16 しょうがないじゃない?
私の目の高さに成長したリンゴの木から、手頃な葉っぱを20枚ほど拝借しました。
そんなに取ったら剥げちゃうんじゃ? と心配しましたが、気が付けば元通りに茂っていました(遠い目)。
葉っぱから創造したのはトマトとじゃがいも、そして私の大好きなとうもろこし。
あとは八重子さんが必要だとゴリ押しした大豆。
まあ、枝豆としても食べれるから良いんだけど。
トマト5、じゃがいも5、とうもろこし5、大豆5で植えてみた。
水をあげたらすぐ実がなるかと思ったが、何故か四葉が出て終わりだった。
木と何が違うのか良く分からない。
『暗くなる前に寝床作りをしないとね』
八重子さんの言葉で空を見ると、太陽が大分傾いて来ている。
感覚的には「3時過ぎ」ってところ。
そこでまたまた疑問が浮かぶ。
「ねえ八重子さん? 私何にも食べてないけど、お腹が空いてないのはどうしてだろう?」
すると、八重子さんが一瞬動揺したような感じを受けた。
え? 何か深刻な内容? 聞いちゃマズイ事なんだろうか……。
そんな私の心配を簡単に八重子さんは斜め上にぶん投げた。
『まだ言ってなかったね〜、忘れてたよ』だって。
焦ったじゃないかぁ!? ビビらせないでくれよ!!
『カエデがあんなものなんか創るから、すっかり言い忘れてしまったじゃないか』
うっ、それを言われると何も言い返せません。
『身体を創り変えたばかりだからね、この世界の魔素に馴染んでる最中なんだよ。明日の朝位まではお腹もすかないし、排泄も無いよ。動いたり神力を使う分には問題が無いから安心しな』
明日の朝か……。
流石に間に合わないんじゃやなかろうか?
不安な気持ちで、植えたばかりの苗たちを見る。
今まで出来なかった「ダイエット」だと思う事にしよう。
諦めの気持ちで小屋に向かった。
小屋に入った途端、八重子さんはまたもや容赦ない事を言いだした。
『早く着ている物を脱ぎな』
な、何を言い出すんだこの人は(人じゃないけど)。
身ぐるみ剥いでどうするつもりなんだよ。
「な、なんで脱ぐ必要が有るのさ」
思わず条件反射で、腕を身体に巻き付けて身を守るポーズを取ってしまう。
『あんたは何を考えてんだい……。今から衣類を使って寝具や着替えを創らないと行けないだろう? あんたそのまま寝るつもりかい?』
何だよ〜、八重子さんはいっつも主語が抜けてるんだよ。
『カエデの事だから相変わらず寒がりなんだろう? 一体何枚着てるんだい?』
「だって、寒いんだもん、仕方ないじゃない?」
ブチブチ言いながら、最後の砦であるブラとパンツを隠すようにノースリーブのインナーだけは着たまま。
テーブルの上には、思ったより着ていたな〜と自分でも関心してしまう量の衣類が乗っている。
黒のスウエット上下、ヒートテック上下、もこもこ腹巻き、もこもこレッグウォーマー、もこもこ靴下、とどめにもこもこパンツだ。
『さすがにこの量は着込みすぎじゃないかね? どっかの年寄じゃ無いんだから……』
……八重子さん、言い訳させてもらうなら、あなたの残してくれた家は古くて寒いんですよ? 気づいてました? あちらはもうすぐ冬なんですから……。
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