33 これって何?
昔、小学校で習った気がするんだけど、鏡って薄くした銀メッキを硝子で挟めば出来るんじゃ無かった?
そう思って、昼食後に黙々と作業を始めている私。
まあ、詳しく分からなくてもね、素材が有ればなんとかなるのが想像具現化さんですよ。
1つはお風呂用。
お風呂場には鏡が必要だよね。
2つ目は入り口の壁に。
これで出掛ける時の身だしなみも大丈夫。
3つ目は流し台に。
ここで顔を洗ったりするから、有ると便利。
4つ目は手鏡。
持ち歩けるから、有るといいよね。
ふんふん鼻歌を歌いながら創っていたら、お決まりの呆れ声で八重子さんが言った。
『いい加減、現実逃避から戻っておいで。逃げたって仕事が無くなるわけじゃないんだよ?』
ちっ!?
バレてたか……。
しょうがないよね?
畑を作れなんてさ、軽く了承出来るもんじゃないよ?
無意識に口を尖らせていたら、出来上がったばかりの鏡に顔が映った。
そうそう、私の顔って、10歳若返ってはいるけど元の私となんら変わりなかったんだよ。
相変わらず平凡な丸顔を見て、なんだか安心しちゃった。
だって、別人になってたらどうしようって、少し恐怖してたんだよね。
特別美人でもないけど、決してブサイクでもない(自分比)、だけどその顔が私なんだからさ。
これからもこの顔で生きて生きたいよね。
『聞いてるのかいカエデ。心を何処かに飛ばしてないで戻っておいで!!』
八重子さんがまたもやぎゃーぎゃー言ってるけど、まだ現実に戻りたくない。
戻れば畑作りが待っているからだ。
『そうかい、アンタがその気なら私にも考えがあるよ?』
マズイ!?
不穏な雰囲気を纏った、八重子さんの最後通告が出てしまった!!
昔、この言葉を無視して、何度枕を涙で濡らしたか分からない。
それくらい、八重子さんは怒ると容赦無い事をやるんだよ。
まあ、私が悪かったんだけどね。
八重子さんは決して理不尽な事はしないからさ。
『カ〜エ〜デ〜!!』
「はいごめんなさい!? すぐにやりま〜す!!」
これでもかってくらいに姿勢を正して、すぐさま外に飛び出した。
さて、しょうがないから始めましょうかと、何気に世界樹に目を向けた時だった。
「???」
またしても世界樹に違和感を感じてしまった私。
この前みたいに葉がへにょりとしてる訳でもなく、傾いているようにも見えない。
だから、いじけている訳では無いだろう……。
でも、なんか違う気がする。
「なんか変じゃない?」
思わず呟いた私。
『……ああ、ここなんだね』
ここ?
何の事を言ってるの?
そう問い掛ける間もなく、私の視界に青い円が浮かんだ。
『あれを見てごらん』
促されるまま、その円を見てみると木の根元に何かあるのが分かった。
近づいてよく見ると、なにやら虹色の丸い物が木の根元の所に置いてある。
というか、木の根が抱きかかえているように見えるんだけど……。
丁度、ダチョウの卵くらいの大きさに見えるし、形もまさに卵みたいだ。
「これ、なんだろうね?」
そう問い掛けた私に、八重子さんは良く分からない事を言う。
『神獣の卵だね』
ん?
何言っちゃてんの?
意味が分かんないだけど?
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