表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/22

1・前世の記憶が蘇ったかと思ったら、追放されてた

(え……? なに、この記憶。私は……異世界に転生してきたの?)



 突然、私は前世の記憶を思い出した。


 前世での私は『日本』と呼ばれる場所に住んでいた。

 幸いにも裕福な家庭で生まれ、中高一貫の女子校に通い、就職もすんなり決まった。


 なに不自由もなく暮らしていたけど、唯一の難点があった。

 それは男性に対して免疫が出来なかったことだ。


 恋愛に奥手になってしまい、アラサーになっても恋人いない歴=年齢。


 そして仕事終わり。

 明日から連休だーとテンションが上がってスキップしながら歩いていたら、階段から躓いて転倒。

 当たりどころが悪く、そのままご臨終……なんて人生だ。


 そして女神様に()()力を頂いた上で、異世界に転生したってところまで理解したけど──どうして、こんなことを急に思い出したんだろう?



「アリシア、話を聞いているのか?」



 前世の記憶が頭に雪崩れ込み、戸惑っていると。

 目の前には訝しむような目をした男が。


「え、えーっと、すみません。ぼーっとしてました。なんでしたっけ? ハロルド」


 そう問いかけると、男──ハロルドは明らかに苛つく。


「ふんっ! あなたはバカですね。自分がなにを言われたのも理解していないんですか。これだから低脳は……」


 ハロルドの代わりに。

 もう一人の男──フォルカーも眼鏡をくいっと上げて言う。


「ならば、もう一度言うよ」


 とハロルドを指差し、



「君は今日限りでパーティーから抜けてもらう」



 と口にした。


 あっ、そうそう。

 前世のことを思い出して、それどころじゃなくなったけど……私はパーティー追放を言い渡されたんだった。



 異世界に転生した私は──とはいえ、今まで前世の記憶はなかったけど──冒険者になった。



 私を含め、()()の冒険者パーティー。

 唯一使える結界魔法の力で、パーティーに貢献してきたつもりだった。


 最初はよかったけど、パーティー仲間のハロルドやフォルカーは私のことを疎ましく思っていた。


 だけど追放されるなんて……。

 そのショックで前世の記憶を思い出したのかな?


「理由を聞いてもいいでしょうか?」

「そんなことも説明しないと、君は分からないのか」


 ハロルドは呆れたような口調で、こう続ける。


「君は結界魔法しか使えない無能じゃないか。わざわざそんなヤツを、パーティーで抱え込む必要はない」

「それだけですか?」

「それだけ……だと? 君は自分のことが、よく分かっていないみたいだね」


 はあと溜め息を吐くハロルド。


「僕たちは()()()成り上がりたいのに、君はそうじゃない。今まで、僕たちを何度危険な目に遭わせてきたと思っているんだい?」

「ですが、ハロルドは今の冒険者ランクに満足していないんですよね? だったら、時には危険に飛び込む必要があると思うんです」


 私たちのパーティーは今、Aランク。

 とはいえ、SランクとAランクの間には大きな隔たりがある。

 これ以上は多少無茶をしなければ、一生Sランクには辿り着けないだろう。


「私はあなたの希望を汲んでいただけ。弱い魔物ばかり狩っていても、Sランクには昇格出来ません」


 それに私だって死ぬのは嫌。

 安全には十分に配慮していたつもりだ。


 おかげで今まで、パーティーの中で死人は出ていない。

 死亡確率が高い冒険者という職業の中で、これは驚異的なことである。


 もちろん、たまにはひやっとする出来事もあったが……私は十分自分のやるべきことをやってきたはずだ。


「あなたのやり方は『コスパ』が悪いんですよ」


 ハロルドに代わって、このパーティーの治癒士であるフォルカーが、


「この世は効率重視。ローリスクハイリターンな依頼を受けるべきです。私が計算したところによると、君がいなくなることによるパーティー昇格率は56%も上昇します」


 と説明した。


 ちなみにこの間、五回ほど眼鏡をくいっと上げていた。


「ローリスクハイリターンな依頼など、そうそう現れません。そういった依頼は人気ですからね。時期を待っていたら、冒険者としての旬を過ぎ──」

「ああ言えばこう言う! 君はほんっとに言い訳ばかりだね!」


 とうとうハロルドの堪忍袋の緒が切れた。


「君が納得しないなら、はっきり言うよ。君を追放する、最も大きな理由……それは君が『稀代の悪女』だからだ!」

「は……?」


 一瞬なにを言われたのか分からず、聞き返してしまう。


「稀代の悪女? 心当たりがありません」

「自覚がないのが怖いね。君は──」


 ハロルドが言葉を続けようとした時。



「あなたが説明する必要はありませんわ。ここから先はわたくしが説明いたします」



 今まで沈黙を守っていた、四人目のパーティーメンバーである女性がそう口を開いた。


 そうだ。

 彼女がパーティーに入ってきてから、うちはおかしくなった。

【作者からのお願い】

「更新がんばれ!」「続きも読む!」と思ってくださったら、

下記にある広告下の【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、執筆の励みになります!

よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ