#12 金石神社の次期宮司
柳梗平が入院している病院に、マリアと凪は、すぐに向うことになった。
今回、マリアは、警察からの捜査依頼を受けるのは、二度目となるわけだが、金石神社との合同捜査協力の依頼を受けるのは、初めてなので、マリアを金石神社の次期宮司と引き合わせる役目が必要であり、その役目を任された榊原が、今回も依頼書を持って来ることになったらしい。
しかし、次回からは、地元の警察署から代理人が依頼書を持って来るだけになるとのことだった。
警察の人間が関わるのは、最小限。
現場への送り迎えも、最小限になるのだという。
神社によっては、送り迎えなど無い方が早く着く場合があるからだと、榊原は言った。
確かにそうだと、マリアは思った。
凪の背に乗って移動すれば、あっという間だった。
「もちろん、公共の交通機関を利用した場合には、交通費の負担はさせていただきますからね。」
榊原は、そう言って、さわやかに笑っていた。
「金石神社の次期宮司は、もう来ているはずです。」
病院に到着した。
病院に到着すると、榊原は、そのままマリア達をロビーに案内した。
金石神社の次期宮司は、病院の待合室ロビーの一角に居た。
警察関係者と思しき人も二人、一緒に居た。
「お待たせしました。黒石神社の月城さんです。」
「はじめまして。よろしくお願いします。」
榊原の紹介に合わせて、マリアもあいさつをした。
「はじめまして、月城さん。警察庁の柿坂です。こっちは小松です。今回は、遠い所から車でお越しいただいてすみませんでした。よろしくお願いします。こちら、金石神社の小金井くんです。小金井くんも初対面かな?」
「いえ、一度会っています。お久しぶりです、マリアさん。今回はよろしくお願いします。」
柿坂は、榊原よりも年上で、ベテランという感じだった。
小松は、榊原よりもずっと若い。
そして、とても不愛想で、とても不機嫌そうだ。
柿坂の紹介に、小松は軽い会釈をしただけだった。
小金井は、生意気そうな顔をしていた。
つんと澄ました感じで、マリアよりも経験があると、自信を持っているみたいだった。
小金井とは、確かにマリアは文化祭の時に、一度、会っていた。
チラシを配っていた際に、少しだけ話もした。
『わざわざイギリスから来て、何やってんの?宮司になりたいんじゃないの?』
『……⁈なんの話ですか?』
とても感じの悪い子だったことを、マリアは覚えていた。
次期宮司だったとは、驚きだ。
マリアが黒石神社の宮司候補であることを知っていての、あの発言だったと思えば、合点がいった。
一緒にいた大人そうな女の子は、神使らしい。
マリアよりも少し歳は下のように見えるが、マリアよりもずっと早くに次期宮司となっていたなら、イギリスから来たというのに、次期宮司としてのお披露目も役目も果たさず、文化祭を楽しんでいる姿を見て、嫌味の一つも言いたくなったのかもしれない。
だったら、仕方のないことだったと、思うべきなのだろう。
マリアは、小金井の心情を思い、納得することにした。
「初めまして、小金井佑介です。沙也のことはご存じですよね。ご一緒出来て光栄です。よろしくお願いします。」
驚いたことに、小金井は、凪には丁寧にあいさつをした。
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
凪も、丁寧にあいさつを返していた。
自分に対しての態度と、凪に対しての態度の余りの違いに、マリアは面食らってしまった。
そして、自分も、沙也という神使に挨拶をするべきなのか、不安になった。
「あの……。」
「沙也です。マリアさん、よろしくお願いします。」
マリアの不安を察した沙也が、マリアに頭を下げた。
マリアも慌てて頭を下げた。
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
「そろそろ、病室にいきましょうか。」
頃合いを見計らい、柿坂が言った。