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3・馬車に乗ってたら、ドラゴンに襲われた

 悪女だって冤罪を被せられ、パーティーを追放された私──アリシア。


 そんな私は今、馬車に乗って隣国を目指していた。


「あの人たちの顔なんて、もう見たくありません」


 思い出すだけでムカムカする。


 ──馬車に揺られながら、私はこれから先の成り行きについて考える。


 ハロルドたちの「Sランク冒険者に昇格したい!」という夢を叶えるため、時には危険を冒したのには後悔はない。


 しかし彼らの言うように、安全に成り上がりたいというのも一理ある。


 今までの私は前のめりになりすぎていた。

 こんなのじゃ、命がいくらあっても足りない。


 そう考えるようになったのは、前世の記憶が蘇ってきたことにも一因するからだと思う。


「だから今度は……安全志向で暮らす」


 成り上がりたいという気持ちはないけど、だからこそもっと安全に暮らせるはずなのだ。


 とはいえ、冒険者は続けるつもりだ。


 冒険者は常に危険と隣り合わせ。

 だけど依頼を選べば、どうとでもなる。

 他になんの経験もない私が異世界で生きていくのはこれしかないからね。


 それに……雇われ人生は嫌だ。


 前世の会社勤めが嫌すぎてトラウマになっている。

 そういう考えでも、自由が許される冒険者は私にとって天職のはずだ。


 ……まあ、今度はSランクとか目指さないし、安全志向なのは譲れないが。


「雑魚専で、生きていくためのお金を稼ぎますよー」


 私はそう決意し、ぎゆっと拳を握った。



「さっきから、ぶつぶつと……変な女だな」



 つい声に出てしまっていたら、馬車に同乗している男の一人に声をかけられた。


「あ、すみません」


 謝る。


 馬車には他にも人が数人乗っている。

 彼と私を含めて、五〜六人くらいかな?


 私を咎めた男は、その中でも一番暗い空気を漂わせていた。


 黒いフードを深く被っているため、目元が見えない。

 ちょっと怪しいと思ったりしたけど、それをわざわざ言うわけにもいかない。


「君一人か? 仲間はいないのか?」

「はい。事情がありまして……一人で隣国の王都を目指しているんです」


 まさか会話が続くと思っていなかったが、彼が質問してきたのでそう答える。


 ちなみに……私がわざわざ隣国を目指すのは、なるべくハロルドから離れたいがためだ。

 近くの街で活動している限り、嫌でもハロルドたちと遭遇する可能性があるからね。


「そうか」


 そう一言言って、「これで会話は終わりだ」と言わんばかりに男は目を閉じる。


 好奇心で聞いてみただけなのだろう。

 大して興味もなかったらしい。


 私も追放されたばっかりで人間不信になっているので、あまり人と話したくない。

 だから男のこういう態度は有り難かった。


 それからは独り言を言わずに気を付けながら、馬車に揺られていると……やがて隣国に入り、王都が近付いてきた。


 あともう少しで王都。


 私はほっと安堵の息を吐いたが──。



「魔物だ!」



 急に馬車が停止し、外から御者の方の声が聞こえた。

 馬車の中が騒然とする。


「くっ……!」


 真っ先に男が馬車の外に飛び出た。


 他の乗員たちも馬車から逃げ出す。

 私もその後に続いた。


 しかし馬車を出てすぐ、みんなの逃げる足が止まってしまったのであった。



「ドラゴンか……!」



 馬車の前には、大きなドラゴンが道を塞いでいた。


 ドラゴン……言わずもがな、ファンタジーあるあるの生物で、この世界でも強者であることには変わりない。

 口から吐く炎は全てを焼き払い、空を舞うその姿はまさしく天空の支配者だと呼ばれる。


 もう少しで王都だっていうのに、どうしてドラゴンなんかに遭遇するの!?


 自分の不幸を呪った。


「……分が悪いな」


 ぼそっと呟き、男は剣を構える。


「俺はこの馬車の護衛として、雇われた冒険者だ。皆、俺の後ろに。命を賭けても、皆のことは守る」


 と男は剣を構えた。


 あっ……護衛だったんだね。さっきはちょっと怪しいと思って、ごめんなさい。


 しかし彼は剣士っぽいし、空を飛んでいるドラゴンとは相性が悪い。

 果たして彼一人でドラゴンに勝てるだろうか。

 現に他の人たちも不安そうな顔をしている。


「グオオオオオオオーーーーー!」


 ワイバーンが口から炎を吐く。


「危ないですっ!」

「ま、前に出るな! 危険だ──」


 冒険者の男が止めてくるけど、それを意に介さず、即座に結界を張った。


「は?」


 ドラゴンの炎は結界に遮られ、消滅した。


「け、結界でドラゴンの炎をいとも容易く防いだだと!?」


 私の結界を見て、男は驚きの声を上げた。

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