31 出来るよね?
八重子さんに呆れられながらも、外に出た私はアイテム鞄から山盛りの土を出した。
これは池を創った時に入れたものだ。
この土を片付ける時に思いついたのが『土に含まれる成分』である。
確か微量だけど、鉄分やナトリウムが含まれていると聞いた事があったのだ。
鉄分は鉄として具現化出来るだろう。
そしてナトリウムだが、本来ならナトリウムと塩は違うんだろうけど、私のスキル『想像具現化』ならば食塩として取り出せるはず。
だって硝子成分も土から創れたのだから、私の概念が大きく作用するとしたら出来ない訳が無いのだ……多分。
ということで、大きく分けて硝子・鉄・塩を想像具現化してみようと思います。
土の山に手をあてて、サクッと魔法の言葉を唱えてみましょう。
ただし、いっぺんには出来なさそうなので一つずつ。
「想像具現化」
虹色に発光した途端、少し小さくなった山盛りの土と、隣に現れたのがソフトボール大の硝子の塊が10個くらい。
次に想像具現化したのが鉄。
延べ棒の状態でこれも10本程。
そして最後に塩である。
土の上に直置きは嫌だったので、木で大きなボウルを創ってそこに入るように創ったのだが、真っ白な塩がボウルに山盛りで溢れそうになっている。
これは後で入れ替えなければ大変だ。
ガラス瓶とコルク栓んなら創れるんじゃないかな?
コルクって何かの木で出来てるはずだし。
「思った通り出来てよかった〜」
ホクホク顔で、それらを鞄にしまいながら八重子さんに声を掛けた。
「どう? やる時はやるでしょう?」
『想像具現化が凄い事は今に始まった事じゃないだろう? アンタがいい気になってどうすんだい?』
うぅ、その通りです。
調子に乗ってスンマセン。
やさぐれそうな心を何とか浮上させ、鉄で小型ナイフを創る。
あんまり上手では無いけど、何とか鉛筆を削る事に成功。
ノートを開いて、やることリストを作成しよう。
ん?
何を創らなくちゃって思ってたっけ?
やっぱり忘れてしまった私は、仕方なく八重子さんに教えを請うた。
「あとは何が必要なんだろうね?」
『そうだねぇ、とりあえずカエデが欲しいと言っていたのは調理器具とシャワーじゃなかったかい?』
そうだった。
生野菜や果物ばかりは嫌だって思ってたんだ。
せめてIHクッキングヒーターのような物を創りたい。
お鍋が2つ置けたらなんとかなるだろう。
コップやお皿、箸なんかも創らなくちゃね。
続く八重子さんの助言聞いて紙にカキカキしていく。
『あとはそうだねえ、鏡も創った方がいいね。それと洗濯用の桶みたいな物?』
なるほどね、たしかに必要だわ。
若返った自分の顔も見たいし、桶があれば洗濯が楽になるよね。
あっという間に薄暗くなって来たが、今の私なら大丈夫。
灯りをつけると、部屋の明るさにホッとした。
これで暗くなっても作業が出来るね。
まずはIH風のクッキングヒーターを創らねば。
熱を通しづらい金属で覆わないと、火傷や火事の原因になるよね?
さあ、どうしよう……私にそんな知識は無いんだよ。
またしても、ウンウン唸る私に八重子さんは言った。
『細かく構造を知らなくたって、使い方や見た目を分かっていたら想像具現化出来るんじゃないのかい?』
そうなのかな?
……そう言われてみると、そんな気がする。
だってよく考えたら私、知ってるだけで構造まで分かって無いのに色々創れたよね?
なんだ〜、深く考えちゃダメなんだよ〜。
そうと分かればちゃっちゃと創ってしまおう。
だって、お腹が空いてきたんだもん。
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