表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
約束と契約3  作者: オボロ
2/35

#2 警察からの依頼



5月になり、新しい授業体制にも、マリアがだいぶ慣れてきた頃、警察の者と名乗る人物が、黒石神社を訪ねて来た。


「すみません。警察の者ですが、宮司にご相談がありまして。次期宮司の方ですね?宮司はいらっしゃいますか?」


巫女姿のマリアに声に掛けて来た男は、警察手帳を広げて見せながら言った。

広げた警察手帳の中には、警察のエンブレムと身分証があった。


警察庁

榊原さかきばら 一秀かずひで


境内には、マリアの他に、新太あらたとB・Bも居た。

しかし、榊原は、二人には声を掛けず、まっすぐにマリアへと向かって歩いて来て、声を掛けた。

次期宮司がマリアであることを知っていて、わざとマリアに話しかけて来たのだと、マリアは思った。

B・Bも、そのことに気付いて、榊原を、じっと見ていた。


「はい、おります。こちらです。」


マリアは、作り笑いを貼り付けて、榊原を社務所まで案内した。




「宮司、お客様です。」


社務所内の待合所で榊原を待たせて、マリアは、事務所の中に居た琴音に声を掛けた。

書類に何かを書いていた琴音は、書く手を止めてマリアを見た。


「お客?」


名前を言わず、“お客”と言ったマリアの言葉に、琴音は不思議そうな顔をして聞き返した。


「警察の方です。宮司に相談があるそうです。」

「ああ、そういうこと…。マリア、警察の方を自宅にご案内して。陽菜乃ひなの、悪いけど、先に上がらせてもらいますよ。」


琴音には、警察が訪ねて来る心当たりがあるのか、警察と聞き、驚くというよりも納得して、テキパキと指示を出した。


「はい。後はやっておきます。お疲れさまでした。」


陽菜乃は、残りの雑務を快く引き受けていた。


「………。」


琴音は目をつむり、意識を集中している。

おそらく、なぎに思念を送っている。


「失礼しました。」


マリアは、榊原が待つ待合所に戻り、琴音の指示通り、榊原を自宅に案内することにした。


「宮司の自宅へご案内します。どうぞ、こちらです。」

「あ、はい。お願いします。」


榊原は、マリアに軽く頭を下げて、マリアの後ろを歩き出した。






「おかえり、マリア。」


自宅に戻ると、既に戻って来ていた凪が、玄関で待っていた。

マリアに声を掛けた凪は、榊原を見て、軽い会釈をした。


「警察の方だそうですね。ご苦労様です。どうぞ、中へ。じき、宮司も参ります。」


玄関を開けて、榊原を家の中へとうながす。

マリアも、榊原に続いて、家の中へ入った。




「……お茶です。」


茶の間にお茶を持って来たのは、ドドだった。

マリアと凪が並んで座り、向かい側に榊原は座っていた。


「ありがとう、ドド。」

「………。」

「あ、ありがとうございます。」


マリアはお礼を言い、凪は無言。

榊原は、恐縮しながらお礼を言った。

外国人の子供が持って来たことには、全く、触れなかった。


「………。」

「………。」

「………。」


沈黙が続いた。

耐え切れなくなったのは、マリアだった。


「あの、わたしが次期宮司だと、どうして知っていたんですか?」

「あぁ、それはですね、昨年の秋祭りに、イギリスから来たハーフのお孫さんが、七曜神楽を舞ったという報告がありまして……。」


マリアの質問に、榊原は言いにくそうに答えた。

それはそうだろう。

報告があったという所までしか榊原は話さなかったが、その後に続く言葉は、『マリアのことを調べた。』なのだろうから。


「………。」

「………。」

「………。」


更に、重く息苦しい沈黙になってしまった。



「おやおや、何だい?随分と空気が重たいね。」


ガラリっと、戸が開いて琴音が入って来た。

よいしょ———と、琴音が座ると、ドドが琴音の分のお茶を持って来た。


「あぁ、ありがとうね、ドド。」


ドドにお礼を言い、ドドが持って来たお茶をすすって、改めて、榊原を見て、琴音は言った。


「警察の人だと聞いていますよ。初めまして、黒石神社の宮司、月城つきしろ琴音ことねです。」


榊原は、姿勢正しく座り直して、琴音に自分の名刺を差し出し、頭を下げた。


「警視庁の榊原です。今回、次期宮司であるマリア・月城・グレースさんに、捜査を依頼したく、伺わせていただきました。」







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ