12 少しは褒めてよ?
八重子さんの指示はこうだった。
① 拾った小指爪大の空魔石の1つに、神力を注ぎます。
② 次に入手した枝と魔石を持ちましょう。
③ ここで想像具現化の出番です。
鍬を思い浮かべながら「想像具現化」と唱えましょう。
※ ここで注意しなければならないのは、どんな硬い土でも豆腐の様に掘れる鍬だと、事前にイメージをかためることです。
④ 虹色に光ったら出来上がり。
以上。
こうして出来上がりました木の鍬片手に、向かって小屋の右側の空き地(水場の反対側)を耕しています。
初・想像具現化!? ヒャッハー! なんて、喜びや驚きの感情を表現する間も無く『ちゃっちゃとやりなさいよ』と、八重子さんの指示が飛ぶ。
ガツンガツンと硬い土を耕す音がしているが、音のわりに豆腐の様な軽い感触。
凄いもんだね。
あっと言う間に終了。
といっても、広さは2m×2mほどの大きさ。
いや、結構大きいって!? 普通なら凄く時間と労力が必要じゃない?
『枝を用意しな。ど真ん中に植えるよ』
歯向かう気力なんて一切起きず「あ〜はいはい」と、言われた通りに枝を挿す。
なんだか見た目はシュールだよね。
耕された畑のど真ん中に枝が一本、これなんの目印だよ。
いや、それよりもさぁ、八重子さんちょっとは褒めてくれてもいいんじゃない?
やさぐれてる私に、呆れたような八重子さんの声。
『何やってるんだい、カエデはそんな事をして楽しいのかい?』
「何って、八重子さんが言ったんじゃん」
『……まあ、あんたはそういう子だったね。世話の焼ける子だよ……。私が言いたかったのは、想像具現化で木を創って植えろって事』
木を創る?
この枝で?
半信半疑でいる私に、八重子さんは噛み砕くように説明を始めた。
今の私の想像具現化のレベルでは代替品が無いと物を創り出す事が出来ないという。
さっき作った木の鍬の場合は木が必要だったし、今は生きた木の苗を創りたいので、それに変わる枝がいるのだという。
要は、それに伴う素材や材料が必要らしい。
そして、魔石を使う事で何かしらの付与を行っていたそうだ。
ステータスを見てみると想像具現化と付与、どちらも(?)が消えていてレベル1になっていたので、ちょっと嬉しい。
ちなみに神眼も使ったからレベル1の表記になっていたよ。
「な〜んだ、そういうことね。早く言ってよ〜」
意味が理解出来たらこっちのものさ。
早速、ポケットから魔石を一つ取り出して神力を込めると、枝と一緒に想像具現化を行う。
イメージは青々とした新緑の大きな木。
虹色に光って出来上がったのは、私の膝丈位の大きさの生き生きとした木の苗だった。
「なんか小さいね。葉っぱも付いてないし」
まあ、いきなり大きな木が出来たら、手に持ってる私が潰れちゃうからしょうがないか。
『カエデ? あんた今、虹色魔石も使って想像具現化しなかったかい?』
「ん? したけど、それがどうかした?」
『…………』
必要以上に続く八重子さんの長い沈黙。
私、何か間違えちゃいましたかね?
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