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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

実際に見た夢、文章化シリーズ

イミテーションの窒息

作者: ふとんねこ


 ――などとしゃれついたタイトルで始めたが、実際に見た夢の文章化第11弾である。


 なかなかハードな世界観の夢を見た。その衝撃から大部分を覚えていたので共有してみようといつも通り筆を執る次第である。


 苦しい目に遭わされて散々だったが、昼間は家族と出かけた。楽しかったのでよし。



 それでは早速。


 夢は、見慣れない家の中で始まった。我が家ではない、都会の上層に位置しているらしいワンルームだ。開放的な窓ガラスから広々とした外と、広がる建物群が見えたのを覚えている。


 そんな家の中、私は引き出し付きの机に座り、ヒヤヒヤと招かれざる客を睨んでいた。


 正式な役職名は覚えていないが、雰囲気としては――異端審問官。神経質そうな顔立ちの、痩せた男だったと記憶している。この男は、我が家の“娯楽物”を取り締まりに来た存在だった。


 ……そう、この夢の世界では、個人が“娯楽物”を所有することが許されていなかった。


 定期的な調査、抜き打ち調査、通報からの家宅捜索など、市民が“娯楽物”を持たないように行政が様々な手段をとっているらしい。酷い話だ。


 そして……夢の中の私はじっと腰を据えた椅子のクッションと尻の間に――いや、もっと正確には椅子寄りの股の間に――イミテーションの宝石を隠し持っていた。


 何故そこに隠したし。


 夢の中の私にとって、その六つ程度のイミテーション宝石は厳選に厳選を重ねた宝物だった。

 規制される“娯楽物”、取り締まられないよう最低限を選んで隠していた。


 覚えているだけでも、アベンチュリンに似た三センチほどの六角柱、ローズクォーツのような球、ブリリアントカットの鮮やかな水色のもの……などなど、随分と綺麗なものが多かった。


 ちなみに現実の私はそんなもの持っていない。鉱物は本物派だ。


 どうやら抜き打ち調査に当たってしまい、慌てて机の引き出しに隠していたそれらを股に隠したようだった。だから何故そこに。


 しかし股に隠しているのも限界がある。調査官の男が「他の部屋にも案内してください」と言うので泣く泣く立ち上がることに。


 不自然にも右手を一回股の間に突っ込む謎ムーブ。調査官は気づかなかった。


 だが手をずっと握り締めているのも怪しすぎる。そう判断した夢の中の私は、色々と追い詰められてそれらを口の中に隠す暴挙に出た。ガラスの表面の埃の味が嫌にリアルだった。


 しかし小粒のイミテーションとはいえ六つである。ハムスターほどじゃないが頬は膨れる。


 その状況で何やら話しかけてくる調査官。

 答えなければならない私(口内にイミテーション宝石)。


 緊迫の瞬間である。



 そして私は――ごくりと、誤って一粒飲み込んでしまった。


 あの喉の痛みの感覚からして、恐らくブリリアントカットの一番大粒だった青いやつだ。



 突然の質問だが、これを読んでいる皆さんは大粒の飴をそのまま飲み込んだことがあるだろうか?

 それ以外でもいい、とにかくある程度の大きさがある“固いもの”なら。


 経験がある方は思い出してほしい。

 狭い喉を、ぐりぐりとゆっくり下りていく塊の圧迫感と痛みを。


 私は夢の中で、それを確かに味わった。

 いっそ熱を持つようなあの痛みだ。



 そこでハッと目が覚めた。

 慌てて喉を押さえる。あの痛みが残っている気がしたのだ。


 やけに息がしにくい。震えるような深呼吸をして、あれは夢だと言い聞かせる。


 そうしてようやく正常な呼吸が戻ってきた。

 夢の影響が怖すぎる。


 謎のハード世界観に加え、イミテーション宝石での疑似窒息体験。

 というわけで、飲み込んだものと、それが夢の中の体験であるということを重ねて『イミテーションの窒息』と題した。

 超苦しかった……やめてほしい、切実に。



 それにしても、何故“娯楽物”が規制されているのだろう?

 本や映画も駄目なんだろうか?

 創作物に生かされている人間として、非常に恐ろしい世界の夢であったと思う。


 これを書くために思い返しても、ぐぐぐ、と、喉が痛むような気がしてくるのだった。


ちなみに作者が実際に経験した「喉痛固形飲み込み事件」は、六角形の蜂蜜味飴である。

結構な大きさで、一度誤って飲み込み、その痛みに悶絶したくせに、その未知の感覚が癖になりその後何度か自分でわざと繰り返したというドM的奇行の歴史がある。

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― 新着の感想 ―
[一言] 飴玉飲み込むと、んぐぐってなって苦しいですよねぇ笑 小さいころによくやってましたが、六角の奴はなかったなぁ。 なかなかハードな世界観の夢でしたね。 そしてちょっとリアルで怖い。 実際にそう…
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