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約束と契約3  作者: オボロ
18/35

#18 阻止



やなぎ梗平きょうへいが動きました。よろしくお願いします。」


小金井こがねい佑介ゆうすけが言った。

沙也さやから思念が送られて来たようだった。


「はい。いよいよですね。」


マリアは、深呼吸をした。



柳梗平が保護された日から8日目の今日。

予想通り、柳梗平は動いたらしい。

マリア達は、8日前に決めた通り、病院の消灯時間に合わせ、南区にある雑居ビルの前に集合した。

B・B達も一緒に行くと言っていたが、黒石神社から8人も行くわけにはいかないと、凪に止められた。


沙也からの報告では、時間で発動する術が掛けられていたらしく、午前2時22分になった直後から、柳梗平は動き出したという。

そして、時間に合わせ、妖が病院まで迎えに来ていたと言うのだ。

妖は3人。

3人とも和服姿で、1人は和傘、他2人はみのと笠をかぶり、顔を見ることは出来なかった。

柳梗平に驚いている様子はなく、和傘を差した着物姿のやくざ風の男に迎えられて病院を出た。

病院を出たところで待っていたのは、かご)だった。

柳梗平をのせた籠は、蓑と笠を被った2人の妖が運んだ。

籠とは思えない、物凄い速さで。


鳩の姿の沙也は、必死に羽ばたき、籠の後を追っていた。


「物凄い速さで、こっちに向かっているらしい。もうすぐ来るぞ。」


沙也の思念で状況を知った小金井佑介が、マリア達に伝えた。

病院を出てから、わずか数分ほどでの到着だ。

もう籠ではないだろうと、マリアは思った。


えた!」


凪が叫んだ。


「………。」


余りの速さで形が分からなかった。

しかし、矢のような速さで何かがこちらへ向かって来るのが分かった。


雑居ビルの入り口付近の空間に歪みが出来始めた。

あちら側への入り口となる為の、渦巻き状に空間が歪み始めた。


あのスピードのまま、あちら側に入られたら止めようがない!


体当たりをしたところで、はじかれるだけのような気がした。


「マリア!矢だ!矢を放て!」

「!!」


マリアは、凪の言葉に従い、念を込め、光で作った弓を引いた。


祓うのではなく、止める!


心の中で強く思い、迫り来る何かに、念で作った矢を放った。


バァンッ‼


真っすぐに飛んだ光の矢は、迫り来る何かにぶつかり、爆発音を立てて、その正体を明かした。


ゴロゴロと転がる3人の男。

和傘も笠も吹き飛び、顔があらわになっていた。

やくざ風の着物姿の男は、ネズミの顔をしていた。

蓑を被った2人の男は、黄緑色のカエルの顔だった。


「ひっ!」


思わず、マリアは声を上げた。



「くそっ!」


ネズミ男は悔しそうに顔をしかめ、起き上がり、籠を見た。


「おい、大丈夫か?」

「ゲコ…、ゲコ……。」


カエルはカエルを心配している。


「いたたた……。何があったの?」


籠は一部が破壊された状態で倒れていて、何が起こったのか分からない様子の柳梗平が、体の大きさに見合わない籠の中から、這いずり出て来るところだった。


「おいっ!小僧を捕まえろ!」


ネズミ男は、カエル男2人に叫んだ。

カエル男2人は、慌てて柳梗平の元へ向かったが、空から舞い降りて来た一羽の鳩が少女の姿に変わり、柳梗平の腕を掴んで立ち上がらせると、小金井佑介の方へと引っ張って走った。


「何?何なの?何が起こったの?」

「いいから。こっちに来て。」


「あのヒト達はどうするの?捕まえる?」


柳梗平を保護出来たことを確認したマリアは、凪に聞いた。

柳梗平を奪われて呆然としているカエル男2人は、捕獲できそうだった。


「捕まえてどうする。置き場所などないぞ。」


確かにそうだった。

捕らえても、連れて行く場所が無かった。


「ぼうっとしているな!行くぞ!」


ネズミ男は叫んで、雑居ビル前に出来上がった渦巻き状に歪む空間の中へ飛び込んだ。


「待って!おい、大丈夫か?」

「ゲコゲコ……」


カエル男2人も、慌てて走り出し、渦巻き状に歪んでいる空間の中へ入った。


「なんで?この人たちに頼むんじゃないの?待って!ぼくも行くよ!離して!離せって!」

「ダメです!落ち着いてください!きゃあ!」


あちら側へ行こうとする柳梗平の腕を掴んで、懸命に引き留めていた沙也だったが、力では負けてしまい、突き飛ばされてしまった。


「沙也!」


突き飛ばされた沙也を見て、小金井佑介が柳梗平に体当たりをした。

倒れた柳梗平に、小金井佑介はまたがり、全体重をかけて動けないようにした。


「柿坂さんに連絡!早くして!」


「あ、はい!」


マリアは急いで電話をした。


「なんでだよぉ!なんで止めるんだよぉ!」


歪んだ空間が消えてなくなるまで、柳梗平は抵抗を続けていた。







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