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約束と契約3  作者: オボロ
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#4 消えた男の子の捜索



「今、警察が来てるんだって?」


神社から戻って来たノラが、茶の間の方を見ながら言った。

情報源は、B・Bだ。

B・Bは、わざとマリアに話しかけた榊原が、マリアに関係の無い話をしに来たとは思えず、ノラに偵察を頼んだのだった。


「今、ドドが話の内容、聞いているよ。」


ドドと一緒に、今日の料理当番であるバトが言った。

ドドは、琴音のお茶を持って行ったまま、戻って来ていなかった。


『お茶を持って行ったら、そのまま廊下で息をひそめて、中の話を聞いて来て。』


バトが頼んだ。


1人で先に戻って来た凪が、客用の湯飲み茶わんの用意をして、先に客人とマリアと自分のお茶を用意するように言った。


『琴音の分は、琴音が戻って来てからでいい。』


これは何かある———と、バトは感じ、茶の間の中でされる話は、自分達が知るべき話だと判断した。


夕食の下ごしらえぐらい、バトは1人でも平気だが、ドドではそうはいかない。

必然的に盗み聞きは、ドドの役目になった。




「………。」


ドドは、茶の間の前で息を潜め、小さくなって、中の様子を窺っていた。

中では、繰り返し映像を見ているところだった。

会話はほとんどない。


《交代するよ。ここまでの報告、ノラにして来て。》


夕食の下ごしらえを終えたバトが、思念でドドに交代を申し出た。

ドドはゆっくりと後退して、ノラの所へ向かった。




「どんな話していた?」


戻って来たドドを見て、ノラは待ちきれないとばかりに聞いた。

ドドは、聞いていた茶の間の中の会話を、思い出しながら話した。


「うんとね、警察の人は、マリアに捜査の依頼をしに来たって言ってた。男の子が居なくなったんだって。で、その時の映像をマリア達に、今、見せてるところ。なんかね、消えちゃったみたいだよ。まるで神隠しです——って、警察の人が言ってた。」

「ふーん。」


ノラは、ドドの話を頭の中で整理した。


・男の子が居なくなった。

・神隠しみたいに消えてしまった。

・警察は、その消えた男の子の捜査を、マリアに頼みに来た。


「なんで、マリアに頼むんだろう……」


ノラは不思議に思った。

マリアには奇才があり、黒石神社の次期宮司に決まっているが、ただの高校生であることに変わりない。

警察が行方不明者の捜索依頼をする相手としては、相応しいとは思えなかった。


「さぁ……」


ドドにも分からないので、ドドは首を傾げるだけだった。




「……?どうしたの?」


慌てた様子で戻って来たバトを見て、ノラは聞いた。


「話が終わった。今から、ショッピングモールへ行くらしい。」


バトは、自分達の存在を知られないようにする為、ノラを連れて、台所の中の奥の方に入った。

外国人の子供が何人もいると、警察に知られるのはまずいと思ったからだった。


「ドドは、お茶下げて来て。ついでにマリアの様子も見て来て。」


バトは、茶の間にドドを向かわせてから、ドドが離れた後の茶の間の中の会話を、ノラに話した。


「今日の午後1時、ショッピングモールに母親と買い物に来ていた男の子が行方不明になった。男の子の行動は、ショッピングモール内の防犯カメラに映っていて、何かを追いかけていたみたいだ。でも、途中で姿が消えた。神隠しにあったみたいに。警察は、消えた男の子は“あちら側”に迷い込んでしまったのではないか———という見解をしていて、マリアには、“あちら側”へ行って、その男の子を連れ戻して来て欲しいって、頼んでた。凪も琴音も断らないし、マリアを止めようともしなかった。時間が勝負だとか言って、今から男の子が消えたショッピングモールへ行くらしい。」

「なんだ、それ?——っ‼」


折角、バトが小声で話しているのに、話の流れに納得がいかないノラは、荒げた声を出した。

バトは、慌ててノラの口を塞いだ。


「しっ!聞こえちゃうよ。」




「突然、お伺いしまして、すみませんでした。失礼します。」


玄関から、警察の人だろう男の人が挨拶している声が聞こえた。


「じゃあ、おばあちゃん、行ってきます。」

「行ってまいります。」


マリアと凪も、一緒に出るらしかった。


「あぁ。頼んだよ、凪。マリア、無理はしないでね。」


琴音が見送って、しばらくすると、玄関の扉が閉まる音がした。




「………。」


琴音は気が付いていた。

ドドとバトが、茶の間の前で、聞き耳を立てていたことを。


B・Bと使い魔達は、最近、更にマリアを気にかけるようになった。

絆が深まれば深まるほど、大切に思う気持ちも深くなるもの。

大切に思うからこそ、気にかけるようにもなるし、心配もするのだ。


「ふふふ…。いい傾向だ。」


台所から、こちらの様子を窺っているバトとノラの気配を感じて、琴音は、密かに笑みを浮かべた。







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