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20・悪い魔族は閉じ込めましょう

 ウェイン遺跡で魔族を倒す。


 私は真っ先に考えたのは、事前に結界を張る方法だ。

 洞窟内のドラゴンと戦った時は、まだどこにいるか分からなかった。洞窟内全てに結界を張るのは非効率。


 だけど今回は違う。

 わざわざ魔族の方から、遺跡にやってきてくれるのだ。

 一角ウサギの時と同様に、結界を張ればいい。


 ゆえに魔族が遺跡の敷地内に入った瞬間、結界が作動するように罠を張った。


 結果はご覧の通り、魔族を生け捕りにすることが出来た。


 そしてもう一つ、私がやったことは段階的に結界の強さを分けること。

 どれだけの強度なら、魔族の攻撃に耐えられるか確かめたかったからね。

 そうすることによって、張れる結界の幅も広がる。



「ちっ……さっさと殺しやがれ。お前なら、俺様を殺すくらい容易いだろう?」



 結界内に閉じ込められた魔族は、鋭い眼光を私たちに向ける。


 殺せ……とは言っているものの、殺気が抑えられていない。

 どうやら隙を見つけて、なんとか逃げ出そうとしているみたいだね。


「殺すわけにはいかない。お前には聞きたいことが山ほどあるんだからな」


 とオリヴァーが一歩前に踏み出す。


「オリヴァー、彼があなたのお母様を殺した相手ですか?」

「……いや、違うな。こんなに()()なかった。とはいえ、こいつが俺の復讐相手を知っているかもしれないし、今から情報を聞き出さなければならないないがな」


 首を横に振るオリヴァー。

 その表情は少し沈んでいるようだった。


 うーん……残念。

 だけどそう簡単にはいかないか。


「はっ!」


 魔族が今にも襲いかかってきそうなくらい、声に怒気を滲ませる。


「俺様が弱いだと!? 言ってくれるな。そこの女はともかく、お前なら簡単に殺せるぞ!」

「…………」

「こんな結界がなけりゃあ、すぐにやってるやるよ! おい! そこの女、さっさと結界を解きやがれ!」

「はい、いいですよ」

「は?」


 言う通りに結界を解除すると、魔族はきょとんとした表情になった。


「くくく……バカなヤツだ。勝利を確信したのか? 結界がなけりゃあ、お前なんて──」


 くぐもった笑いを零し、魔族が手をかざす。

 私に向けて呪いを放とうそているみたいだ。


 しかし彼の目論見は果たされない。


「え?」


 再び間抜けな声を漏らす魔族。


 そんな彼に向けて、無数の光線が発射された。

 言わずもがな、何重にも結界を張っていたので、その中の一つを解いただけのことである。


「うぎゃああああああ!」


 光線のいくつかが体に命中し、悲鳴を上げる魔族。


「や、やめろ! てめえ、最初から俺様を解放するつもりはなかったっていうのか! 俺様を騙しやがって……」

「簡単に騙されるあなたが悪いんですよ」


 呆れて溜め息も吐きたくなるものだ。


 とはいえ、このままでは魔族の話を聞けない。

 私は光線を発射する結界を解いた。


「はあっ、はあっ……可愛い顔をして、恐ろしいことをしやがる」

「あなたにだけは言われたくありません」


 息も絶え絶えの魔族には、既に反抗の意思は見えなかった。


 ようやく諦めてくれたみたい。

 まあ、だからといって魔族を閉じ込める結界を解くわけにはいかないんだけど。


『僕からも一言、言ってもいいかな? 先日は世話になったね』

「む……この声は? まさかお前、あの時のグリフォンか!?」


 グリちゃんの存在に気付き、魔族は驚愕の声を上げる。


「どういうことだ!? 俺様の呪いが解かれている……? 腕のいい解呪士を見つけられたのか!?」

『解呪士じゃないよ。これも彼女のおかげだ。彼女が悪い呪いをやっつけてくれた』

「な、なんだと? その女は結界使いじゃなかったのか? いや、そもそも光線を発射する魔法は誰が放っている? グリフォン、お前じゃないよな。そんなことが出来るなら、前だって……ああ……」


 すごく混乱しているみたいだね。

 考えるのを諦めてしまったらしい。


「言いたいことは全て言い終わったか?」


 オリヴァーが警戒を崩さず、魔族に近付く。


「まず最初……お前は王都の人間中の魔力を奪って、なにがしたかった? 自分の腹を満たしたかっただけか?」

「食うものに困るほど、難儀はしてねえよ。俺様を舐めんな。俺様が魔力を集める理由は、()()に献上したかったからだ」

「彼女……? お前の背景には誰かいるということか。誰だ?」


 オリヴァーは問いかけるものの、魔族から答えは返ってこない。


「だんまりか……まあ、そう簡単に答えてくれるとは思っていなかったがな。なら質問を変える」


 息を大きく一つ吸い、オリヴァーはこう続けた。



「『涙輝姫るいきひめ』を殺した魔族を、お前は知っているか?」



 涙輝姫……?


 オリヴァーから聞かされていたのは、彼が自分のお母さんを殺した魔族を探しているということ。


 涙輝姫がオリヴァーのお母さんってこと?

 一人の女性に付けるにしては、仰々しいように思えるけど、どうしてそんな名前が?


 それに涙輝姫という言葉……どこかで聞いたことがあるような。


「く、くくく……」


 オリヴァーの口から出た名前について考えていると、魔族は顔を伏せて笑い出した。


「こりゃ傑作だ。お前、涙輝姫のことを知ってんのか」

「ああ、俺の母上だった」

「ははは! だったら、涙輝姫の子どもか! 復讐のために、()()()を探してんのか。まさかこんなところで繋がりがあるとはな」

「だ、だとするなら、お前の背景にいるのは母上を殺した魔族なのか!? 洗いざらい喋れ!」

「魔族さん、喋ってくれなかったら、もうちょっとお仕置きをしてさしあげますよ?」


 オリヴァーの鬼気迫る雰囲気を受けて、私も新しい結界を張る準備をする。

 実際するしないかはともかく、脅しにはなるはずだ。


 魔族は私を一瞥し、すぐに視線を外す。

 そしてゆっくりと口を動かした。


「それは……」

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