円とも言われています。
しかも会社を解散したその日に中東のドバイに向けて出国したことも最近になって分かっており、「計画性の横領」があると言われています。
◇なぜ、高価なモノを貸し出そうとする人がいるのか?
質問者:
シェアリングのサービスが流行っているのは分かるんですけど、
そもそも大事で高価なモノを貸し出すという感覚が私にはわかりませんね……。
保険とかには入っているとは思いますけど、
それにしたって傷がついたりしたら嫌じゃないですか?
大切なモノなら傷がついて治ったより最初から傷が無い方がいいに決まっています。
筆者:
その感覚は分かりますが、「裏の事情」というのがあると思っています。
勿論、シェアリングサービスで貸し出している側の方の全員が全員ではないという事を含んでおきたいですが、
実を言うと貸し出した人たちは“そこまで大事に思っていなかった”という可能性があります。
質問者:
えっ!? どういうことですか?
筆者:
実を言いますと高級時計などは投機目的で買われることがあるのです。
以前僕は中国の不動産市場を皮切りに銀行や証券の金融崩壊が連鎖すればハイパーインフレや極度の円安が起きたりする可能性があることを指摘させていただきました。
そのリスクヘッジ商品の一つとして「高級ブランド品」というのを挙げたんですね。
高級腕時計もそのうちの一つです。
つまり、時計の持ち主はその時計が欲しいから買っているのではなく、
投機目的又は資産防衛として高級時計を買っている可能性があるのです。
質問者:
投機目的や資産防衛としての時計の価値というのは実際のところどうなのですか?
筆者:
誰もが知っているロレックスですと、22年から今に至るまでの価格改定で正規品は3割ほど値段が上昇しているようです。
こういったブランド品はそうそう下がることは無いですし、
上がり具合として見ると「安定資産」と言われるゴールドやプラチナもここ2年だと3割上昇と同等レベルです。
しかも、期間限定モデルや生産終了モデルともなればもう1000万円単位で取引されており、
その値上がり幅は当初の販売価格の何十倍にもなっている商品もあります。
大量生産しない高級腕時計であるパテック・フィリップに至っては1個あたり何千万円か億単位で取引されているものもあります。
勿論そういった中古商品は大きく下がる可能性はありますが、
投機目的としての価値・可能性はかなりあると思います。
質問者:
時計で1つで何千万円や1億も払うという人がいることが信じられないです……。
一戸建ての家が建ったり高級マンションに入れるじゃないですか……。
筆者:
ただ、家レベルの価格のモノが金庫レベルに小さく保管できるというのは、
資産防衛としては非常にメリットがあるといって良いでしょう。
モノによってはゴールドより小さく保管できますからね。
その中で貸し出して利息配当が更に貰えるのであれば飛びつく人も出るのではないかな? というのが僕の考察ですね。
時計の価格が1億で配当が年10%なら1000万円も貰えることになりますからね。
流石に存在しているだけで活用方法があまり無いゴールドをシェアするという商売はあまりないと思いますしね。
質問者:
なるほど、そういった事情があるわけなんですね……。
◇高い配当率には「裏」がある可能性が高い
筆者:
ただ、配当率がこの「トケマッチ」は非常に高かったようなんですよね。
最高配当率が年18.4%と尋常では無い数値です。
しかし、商品そのものが「溶けマッチ」みたいな感じになっちゃったんですからね(笑)。
資産防衛に完全に失敗してしまったという事です。
質問者:
……凄くつまらないです。
筆者:
す、すみません……。
ちなみに、消費者庁のガイドブックではこういったシェアリングサービス利用時の注意点として、個人間ではなくプラットフォーマー(事業者)を介した取引を推奨しており、認証マークの有無の確認も呼びかけていました。
トケマッチは、このいずれもクリアしていたのですが、被害は起きたのです。
同庁関係者は、
「(トケマッチ事件は)最初から利用者をだますつもりだった可能性もあり、そうしたケースで事前にトラブルの芽を見抜くのは非常に困難」と指摘。同種被害にあわないための対策として、「『貸し借り』という本来の観点に立ちかえれば、シェアリングサービスの対価は、基本的に『お礼』程度が妥当。高配当が見込めるなど投機性を帯びた業態には、注意してほしい」
と呼びかけを行っているようです。
僕の感覚で言わせてもらうと一般的な株式投資が順調にいった場合の年率3~5%ぐらいが妥当な投資商品のラインなのではないかなと思えます。
質問者:
なるほど、今回の案件ではこれまでは問題なくても急に「高飛び」されちゃいましたからね……。
そんなにウマい儲け話はないという事ですか……。
◇令和の投資詐欺は高度化しつつある
筆者:
「トケマッチ」というのは2021年1月から地道に信頼を積み上げてやってきたサービスだったようですから本当に「ある時突然」という感じだったみたいですね。
こういった「ウマい話」に対しては慎重になることが今後必要になってきます。
質問者:
しかし、そんなに投資詐欺というのは身近には無いのではないですか?
筆者:
それがそうも言っていられないと思います。
テクニカル分析専門サイト『テクニカルブック』による20歳以上の男女7,730名を対象とした投資詐欺の「遭遇状況を調査」というものがあるのですが。
その調査では過去1年間における投資詐欺に接触した経験について質問したところ、「投資詐欺に遭遇した」と回答した人が8.0%、「投資詐欺と疑われる勧誘を受けた・商材を見かけた」と回答した人が12.3%という結果となっています。
しかもこの割合は若い方ほど遭遇している確率は高くなっており20代では遭遇した割合は17.8%、商材を見かけたは14.4%と合わせて3人に1人ほどまで上昇しているのです。
この調査で高齢者ほど割合が低いのはもしかすると、
「詐欺に遭ったことすら気づいていない」という可能性もあると思いますけどね……。
いずれにせよ20代の6人に1人は詐欺被害に遭遇し3人に1人は見聞きしているという事を抑えてください。
質問者:
「簡単に儲けられる」「1日何分クリックするだけ」とかそういう「いかにも」という感じの典型的なモノばかりなのではないのですか?
筆者:
それがそういう前時代的な投資詐欺ばかりでは無いんですね。
AIを使ってZOZO元社長の前澤氏、世界的実業家のイーロンマスク氏、経済学者の森永卓郎氏などの有名人の声や映像を学習させ、さも本人が話しているかのような偽映像を作り出し、詐欺を行ったという事例も存在しています。
勿論、本人の声を何度も聞いたことがある方からしたら違うことがわかるようですが、一発で見抜くことは不可能に近いと思います。
また、みずほ証券の名前を騙る偽アカウントが高配当を唄った商品を宣伝していることもあったようです。
こういったものがFacebookの広告で流れてくるのです。
(僕はFBを利用していないので、NHKの記事で拝見しただけですが)
質問者:
それは恐ろしいですね。さも本人かのように騙る(かたる)だなんて……。
筆者:
しかも、共謀などと認められない限り広告を表示させているFBやYOUTUBEなどのプラットフォーム側に対してそんなに責任を問えないというんです。
また、「絶対に儲かる最強のAIアルゴリズムを組んだ。1口○○万円」と言って、
数か月配当を払うもののそのあとトンズラするという、
「令和のポンジスキーム」のようなものも登場しているようです。
反社勢力というのは本当に流行りをキャッチする感覚にとても優れています。
それをもっと社会にプラスになることに役立てて欲しいところですけど……。
ともかく、今後はホントに「投資リテラシー」が試される世の中になると思います。
「詐欺は身近に転がっている」こういう認識の方が良いように思えます。
また今後は、「知識やリテラシーによる資産流出の防止」も大事になってくると思います。
◇「貯蓄から投資へ」は政府の「経済政策失敗宣言」
質問者:
しかし、投資リテラシーとはどうやって上げていけばいいのでしょうか……。
筆者:
まずは一時の感情だけに流されないことが大事だと思います。
映像や音声を見て脳の判断能力をつかさどる前頭葉に「バグ」が生じているだけだと思います。
一呼吸を置いて複数の情報ソースを確認しましょう。
有名人や会社の公式サイトを見ると、大きな話題になっているものに関しては詐欺関与を否定したり、関わらないように注意喚起するような声明が載っていると思います。
先ほども申し上げましたが、株式の配当で順調に行く場合の3~5%を大きく逸脱するような10%を超えるレベルですと「危険である」という認識を持った方がいいです。
それも「確実に」とか「秘密の」とかそういうワードが付いてくると危険度は何段階も上昇します。
利率が高いほどリスクは上がるのが当たり前であり、非公開情報の儲け話なら独占すればいいだけの話ですからね。
質問者:
「貯蓄から投資へ」とか言われているので、より関心が高まっている中での詐欺ですからより悪質さを感じますね。
筆者:
正直なところそのフレーズは国の失政を如実に表していると思うんですけどね。
今の後期高齢者世代以上は、男性だけの働きと退職金で年金が足りなくなる不安についてなんて考えていなかったと思うんです。
でも今は両親共働きをしながら子育てをし、貯蓄・投資をしなければお話にならない状況になっています。
日本財団の23年11月に公表した全国の17~19歳の若者千人に行った意識調査では、計63.4%が自身の老後の経済状況に不安があると答えています。
上級国民以外は特に何も悪いことをしなくても「人生ハードモード」に突入していると言って良いでしょうね。
これはどう見ても30年間の政府の経済政策の失敗といって良いでしょう。
適切なタイミングでの減税を行わず国民を苦しめ続けてきているのです。
そんな中で投資の甘い話が出てきたら食いついてしまうのも無理からぬ話かなと思いますね。
仕事や家事・育児の疲れから詳しく調べる時間も無いと思いますしね。
質問者:
国の失政の国民への押し付けが「自己責任の時代」ということですか……。
筆者:
適切なところにお金を投入せず大企業優遇政策、
上級国民優遇政策ばかりを繰り広げているからに他なりません。
それらの政策に反対していき、国債をもっと発行して適切なところに配分するように訴える必要があると思います。
という事でここまでご覧いただきありがとうございました。
今回のエッセイでは
トケマッチ事件には「金融崩壊のリスクヘッジ」が背景にあること、
投資詐欺は若い方にとっても身近な問題であること、
AIなどの先端技術によって投資詐欺が高度化しつつあること、
「貯蓄から投資へ」というフレーズは日本の失政の表れではないか?
という事をお伝えさせていただきました。
今後もこのような時事的な話題や政治経済、マスコミの問題について個人的な解説を行っていますのでどうぞご覧ください。