表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
約束と契約3  作者: オボロ
19/35

#19 カウンセリングで語られた内容



4度目の奇行により保護された柳梗平は、カウンセリングを受けながらリハビリすることで、今後の治療法は決まった。

病院の医者も、柳梗平の両親も、柳梗平の奇怪な行動に、妖が関わっているなどという考えが浮かぶ訳もなく、精神的な問題であると結論付けた。


カウンセリングの様子は全て録画しているのだという。

そして、警察庁けいさつちょう総務部そうむぶ情報管理課じょうほうかんりか庶務室しょむしつ室長しつちょう ・ 桧山ひやま総一朗そういちろうの根回しによって、小金井佑介は、それを見ることが出来た。

勿論、協力体制にある黒石神社の次期宮司・マリアも———だ。


柳梗平は、頑なに自分は可笑しくはないと言い続けていた。


「学校は楽しくないし、友達は居るけど、別にって感じ。話を合わせるのって疲れるんだ。でも、1人で居ると、先生達が心配して話し掛けて来るから、それも面倒臭いし…、だったら、大して楽しくなくても、学校に居る間だけ、同級生と一緒に居た方が良いかなって……。」


「友達と、どういう場所に行って遊んだりしていたのかな?学校の帰りにカラオケとか?」


「学校のあと、どこかに遊びに行ったりなんてしないよ。どうせ、つまんない話で盛り上がった振りをしなきゃならないんだ。そんなの学校だけで充分だよ。だから、用事かあるって、いつも遠回りして帰ってた。そんな時、源治さんに声を掛けられたんだ。一風変わっていて、もしかしたら、暴力団とか、そういう怖い人なのかもしれないって、思ったんだけど、『お嬢に甘いお菓子を頼まれたんだけど、買い過ぎてしまったから、持って帰るのを手伝ってもらえないか?』って、頼んで来たんだ。その日は雨が降っていて、でも、両手に一杯、包みを持っていた。傘を差していたから、持って行くのは大変そうだなって思って、ぼく、どうせ暇だったし、手伝ってあげることにしたんだ。南区まで歩いたとは思わなかったけど、雑居ビルは覚えてる。ところどころ、記憶が飛んでいるんだ。で、気付いたら森の中に居て…、そこから少し歩くと、お屋敷みたいな大きな家があって、そこのテラスに、着物姿の女の子が座って居たんだ。源治さんが『お嬢』って、呼んでいた。髪が長くて、色白で、百合の花のような女の子だったよ。身体が弱くて、外に出掛けることは出来ないんだって。一緒に暮らして居るのは、源治さんの他に、使用人が2人いるだけで、話し相手も居なくて毎日退屈なんだって。だから、たまに会いに来て欲しいって言われた。でも、いつっていう約束はしていなかったんだ。なのに、彼女の夢を見た後、彼女に会いたくなって、非常用の出入り口に行くと、源治さんが迎えに来てくれていた。それから、彼女の所へ行って、お菓子を食べながら話をして……、で、気が付くと、病院に居るんだ。本当だよ。倒れた覚えは無いし、どうして倒れていたのかなんて、ぼくには分からない。分からないんだ。彼女に会いに行かせて。彼女は悪くないんだ。彼女は何もしていない。きっと、源治さんが何かしたんだ。源治さんと使用人の2人が、彼女を利用しているのかもしれない。だって、源治さんも使用人達も、人間じゃなかった。ネズミとカエルだった。ネズミとカエルの顔だったんだよ!」

「落ち着いて、梗平君。そんな人はいないよ。そんな顔の人は居ないの。だから、落ち着いて。ね?」

「嘘じゃない!ぼく、嘘なんかついてない!」


興奮した柳梗平が立ち上がり、カウンセリングの先生が慌てて駆け寄ったところで、録画は終わった。




「………。」

「………。」

「………。」


マリアも凪も琴音も、映像を見た後、すぐには言葉が出て来なかった。


柳梗平は、嘘を言っているようには見えなかった。

だが、全てを語っているとも、マリアには思えなかった。


マリア達が会いに行った日、帰り際に見せた笑みの意味が、まだ分かっていなかった。



『なんで?この人たちに頼むんじゃないの?———————』



あの言葉の意味も……。



誰に、何を頼むと、柳梗平は思ったのだろうか?



「………。」


マリアの疑問は深まるばかりだった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ