37 やっちゃダメだった?
『アンタ、どうなるか分かってるのかい!?』
八重子さんはご立腹で、私は非常に焦っている。
すぐさま虹色の池の中を覗き込むが。
見えん。
元々が透明な奴だったから、目を凝らしても見つけきらない。
「八重こさ〜ん、居なくなっちゃった〜。どうしよう〜」
『カエデ、あんた……』
うわっ、私の頭の中にお怒りマークがたくさん浮かんでる。
これは間違いなく八重子さんのお小言が炸裂する事間違いなしだ……。
『アンタは、どうして昔から考え無しの行動を取るんだい!! 何度も注意してきただろう? 無害な魔物だから良いものの…………』
うわ〜っ、始まってしまった。
こりゃあ、長くなるよ。
長い長いお小言を、右耳から左耳にスルーさせ、無の境地で「スンマセン」を連呼していると、視界の端で何かが動いた気がする。
ちらりと目を向けると、池にプカプカ浮かぶ水まんじゅうが3つ見えた。
「あ、あそこにいたあ〜!?」
慌てて指をさすと、八重子さんは一瞬無言になる。
はい、すみません……。
やっぱりマズかったよね〜とは思うが、やってしまった事はどうしょうもない。
「スライムって無害なんでしょう? だったら大丈夫だよね? 危険じゃ無い訳だし……」
『確かに人を襲う事は無いけどね、何でも消化出来るから勝手に作物や木を食べちまうかも知れないよ?』
げっ、マジですか?
それは困ったな。
ちらっと池に浮かぶスライムに目を向ける。
見た感じ、水分を吸収して膨れたのか、バレーボールくらいの大きさになっている。
まんま、水まんじゅうのように透明感のあるボディ。
触ったら、気持ち良さそうだ。
「ねえ、君達。私が良いよと言った物以外は食べないでね?」
何となく、そう言ってみる。
スライム達は聞いちゃいないのか、フヨフヨ浮かんで微動だにしない。
どこかに閉じ込めた方が良いんだろうか?
……もしくは殺っちゃう?
いや、それはちょっと無理〜!!
不安になったが、仕方がない。
私には魔物の命を奪う覚悟は無いのだ。
八重子さんの盛大なため息を聞き流し、様子を見て考えようと問題を棚上げする事にした。
最後の木の苗を植え、水をたっぷりと撒く。
やっぱり、神水を掛けると一気に私の目線まで木が成長したよ(遠い目)。
異世界クオリティ、恐るべし。
なんだか視線を感じ振り返ると、スライム達がこちらを見ている気がした。
目が有る訳じゃないから、気のせいかも知れない……。
うん、気にし過ぎてるんだな。
そう思う事にして他の作業に移った。
一通りの作業を終え、家に入った私。
なんだか疲れたので、ゆっくりお風呂に浸かってから夕食の準備だ。
あれ? スライムに何かあげた方が良いかな?
そう思って、とりあえずリンゴとトマト、そしてジャガイモを籠に入れて外に出た。
相変わらず池にプカプカ浮いてるスライム達に声を掛ける。
「お〜い、お前達のご飯をここに置いておくよ? 籠は食べちゃダメだからね? 中身だけ食べていいよ」
スライムに理解出来るかは分からないけど、一応池の縁に置いておく。
まあ、明日になれば食べたか分かるよね。
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