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第43話 ジルとマリウスの焦り

 しかし、それから三日たってもリリスは見つからなかった。

 進展したことと言えば、リリスらしき人物がどこかの馬車に乗ったと言う目撃者が現れたくらいだった。そして、その馬車がどこの物なのかまでは不明だった。

 どこかの商人のものだったのか、貴族のものだったのか分からなかったが、荷馬車ではなく、きちんとした外からは中の様子が分からない馬車。

 そのため、誘拐の線が濃厚になったのだが、犯人から何の要求もなく、誰が何の為に誘拐したのかわからない状態だった。

 考えられる可能性としては奴隷として誘拐されたと考えられ、ジル達は大規模な奴隷商人の取り締まりを行ったが、リリスらしき人物を見かけた者すらいなかった。


「なぜ見つからない⁉ 王都中を捜索させているというのに!」


 ジルは報告がてらリリスの家に来ていた。


「私の方も手がかりがありません」


 ジルに捜索を依頼した後もマリウスは独自にリリスを探していた。表だって動いているジルとは別のアプローチ。裏社会の連中とコンタクトを取り、金と情報を餌に情報をかき集めていた。しかし、ジルが集めた以上の情報は集められなかったのだった。

 手詰まり。

 そんな言葉がジルとマリウスの頭に浮かんだ。


「しかし、あの女が素直に連れ去られるとは思わないのだがな」

「ええ、お嬢様なら、スキを見て走っている馬車から飛び降りるくらいしそうですけどね」


 実際、飛び降りたところを見たマリウスは本気でそう考えていた。


「本当にその通りだ。それが、目撃者の話ではたいした抵抗もなく連れ去られたらしいのだ」


 ジルは出されたお茶を飲んで、ため息をつく。そのため息には焦りと疲れと不安が含まれていた。決して部下の前では見せない弱気な姿。しかし、なぜかこの金髪の少年の前では、ついつい出てしまう。リリスを探すうちに戦友のような気持ちが生まれたからだろうか。ジルは不思議に思う。しかし、そんな事よりもリリスの行方が最優先だった。


「誰か知り合いを人質に取られていたのか……」

「それとも知り合いが犯人か」

「おい、チビ。めったなことを口にするな。田舎から出てきているリリスの知り合いとなると、学院の生徒と言うことになる。万が一、間違っていたらさすがの俺でも庇いきらないぞ」


 ジルはナイフのような視線でマリウスを睨みつける。それをマリウスは涼しい顔で受け止める。


「そのときは私に全ての罪をかぶせてクビでも切ってください」


 自分は長く生きすぎたので、そう言いかけて口をつぐむ。

 こんなところでリリスを失うくらいなら、何の為に生きているのか分からない。

 マリウスはリリスに出会い、そして助けられた。幼い娘リリーを助けられなかった自分をもう一度やり直すために、マリウスはリリスをこれまで手助けしてきた。それはただのマリウスの自己満足かも知れない。リリスはリリーではない。そんなことは分かっていた。それでも、長く生きすぎた今の自分に生きる力を与えるものは、リリーが出来なかった幸せな人生をリリスに全うして貰いたいという思いだった。当たり前のように成長して、当たり前のように恋愛をして、当たり前のように結婚して、当たり前のように子供を産み育てる。そんな当たり前の事がリリーは出来なかった、させてやれなかった。

 こんな、何が起こっているか分からない状態でリリスを失うわけにはいかない。

 そんなマリウスのまっすぐな瞳を見たジルはふと笑う。


「良い度胸だ。お前がそのつもりなら、俺も腹を括ろう。しかし貴族の可能性があるとはいえ、これだけ捜索して手がかりひとつ見つからないどうしたものか」


 ジルは炎のような色の頭を抱える。

 マリウスも考えていた。ジルとマリウスは王都の隅々まで探した。それでも見つけられない。すでに王都にいない可能性もある。別の街へ連れて行かれたか、最悪、他国へ。

 しかし、それだけ遠くなるとマリウスにも賢者の石の動きが感じられなくなるはずだった。

 まだ、王都周辺で捜索していないところ。

 マリウスは考えた。

 賢者の石の反応が感じられる範囲で、人目につかず、貴族の女性を監禁できるところ。そうして治安部隊にすら情報が入らないところ。

 そうしてマリウスはひとつの可能性に気がついた。


「殿下、ひとつ私に考えが……」

いつの間にか仲良くなっている二人

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