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約束と契約3  作者: オボロ
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#1 新しい学年の始まり


日本では、新しい学年は4月から始まる。

卒業式は3月で、入学式は4月だ。

マリアが通う都ヶ丘つがおか高校も、4月に新年度を迎えた。


都ヶ丘高校にも、桜の木があった。

イギリスのサクラとは、やはり少し違っていた。


色が少し濃いのかな……?


マリアには、日本の桜の方が、ピンク色が濃いような気がした。



マリアは2年生になった。

都ヶ丘高校には、クラス替えが無い為、津谷つたに美羽みわ沢井さわい萌々ももも、同じクラスのままだった。

代わりに、受ける授業が生徒によって違ってくるという。

希望する進路で受ける教科が決まるらしかった。


「月城さんは、おばあさまの神社、ぐのに、専門の学校とか、行くの?」


マリアが、選択授業を選ぶのに頭を悩ませていると、津谷美和が聞いて来た。

津谷美和は、4年制の理系大学を希望している。

将来は研究者になりたいのだと、津谷は言っていた。


「ううん。そういう学校を出る必要はないんだって。だから、わたし、ここを卒業したら、そのまま神社で働くつもりだったんだけど……、なんか、反対されちゃって……。」


自分が受ける授業を書いて、自分だけの時間割を作るように渡された用紙を見詰めながら、マリアは、苦笑いを浮かべた。




『高校を出たら、ここで働く?』


1年生最後の終業式の後、HRで、担任の平塚ひらつか智美ともみ先生に、進路については家族と話し合っておくように———と、言われて、進学せず黒石神社くろいしじんじゃで働くつもりでいることを、祖母であり、黒石神社の宮司ぐうじでもある琴音ことねに、マリアは伝えた。

しかし、琴音は、そんなことを言い出したマリアに、驚いていた。


『わたしが黒石神社で働く為に、行かなきゃならない学校がある訳じゃないなら、進学する意味は無いと思うし、早く神社の仕事に慣れた方が良いわけだから、就職ってことでいいかな?』


マリアは、琴音が賛成すると、思っていた。


マリアは、いずれ、黒石神社の宮司になる。

宮司になり、黒石神社を守る役目をになう。

その為にも、一日でも早く一人前にならなくてはいけないと、マリアは思っていた。


御弥之様みやのさまから頂いた奇才ちからを、充分に使いこなせるようになりたい。

おばあちゃんにも、凪にも、B・B達にも、安心して頼られる存在になりたい。


高校を卒業したら、マリアは、毎日一日中でも宮司修業をするつもりだった。

しかし、琴音は呆れたように笑った。


『そんなことしたら、あなたの世界が狭くなるだけよ?』


関わる世界が狭くなってしまうと、自身の視野も狭くなる。

視野が狭くなってしまうと、考え方が小さくなる。

一つ所にとどまる宮司だからこそ、広い視野と高い思考力が必要なのだ。


『あなたの世界を狭めてしまうことには反対です。いろいろな人と関わることも修行の一つだと思うわよ。それに、高校卒業してすぐにここで働かせたりしたら、朔乃さくのが何て言うか…。そりゃ、無理して進学する必要はないと思うけど、今しかできないことって、きっとあると思うわよ。』


予想外だった。

喜んでくれると思っていた。

朔乃は、マリアの母親で、マリアの家族は、今もイギリスに居る。

マリアが高校を卒業して、すぐに働くとは思っていないだろうが、それでも、マリアが高校を卒業して、すぐに働いたからといって、朔乃が琴音に文句を言うとも、思えなかった。




「進学しなさいって、言ってるんだったら、取り合えず、手頃なところに行っておけば?」


のんきなことを言っているのは、沢井萌々だった。

沢井は、カッコイイ男の子と出会う為に大学へ行くのだと、真顔ではっきりと断言していた。


「手頃なところって、どこなんだろう……。」


考えれば考えるほど、マリアは分からなくなった。

ただ分かることは、マリアにでも行ける学校に進学するだろうということ。

専門的な分野に進学するわけではないので、選択科目は一般的なものを選ぶことにした。


「平塚先生が後でちゃんとチェックしてくれるから大丈夫よ。受けるべき教科を取っていなければ、必ず教えてくれるわ。」


津谷の言葉を聞き、マリアは安心して時間割の用紙に記入をして、提出した。


結果、3人で受ける授業は、かなり減ってしまった。

マリアが1人で受ける授業もあった。


「お昼は一緒に食べようね。」


沢井が言った。


「はいはい。」


津谷は、そっけなく言っているが、きっと満更ではないはずだと、マリアは思っている。

なんだかんだ言いながらも、津谷は沢井と仲が良かった。

この3人で、また一緒に居られることを、マリアも嬉しく思った。


「うん。約束だよ。」



マリアの新しい学年が始まった。




再び、始まりました。

最後までお付き合いください。

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