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約束と契約3  作者: オボロ
22/35

#22 2度目の作戦



マリアと凪は、柳梗平を迎えに来ていたネズミ男と2人のカエル男の目的を考えた。


柳梗平をあちら側へ連れて行っていた目的は、柳梗平の血色の悪さを見れば、精力を吸い取っているのだと、予想できた。

おそらく、吸い取っているのは、ネズミ男でもカエル男たちでもなく、『お嬢』だ。

体の弱い、百合の花のような女の子だと、柳梗平は、カウンセリングの時に言っていたが、その体の弱い、百合の花ような女の子が主犯なのだろうと、マリアも凪も確信していた。


このまま精力を吸い取られ続けていたら、柳梗平の命が危ない。

マリア達は、3度目となるネズミ男たちの犯行を、なんとか阻止することに成功した。

しかし、それで、『お嬢』が諦めるとは思えず、警察からは引き続きの合同調査協力を依頼された。


小金井佑介は、前回同様、毎日の見張りと8日後の雑居ビル前集合を、マリアと凪に頼んできた。


柳梗平の精力を吸い取っているのは、おそらく『お嬢』と呼ばれている妖。

ネズミ男と2人のカエル男は、ただの運び屋。


小金井佑介の予想は、マリアと凪の予想と同じだった。


今から、別の獲物を探すよりも、罠にかけた獲物を運ぶ方が簡単なので、柳梗平に掛けた術が解けるまでは、柳梗平を連れて行こうとするに違いない。

ただ、これといった解決策は、まだ見つかっていなかった。

今のままでは、妖たちが柳梗平を狙い続けている限り、マリア達は、永遠に柳梗平が連れ去られるのを阻止し続けるしかない。

運び屋を祓ったところで、術を掛けたのが『お嬢』ならば、別の運び屋が来るだけ。

なんとか『お嬢』を引きずり出さなければならないのだが、なかなかその方法が思いつかなかった。

分かっていることは、もう柳梗平をあちら側へ連れて行かせてはいけない———ということだけ。


「万が一にも、あちら側へ連れて行かれてしまったら、終わりです。もう柳梗平は戻って来ない。絶対に阻止しましょう。」


これも、小金井佑介は、意見を一致させていた。


念の為の毎日の見張りに、異変は無かった。

どんなに訴えても妄想と扱われてしまうことに、柳梗平は苛立ちを募らせていた。

暴れることもあった。

その度、鎮静剤を打たれているようだった。

カウンセリング以外の時間は、ほとんど寝ているような状態だ。

柳梗平にとって、あまり良くない環境のように思えてならなかった。

それ以外の対処法が病院にはないのだと、残念そうに柿坂が説明してくれたのが、マリアには印象に残っていた。


「すまないね。今回の事件は長丁場になりそうだ。学校に影響が出ない程度によろしく頼みます。」


妖相手では何も出来ないことを、やむ人がいる。

マリアは、なんだか不思議な感じがしていた。




そして、8日目の夜、新たな作戦が、ようやく立てられた。

今回、考え出された作戦は、こうだった。


前回、運び屋たちは、柳梗平を籠に乗せて猛スピードで運んだところ、見事に吹き飛ばされて転がった。

柳梗平は、籠の中に居たので無事だった。

なので、今回、柳梗平を何かの中に入れて運ぶとは考えにくい。

剥き出しの状態で、かかえるなり背負うなりして運ぶなら、柳梗平に当たることを恐れて、攻撃の手を緩めるのではないかと、考えるのではないだろうか。

そこで、柳梗平をかかえるなり背負うなりして運んでいる運び屋諸共もろとも、捕獲することになった。

逃がす運び屋は、たった一人。


「仲間を助けたければ、『お嬢』をここに連れて来い————そう言って、『お嬢』を引きづり出します。」


小金井佑介が作戦を提案した。


「脅すなんて卑怯な真似、本当ならしたくありません。でも、そんなこと言っている状況ではないと思うんです。ただ、ここに現れた『お嬢』をどうするかは、『お嬢』と対峙した時に決めたいと思います。」


脅すことに対して、小金井は苦渋の選択だったことを説明し、凪に意見を求めた。


完全に祓うか——

少しの力を残して解放するか——


決めるのは、金石神社の次期宮司・小金井佑介と、神使・沙也だ。

マリアと凪は、その手伝いで来ているだけなのだから。


「よろしいのではないでしょうか。」


凪は、小金井佑介の提案に賛成の意を口にし、マリアを見た。

マリアは、凪に意志をんで、後をつづけた。


「わかりました。わたしと凪が、柳梗平さんと運び屋2人を確保します。残り1人の捕獲と交渉は、お願いしますね。」


8日目の夜、マリア達の作戦は決定した。


「承知しました。」


小金井佑介は、力強く頷いていた。







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