21 美味しいよ?
そういえば昨日錆びたナイフがもう一本あったよね。
とりあえず包丁を創って切ろう。
八重子さんにも了解を取って、サクッと想像具現化。
万能包丁と、忘れずまな板も枝が残っていたから用意した。
怒られそうだから、付与は付けてはいない。
急いでリンゴを洗って戻ると、まな板の上にドンと置く。
ザクッといういい音をたてて切れていく大きな赤リンゴは、ふわりとした甘い香りとたっぷりの果汁が溢れ出て、とても美味しそうだ。
我慢できずに皮付きのまま口に放り込む。
「うんま〜い!?」
今まで食べた事無いくらいの美味しさだよ。
余りにも美味しくて、サクサクシャリシャリと一気に半分食べてしまった。
結構お腹が満たされ、ほっと一息付くと。
『カエデ、お腹が空いていたのは分かるんだけど、顔洗ってないんじゃないかい?』
そうだった……。
ついつい食欲が勝ってしまったよ。
慌てて、昨日創っておいたタオルを片手に外の水道まで急ぐ。
魔石に手をあてて、程よい量の水を出すと、バシャバシャと顔を洗いながら。
洗顔ソープが欲しいよなぁ。
あと、歯磨きどうしよう?
それを言ったら、お風呂も入りたいんだけど……。
そんな事を考えながらタオルで顔を拭いていて、ハッと気がついた。
「あれ? 顔のベタベタがキレイに無くなった感じがする。高い洗顔を使った時みたいなしっとり感?」
思わず声に出していたんだろう。
八重子さんが答えてくれた。
『そりゃあ神水だもの。浄化作用が有るし、汚れなんて一発でなくなるだろうね』
……ほう? 浄化作用とな?
「それって、汚れもキレイになくなるって考えて良いのかな? うがいで歯磨き効果が出たりする?」
『そうだね。歯磨き効果は抜群だと思うよ? 磨くよりキレイになるんじゃないかい?』
そう言われたら試すでしょう?
口に含んでグチュグチュグチュペッ。
それを何度か繰り返して、実感する。
歯医者さんで歯垢除去してもらった時みたいに、歯はツルツル。
口の中のさっぱり感が半端無いよ!?
こりゃあ、間違いなく汚れが取れているね。
「これは凄いね。さすが神水だけ有るよ。この水でお風呂を沸かしたらめちゃくちゃ肌艶が良くなるんじゃない?」
『そうだろうね。このくらいの魔石の大きさなら疲れや痛みが取れ、どんな汚れも落とせるだろうね』
八重子さんの言い方に、ん? となった。
コレくらいの魔石の大きさとな?
「ねえ八重子さん? 魔石が大きいと、効果は変わるの?」
『そりゃあ変わるね。込められる魔力量が違うんだから効果が上がるのさ。カエデの場合は神力だから、病気を直す効果がある水が創れるかも知れないねぇ……」
そこまで説明して、八重子さんは言葉を切った。
なんか凄い水が創れるわけね。
大きな魔石ねぇ、どうやったら手にはいるんだろう?
そんな私の考えを見透かすように、八重子さんの有り難いご忠告が飛んでくる。
『何度も言うけどね、これ以上人に言えない物を創るのはおよし!! まずは生活基盤を作るんだよ!!』
耳を抑えても、頭の中に直接響いて来る八重子さんの声。
私は只々「ごめんなさ〜い」と謝るほかなかったのである。
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