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第44話 リリスの苦悩

 リリスはある部屋に監禁されていた。

 部屋の真ん中には丸テーブルと椅子があり、ベッドとトイレ、シャワーまで完備されている。

 とりあえず、この部屋で生活は完結できる。

 着替えと食事や水は定期的に運ばれてきていた。

 窓ひとつ無いこの部屋で、リリスは食事を運ばれる回数で大体の時間と日数を推測していた。予想では、この部屋に監禁されて六日間位だろう。


 リリスには自分を監禁した相手もその目的もはっきりと分かっていた。

 しかし、なぜ犯罪まがいのことまでして、その目的を果たそうとする理由がわからなかった。

 犯人から直接言われたその要求をリリスが飲めば解放される。

 しかし、リリスにはその要求を飲む気は無かった。そのため、監禁は続いていた。

 犯人はリリスを傷つけたり、殺したりする意志はないと分かっている。そのため、この監禁は根比べだとリリスは思っていた。リリスが折れるか、犯人が折れるか。

 そのため、リリスはこの監禁から解放された後のことを考えていた。


「マリウス様、怒っているだろうな。簡単に馬車に乗っちゃったからな~」


 カイルの馬車から飛び降りた後のマリウスの怒りようは想像を絶する怖さだった。

 そもそもリリスは怒られ慣れていない。父、ロランド子爵はリリスを溺愛しており、あまり怒るという教育方針をとっていなかった。主に怒るのはマリウスの役目だったが、理路整然と何が悪かったか怒られるため、怒られると言うよりも注意をされている感じだった。

 そのため、あれほど感情的に激しく怒られたのは初めてだった。ジルなど比べものになら無いほどの恐ろしさ。リリス自身の身体を気遣っての怒り。さすがに、自分がしてしまった直情的な行動に反省するしか無かったリリスだった。

 今回の誘拐もリリスの油断が生んだものといえば、そうなのかも知れない。知り合いだったため油断していた。


「クロエも心配しているだろうな。サリー(りんご、卵)やロッティ、コレットちゃんにも会いたいな。ああ、このままだとコレットちゃんとの約束は厳しいかな。楽しみにしていたのにな」


 遠い故郷の領地からリリスのために王都までついてきてくれたクロエ。リリスにとって、ただの使用人ではない。クロエの一族は長年ロランド家に使えている。そのため、五つ上のクロエは、物心ついたときから一緒にいてくれて、リリスの事を気に掛けて、支えてくれる姉的存在。マリウスと初めて会ったあのときに負った胸の傷を見て、自分の事のように泣いてくれたクロエ。このまま、解放されて帰ったとしても泣かせてしまうだろう。クロエの泣き顔を見るのはリリスにとってもつらかった。


 入学してから変わらず親友のサリー。入学して教室で孤立していたリリスに声をかけてくれた。本人はクッキー目当てよ、なんておどけて言っているが、その優しさをリリスは十分知っていた。そのサリーがせっかく家の近くまで馬車で送ってくれたというのに、こんなことになってしまった。リリスはサリーに申し訳ない気持ちで一杯だった。


 リリスの事を友人と言ってくれたシャーロット。初めは気位の高いだけの嫌みな貴族の一人かと思っていたが、話してみるとお茶目で自分自身の芯があり優しい素敵な女性だった。生まれて初めて誘って貰ったお茶会の帰りでこんなことになってしまって、いらない心配をかけてしまっているのではないかと不安になる。


 可愛い妹のようなコレット。元気になって、興味を持ってくれた畑や野菜の収穫を一緒にする約束をしている。キラキラした目で約束だと念を押されたお茶会。コレットとの約束を守るために、犯人の要求を飲んでしまおうかという考えが頭をよぎった。しかし、そのたびにジルの鼻で笑うような顔が目に浮かぶ。


「いやいや、なんであの人をこんな時に思い出すの?」


 リリスは頭を左右に振って、あのうるさい男を頭から追い出そうとする。

困ったときに浮かぶ顔は頼りになる人か……

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