8 それは無いよね?
この世界は地球とは違う別の世界、アストリアと呼ばれる剣と魔法の世界だという。
神様の名は『アストリア』様で、私の夢に出て来た男性こそがアストリア様で間違いないそうだ。
内心、あの残念な話し方の人が……と困惑したのは内緒にしておこう。
どうやら神様は自称『便利アイテム』なる物を創るのに夢中になっていたそうな。
その際、神力を注ぐらしいのだが、楽しさのあまり注ぎ過ぎてしまったらしい。
結果どうなるかというと、時空に歪みが発生し亀裂となって別の世界と繋がってしまうのだとか。
で、それがあっちの世界の、それも私の夢の中だったというから驚きである。
そんでもってあの神様ってば、私が亀裂から転がり出て落ちてくるまで、裂け目の事や私の存在に全く気が付いていなかったんだって。
どうも、それだけアイテム創りが楽しかったそうだ。
マジか? 神様ってそんなんでいいの?
そして、下に落ちて行く私を見て事情をすぐに察知。
私の手に創ったばかりのアイテムがある事に気が付いて、慌ててそれに向かって多くの神力を注ぎ込んだそうだ。
なぜそうしたかというと、あのまま私がこの世界に落ちていたら、体が耐え切れずに消えてしまっていたからだという(ガクブル)。
もともとアイテムに入れていた神力と、慌てて注ぎ込んだ神力とでアイテムを変化させ、私に吸収させる事で身体を創り変える事に成功。
だから私は、魔力は無いけど代わりに神力が使えるという。
その副産物で若返えったらしく、種族が???なんだとか。
まあ、種族に関しては体がこの世界に馴染んだ頃ハッキリ解るらしいけどね。
怒って良いのか、泣いて良いのか、今の私では判断できかねる。
だって、まだ普通の精神状態じゃないからね?
そして『便利アイテム』の事だが、神眼? 想像具現化? 付与? がその中身だったそうで、スキルの前に加護の話を聞く事になった。
まず、『アストリアに落ちた異世界人』っていうのが言語理解に繋がるそうだ。
〇〇の異世界人、または異世界人の〇〇など、異世界人という文言に言語理解がもれなく付いてくるという。
何だかおまけみたいだよね~。
あと、少し幸運値も上がってるそうだ。
そして、『神の謝罪』これこそがナビゲーションシステム=八重子さんだそうで、何の説明も出来ずに送り出す事になった私への謝罪を込めたモノらしい。
この世界の加護って、こういう感じのモノなんだってさ。
元の世界に帰れないのか聞いた私に、八重子さんは静かに答えた。
『身体が神力を浴びて変化してしまったから、魂も向こうの世界から切り離されてしまっているようだね。残念だけど、もう帰れないんだよ』
心の片隅では「そうなんだろうな」って思っていたけど、実際にそうだと肯定されると、複雑な思いが押し寄せてきてしまう私だった。
お読み頂き有難うございます。ブックマーク・評価の方よろしくお願いします。