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約束と契約3  作者: オボロ
3/35

#3 神隠し




「これを見てください。」


榊原は、持って来たタブレットで、動画を再生した。

マリア達は、再生された動画を見た。

動画は、ショッピングモール内の防犯カメラの映像だった。


「この子を見ていてください。」


榊原の指が示したのは、小さな男の子だった。

たくさんの人が行きう中、1人で小走りしている様子が映っていた。

歩いている大人達にぶつからないよう、上手うまくかわしながら、“歩いている”というよりも、走る手前のような速さで移動していた。

通り過ぎる大人達は、誰も声を掛けていなかった。


「………?」


ふと、マリアには違和感があった。


「ここです。」


榊原が言った。

言った途端、映像の中の男の子の姿が消えた。


「え?」


マリアは思わず声を出していた。

映像の中の男の子は、何かの陰に隠れて見えなくなったのではなく、忽然こつぜんと姿を消していた。


「まるで、神隠しです。もう一度、再生しますね。」


榊原は、もう一度、映像を再生した。

そして、男の子が、ショッピングモール内を小走りしている映像になると、意見を求めるように、榊原は聞いた。


「何かを追っているように見えませんか?」


「………っ!」


言われて、マリアは違和感の理由を知った。


あまり褒められたことでは無いが、ショッピングモールの中を走っている子供は居る。

鬼ごっこ

かくれんぼ

ただ、ふざけているだけの場合もある。

だが、男の子が見せていた小走りは、そのどれにも当てはまらなかった。

周りに居る人の足元を見ながら小走りしている姿が、ショッピングモール内で見る姿としては、マリアには違和感があった。


それも、小さな何かを追っていたとしたなら合点がいった。

小さな何かを追いかけて、小走りしていたに違いない。


「きっと、それです。」


マリアも、そうに違いないと、榊原の意見に賛成した。


マリア達は、その後、男の子が忽然と消えてしまった瞬間の映像を、何度も何度も繰り返して、確認した。

何度見ても同じで、どこかに隠れたわけではなかった。

スロー映像でも確認したが、男の子の体は、空気の中に入って行くみたいに消えてしまっていた。

男の子が何を追っているのかは、結局、確認することは出来なかった。


何を追っていたにしても、忽然と消えてしまうのは、不思議だ。

どこへ消えてしまったというだろうか?


マリアには見当もつかなかった。



「本日、わたしは、この事件解決の依頼で伺いました。」


榊原は、再生していた映像が終わると、もう、再生を繰り返すのは止めて、マリアに向かって言った。


「………。」


マリアは、なぜ自分に言うのか分からなくて、ちらりと琴音を見た。

琴音は、素知そしらぬ顔をして、お茶を啜っていた。


「………。」


凪を見ても、凪はマリアを見ようともしなかった。

仕方なく、榊原を見た。

榊原は、まっすぐな目でマリアを見ていた。


「今回のこの事件、消えてしまった男の子は、あちら側へ迷い込んでしまったのではないか———というのが、わたし達の見解です。つきましては、黒石神社次期宮司であるマリア・月城・グレースさんには、あちら側へ行き、消えてしまった男の子を連れ戻して来ていただきたい。」


言っていることは、無茶苦茶だった。





『警視庁の榊原です。今回、次期宮司であるマリア・月城・グレースさんに、捜査を依頼したく、伺わせていただきました。』



どうして、マリア指名で、警察から捜査の依頼が来るのか、マリアは、まだ説明されていなかった。







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