19 約束だよ?
創造具現化して創った靴は、スニーカータイプでとても軽く履き心地は申し分ない。
劣化防止(小)と自動修復(小)という、有ってもおかしくない付与で済んで安心した。
目立たないようにと、色を茶にしたのは八重子さんの指示が有ったからだ。
『付与が付いてる物は高額なんだよ? 人目に付くように目立たせてどうするんだい』
ブーブー文句を言ってみたが、口で敵うはずもなく撃沈である。
ちぇっ、これも薄桃色にしたかったのにぃ〜。
『とりあえず、今日のところはこんなもんかね』
八重子さんの言葉に、いても経ってもいられずに待ったをかけた。
「はいっ、もう一つ大事な物が残ってます!!」
『急に何だい? そんなに興奮して』
これが興奮せずにいられようか。
異世界といえばアレでしょう!! そう言っても過言でない位の有名アイテムが有るじゃないですか!?
「アレですよ八重子さん、ア・レ!!」
そう言いながら、空魔石に神力を注ぎ込む。
ふふふふふっ。
これはどんなに諌められようとも、創らないという選択肢は無い。
『カエデ? 何やってんだい。そんなに神力を込めたら、またマズイ物が出来上がってしまうよ!?』
八重子さんが何やら吠えているが。
「何が出来るかはお楽しみ。心配しなくても大丈夫だって」
上機嫌で布を適当に切っていく。
用意が出来た所で。
「想像具現化」
私の手元が虹色に発光すると、ジャジャジャ〜ン!! それを両手で広げてお披露目をした。
「アイテム鞄の出来上がりぃ!!」
見た目にはA5サイズくらいの物が入りそうな、小ぶりで薄茶の斜め掛け鞄。
『……アンタねぇ』
八重子さんは呆れ声だ。
「心配しないで。なんか魔石の大きさが足りなかった感じがして、付与はあんまり付けられてないんだよ? 4畳半の部屋位の容量だし、時間停止じゃなく時間極遅なんだよね〜。使用者権限とか、盗まれた時に戻って来る仕様には出来なかったんだよ」
『……』
「八重子さん?」
無言の八重子さん。
なぜだろう、私の頭の中に怒りマークが次々浮かんで来るんだけど?
その後、八重子さんの怒号が私の頭の中に響き渡ったのは言うまでもない。
シクシクシク、そんなに怒らなくったって……。
外が暗くなって、早々と布団に潜り込んだ私。
灯りがまだ無いから、今日はもう寝るしか無い訳で。
色々あって……、ありすぎだけど、異世界初日が何とか終わろうとしているよ。
出来るだけ考え無いようにして、心の隅に押しやっていたんだけど、こんな暗がりにポツンといるとやっぱり不安が押し寄せてくる。
「ねえ、八重子さん?」
『ん? 何だい?』
姿は無いけど、私の頭の中に響く八重子さんの声。
一気に疲れが出てきたのか、眠気が私を襲う。
「もう……どこにも……行かないで……ね?」
何とか眠気を抑えながら、呟いてみた。
だけど眠気には勝てず私の意識は途切れたんだけど、何故か八重子さんが『ずぅ〜っと一緒さ』と言ってくれた気がして、幸せな気持ちになった。
お読み頂き、ありがとうございます。
少しでも面白かったと思って頂けたなら、次作への励みになりますのでブックマーク・評価・いいねを宜しく願いします。
そして、ブックマーク・評価・いいねを下さった皆様、本当にありがとうございます。
今後も頑張っていきますので、よろしくお願いいたします。




