34 考えちゃダメだよね?
八重子さんの言ってる事が意味不明。
っていうか、分かりたくないってのが正しいのかも?
だって、『神獣の卵』って言ったんだよ?
世界樹が産んだの?
木が卵を?
ほら、意味不明でしょう?
『カエデ、戻っておいで』
はるか彼方に意識を飛ばしていたら、八重子さんからの帰還命令が届いてしまった。
しょうがない、帰るとするか。
「神獣の卵って、どういう事?」
『言っただろう? 世界樹が出来てしまったら神獣が生まれるって。どこに生まれるかは分からなかったけど、こうやって生まれるんだねぇ』
なんだか感慨深げにそう言った八重子さん。
いやいや、そういう問題じゃないんだよ?
ここで卵が孵化しちゃったらどうすれば良いのさ。
「や、八重子さん? どんな神獣が生まれるわけ?」
『う〜ん、そうだねえ。今、存在している神獣はブラッディキャットっていう、地球の猫によく似た魔獣だね。それも亜種みたいだよ? だけど、同じ種類かは生まれてみないと分からないね』
「え、猫? うわぁ、そうだといいなぁ!! 可愛いだろうね」
猫かぁ。
私、大好きなんだよねぇ。
「いつ生まれるんだろうね?」
世界樹に近付き、じっくりと卵を見つめる私。
なんだかニマニマしてしまうよ。
『違う動物の可能性も有るんだよ? 期待し過ぎじゃないかい?』
「……猫がいいなぁ」
実はあっちの世界で、猫でも飼おうかなんて本気で考えていたんだよね。
八重子さんが居なくなって寂しくなったってのも有るけど、昔から可愛いなって思ってたからさ。
ぼへ〜っと猫に思いを馳せていたら。
『さっさと畑を作った方が良いんじゃないかい? 野菜と果物の食生活を続けるつもりなら構わないけどね』
そうだった。
今すぐ孵化する訳でも無いようだし、ちゃっちゃとやりますか。
という事で、鉄製の鍬を想像具現化。
八重子さんにも了解を取って、クズ魔石で虹色魔石を創り、一度振り下ろすだけで土が柔らかくなるように付与を行った。
これで少しは楽が出来るだろう。
そう思ってたんだけど、甘かった……。
今ある畑に連なるように、縦6m×横6mの大きさを耕した。
確かに楽だよ?
一振りでふわふわの土に変わるんだからさ。
でもね、大きすぎるんだよ……。
ヘロヘロになりながらも何とか終わらせ、神水を飲んで休憩。
スーッと疲れが取れて、ほっと一息付けた。
『何を植えるか決めたのかい?』
八重子さんが聞いて来たので、鞄からノートを取り出して。
「うん。とりあえずはね〜、ネギ5・生姜5・にんにく5・青シソ3・赤しそ3・大根10・唐辛子3・胡椒10。あと砂糖も欲しいからビート10ってところかな?」
『そうかい、それなら残った場所に大豆を植えておきな』
「え? また大豆? あっちに4本有るよ? まだ青々してるけど」
『あれだけじゃ足りなさそうだからね。後、いつまでも水をやってたら大豆にはならないよ』
「ん? なんでよ?」
『神水をかけると植物が長持ちするからさ。成長は早いけど、枯れるまで何度も実をつけるってのも普通じゃないだろ? 水をかけ続けていたら枯れるのも、何ヶ月掛かるかね?』
……。
ダメだこれ。
深く考えたらいけないやつだね。
うん、受け入れよう……。
「……そうなんだ。それじゃあ、大豆用はお水をあげないようにするよ」
また一つ、神水の奥深さを知った私だった。
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