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約束と契約3  作者: オボロ
34/35

#34 あっという間と思う訳



「いってきまーす。」


学校に向かうマリアが境内を通って行く。

手水舎ちょうずやの傍を掃いているB・Bを見つけて、元気に手を振るマリアに、B・Bは、掃く手を止めて、手を振った。


金石神社との合同調査から2週間が経った。

今日からマリアは学期末テストなのだと、バトが言っていた。

中間テストの時に作った励まし弁当を、マリアが喜んでくれたから———と、今回も”がんばれ”と、マリアを励ますようなお弁当を作るんだと、バトは張り切っていた。

バトは料理の腕を随分と上げた。


B・Bは、境内を掃く手を止めたまま、空を見上げた。


今日も暑くなりそうだ。

日本に来てからの1年間は、あっという間だった。


初めて日本に来た時、ここは夜中だった。

時差も分からず、マリアよりも先に来てしまった。

神域への立入りが許されず、しばらくの間、森の中での寝泊まりが続いた。


『人が思いを込めて作ったモノには「力」がある。』


初めて、その言葉の意味を知ったのも、森の中だった。

あの時の感動は、今でもよく覚えている。


泣きたくなった。

込み上げて来る感情が涙となって溢れて来そうだった。

心と身体が温かくなった。

気温は高く、暑かったはずなのに、温かいと思うことが不快ではなく、心地よかった。


あれは、不思議な体験だった。


マリアが学校に通うようになった頃、ようやく黒石神社の境内に入ることが許された。

しかし、神殿に入ることは、なかなか許してもらえなかった。

マリアに触れても、煙は出ないし、痺れることもなくなったというのに、神殿の見えない壁は、いつまでも消えてくれなかった。

入って来るなと、言われているようで、辛かった。

黒石神社の神にも拒まれている。

その事実が辛かった。


黒石神社の神にも受け入れてもらえないかもしれない。

受け入れてもらえる日は来ないのかもしれない。


そう思い悩んだこともあった。

しかし、それは解決された。

マリアの七曜神楽で浄化され、黒石神社の神である御弥之様が新しい依り代を与えてくれた。

そして、神殿に入れることが許された。

ようやく、認めてもらえたような気がした。


大掃除をして、新年を迎えた。

新しい年を迎えることの意味と、自分が黒石神社でするべきことが、なんとなく分かった———ような気がした。


与えられた居場所が心地よいと、今は本当に思っている。


マリアの為になりたい。

この神社に尽くしたい。

この居場所を失いたくない。


日本に来てからの一年が、あっという間だったと思えるのは、今、自分が幸せだと思えるからに違いないと、B・Bは思い、頬を緩ませた。







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