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約束と契約3  作者: オボロ
5/35

#5 妖とあちら側



妖は、基本、人間を食べたりしないらしい。

何かしらの突起した能力がある人間以外は、全然、美味しそうには見えないからだと、凪は言った。

逆を言えば、何かしらの突起した能力がある人間は、美味しそうに見える———ということになる。

つまり、奇才を持つ宮司と、次期宮司となる者は、妖には美味しそうに見えるというわけだ。


「超常現象的な事件というものには、必ずと言ってもいいほど妖が絡んでいる。“あちら側”というのもそうだ。そういう事件に宮司を関わらせるわけにはいかない。」

「だから、わたし?」


マリアは、男の子が消えてしまったショッピングモールへ、警察の榊原の車で向かいながら、警察がマリアに捜査依頼をする理由を、凪から説明されていた。

納得いかない言葉の羅列に、マリアは不満であることを隠さなかった。

しかし、そんなことで凪が揺らぐはずはない。


「宮司は忙しい。暇な次期宮司が依頼を受けるのは当然だ。」


凪は、問答無用でぴしゃりと言った。


七曜にくみする神社は、妖を引き付ける役割をにない、超常現象的な事件捜査に協力をする代わりに、時折見せてしまう非現実的な行動や現象については、おとがめ無しという免罪符めんざいふを、警察からもらっているという。


・協力の要請は、事件現場の管轄内にある七曜に与する神社にする。

ただし、次期宮司が存在する神社に限る。

・管轄内にある七曜に与する神社に、次期宮司が、まだ居ない場合は、次期宮司が居る神社で、事件現場から一番近い神社に依頼する。


これが、警察が七曜に与する神社に捜査依頼をする上で、最低限守らなければならないルールなのだと、凪は説明した。

つまり、マリアが次期宮司になるまで、黒石神社の代わりに別の神社の次期宮司が、今回のような事件の捜査をしていた——ということ。

ならば、やらないわけにはいかないと、マリアは諦めるしかなかった。









「着きました。ここの3階です。」


榊原の車が、男の子が消えたショッピングモールに到着した。

車を降りたマリアと凪は、榊原の案内で、男の子が消えた現場へと向かった。

エレベーターに乗り、3階で降りる。


「………。」


マリアは、榊原から貰った写真を見た。


梅田うめだ つとむくん 4歳


今年5歳になるという奨くんは、少しやんちゃな感じがする男の子だった。

ついさっきまで一緒に居たのに、突然に居なくなってしまった我が子を、母親はきっと凄く心配しているに違いない。

目を離してしまった自分の責任だと、自分を責めているかもしれない。

マリアは、親ではないので、親としての気持ちはよくわからないが、もしも消えてしまったのがアルフだったらと思えば、心配で堪らない気持ちは分かった。


『時間との勝負です。時間が経てば経つほど、連れ戻すのは難しくなります。』


そう言って、榊原は、今すぐにでも———と、マリアと凪をここへ連れて来た。

凪も、捜査は早い方が良いと、賛成した。

“あちら側”は、決して安全な場所ではないのだと言う。


『行くならば、今日だ。』


凪が決定を下した。




「母親がここのお店をのぞいている時に、奨くんは、小走りでこっちに向かってます。」


3階にあるスリーコインズショップの前で榊原は言った。

マリア達は、奨くんが向かった方へ歩き出した。


「………。」


マリアは、榊原に見せてもらった映像を思い出していた。


奨くんは、小さな何かを追いかけて、小走りになっていた。


小さな何か……

ネズミだろうか?




「ここです。ここで奨くんは消えています。」


榊原が立ち止まったのは、ゲームセンターの手前にあるATMを、少し通り過ぎた場所。

通り沿いの洋服店は、改装中だった。

お店の周りには、緑色のシートがぐるりと掛けられている。

立ち入り禁止を示す三角コーンが幾つも並んでいた。

お店の前には他に何も置いてないし、わざわざ近づく人も居なかった。

しかし、奨くんは、確かに、そのお店の前で消えていたので、マリアと凪は、何度もお店の前を行ったり来たりした。



「ここに入り口があったのは、確かだな。」


立ち止まった凪が、ぽつりと言った。







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