#21 百合の花のような『お嬢』
パシーン!
「ぐっ!」
パシーン!
「がっ!」
パシーン!
「ぐぁっ!」
パシーン!
「がはっ!」
パシーン!
「申しわけありません!」
パシーン!
「申しわけありません!」
パシーン!
「許してください!」
パシーン!
「許してください!」
パシーン!
「ゲッ!」
パシーン!
「ゲコッ!」
パシーン!
「グワッ!」
パシーン!
「ゲコッ!」
屋敷内に鞭で叩く音が響き渡っている。
鞭で叩かれる者の呻き声も聞こえていた。
鞭を使っているのは、少女だ。
髪が長く、色白で品の良さそうな、着物姿の少女だ。
「分かっているの?必要なのは、あの子供ではなく、次期宮司なのよ?あの子供は次期宮司を釣る為の餌。餌にばかり気を取られているんじゃないわよ!」
身体が弱いはずの少女は、大声で男たちを罵りながら、鞭を振り、男たちに打ち付けていた。
「次期宮司の子供を連れて来るのに、一体、どれだけ待たせれば気が済むの!あんまり待たせるようなら、お前の家族を食ってしまおうか?それでもいいのかい⁈」
鞭で打たれながら、ネズミ男は言った。
「待ってください。それだけは、まだ待ってください。必ず連れてきます。今回は次期宮司の子供が2人も釣れたんです。次は、必ず連れてきますから……。」
「お願いします……。お願いします……」
「ゲコッ……ゲコゲコッ……」
カエル男2人は、頭を抱え、怯えながら、祈るように呟いていた。
少女は、姿を徐々に変えていった。
身体は大きくなり、手足は伸び、着物は引き千切れた。
顔の形も、手足の形も変わり、少女は、醜くも恐ろしい蜘蛛の姿になった。
「次は無いよ。今度は必ず連れて来なさいよ。」
大きな目でギョロリと、大きな蜘蛛女は、ネズミ男とカエル男たちを睨みつけた。
いつの間にか、屋敷も庭も消えて、うっそうと茂る木々に囲まれた空き地に変わっていた。
周りを囲む木々のあちらこちらに、蜘蛛の糸が張り巡らされている。
一際、頑丈に蜘蛛の糸が張られている場所があり、その先は洞窟になっていた。
洞窟の中には、たくさんの骨が転がっている。
洞窟の奥の方に居るのは、ネズミ顔の女の人が1人と、ネズミ顔の子供が3人。
「………。」
「………。」
「………。」
「………。」
4人は、互いに身を寄せ合い、震え、怯えていた。