#27 即席救助隊出動
「じゃあ、お願いします。」
マリア達は、あちら側へ行く準備を始めた。
小金井佑介が連れ込まれた渦巻き状に歪んだ空間は、もう消えてしまっているので、マリアは、ネズミ男に再度、入り口を作ってもらうことにした。
ネズミ男は、広げた両手を入り口があった空間にかざして、目を瞑り、集中した。
すると、空中に、渦巻き状の歪みが、徐々に現れてきた。
マリア達の役目は、あちら側に連れ込まれてしまった、小金井佑介を連れ戻すことだ。
いざこざは、なるべく避ける。
カエル男のことも、オオジョロウグモであるお嬢のことも、放っておけるのであれば放っておく。
誰一人欠けることなく、小金井佑介を連れて、無事に戻ることだけを考えることにした。
「いい?戦わないで済むのならそれに越したことはないんだからね。絶対に逸れないこと。全員で戻って来るんだからね。」
「わかった。」
「うん。」
「了解。」
「OK。」
マリアの言葉に、4人は軽い返事をして、あちら側へ行く準備は整った。
「さぁ、行きましょう。」
「わたしが先に行く。」
あちら側へと続く、渦巻き状に歪んだ空間に、最初に入ったのは、B・Bだった。
「次は、僕が行くよ。ほら、行くよ。」
ネズミ男の首根っこを掴んだノラが、2番目に入った。
「じゃ、次、おれ。」
続いて入ったのは、クロ。
そして、その次が、マリアの番になった。
「じゃあ、凪、行ってくるね。バト、ドド、後はよろしくね。」
凪はムスッとしていた。
その様子にバトとドドは呆れながら、軽く手を挙げてマリアを見送った。
最後まで残ったヴィゼは、凪を見て溜息を吐いた。
いつも偉そうな態度で、上から目線で話す狐にも、マリアに置いて行かれて拗ねるような可愛らしさが残っていたにしても、この場でこの態度は、あまりに大人げが無い。
同じように残ることになったバトとドドを見習ってほしい。
神使とは、神に仕えるモノ。
神が実在する体を持って現の世に存在していない今、神使が仕えているのは、現宮司であるはず。
しかし、次期宮司も大切で……
全く、面倒だ。
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。でも、あんまり遅いようだったら、後から来てよ。そいつにも作ること、出来るんでしょ?」
ヴィゼは、ちらりとカエル男を見て言った。
マリアが大切で、マリアが心配だから、マリアの傍に居たいと思う気持ちは分かる。
マリアが大切だから、置いて行かれることが、必要ないと、思われているみたいで嫌なのだ。
しかし、マリアは決して凪を必要としていないから置いて行った訳ではない。
マリアの気持ちまで分かってしまったヴィゼは、自分自身にも呆れてしまった。
「いつまでも拗ねていて、時期を見逃さないでよ。」
決して当てにしていない訳じゃないよ。
いざとなったら頼りにしているよ。
そんな気持ちを込めて、にやりと笑い、ヴィゼは渦巻き状に歪んだ空間の中へ入って行った。




