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約束と契約3  作者: オボロ
26/35

#26 小金井佑介の抵抗



ドサッ!

「くっ!」


バタンッ!

「グワッ!」


渦巻き状に歪んだ空間の中に入ってしまった小金井佑介は、勢いよく地面に叩きつけられた。

小金井佑介を引っ張り込んだカエル男も、地面に叩きつけられ、小金井佑介を拘束していた長い舌は解けていた。


「ゲコゲコ……ゲコゲコ……」


お尻と頭を摩りながら、カエル男は立ち上がる。

そして、


「ゲッ…⁈コ……?」


首元に、大きな刃が当てられていることに気付いて、体を強張らせた。



「動くなよ。」


小金井佑介は、薙刀の長い柄を短く持ち、カエル男を脅した。




小金井佑介とカエル男は、暗い森の中に居た。

右を見ても、左を見ても、うっそうと茂る木々ばかりで、ヒトも動物も無く、静かな場所だった。

渦巻き状に歪んでいた空間は、もう何処にも無く、戻ることは出来そうもなかった。



「俺を、どこに連れて行くつもりだった?」


小金井佑介は聞いた。


「お嬢という女の所か?」

「……ゲコッ…」


カエル男は怯え、答えることが出来なかった。

小金井佑介には、自分が持っている長い柄の刃物、薙刀に怯えているのか、お嬢に怯えているのか、判断することはできなかった。


とにかく、ここから先に進むのは危険だ。

早く戻らなければ……。


小金井佑介は、何よりも戻ることを最優先にすべきと考えた。


「さっきの場所に戻れ!今すぐだ!」

「…ゲコッ…」

「入り口、作れるんだろう?」

「ゲコゲコッ…」

「なんでしゃべらないんだよ!」

「ゲコッ…」

「くそっ………。」


カエル男は、小金井佑介が何を言っても、ただゲコゲコ鳴いているだけで、言葉が通じているのかもわからなかった。



小金井佑介の手にある薙刀は、マリアが思念で作り上げた弓矢のように、光っては居なかった。

実在している薙刀と、同じように見える。

しかし、持ち歩ける大きさではないので、思念で作り出したものであるのは確かだった。



2人は、ずっとそのままだった。

カエル男は、薙刀の刃を首元に当てられたまま、ゲコゲコ鳴く以外には何も言わなかった。

逃げようとするどころか、全く動かない。

小金井佑介は、人の世に戻りたいのに、出口が無いのでは、どうすることも出来なかった。


仲間は他に居るのだろうか?

お嬢が此処に来ることは?


「くそっ!」


全く埒が明かない、時間ばかりが経つこの状態に、小金井佑介は苛立った。



「誰かいるの?」



声がした。



「何をしているの?」



女の子の声だった。

小金井佑介は、声がした方に目を向けた。


「………⁈」


木々の間から姿を見せたのは、髪が長くて色白の、百合の花のような女の子だった。

柳梗平が証言していた通りの容姿に、小金井佑介は驚いた。



「あら、三郎?三郎じゃない。随分と遅かったのね?」



か弱そうな容姿、か弱そうな声。

知らなければ、絶対に騙されるだろう。


「こっちに来るな!」


小金井佑介は、近づこうとするお嬢に叫んだ。



小金井佑介たちの予想では、お嬢が親玉だ。

運び屋たちに命令し、柳梗平を運ばせて、精力を吸い取っていた張本人だ。

柳梗平に怪しげな術を掛けたのも、この少女であるはず。

か弱そうな姿をしていても、中身は大物に違いなかった。



「どうして、そんな酷いことを言うの?彼はうちの使用人よ。返してちょうだい。」



お嬢はか弱い振りをし、カエル男を心配する振りをして、一歩前に進み出た。


「それ以上、近づくな!」


小金井佑介は、カエル男の首根っこを掴み、盾にしながら、持ち直した薙刀をお嬢に向けて、お嬢の動きを警戒した。







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