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第19話 リリスの診察

「リリスさん! あなた、何をやっているのですか!」


 突然、服を脱ぎ始めたリリスにシャーロットが叫んだ。

 その声を聞いていたかのようにドアが乱暴に開かれる。


「きゃー! なんで入ってくるのですか! 出て行け!」


 完全に服を脱いでいたリリスは慌てて服で前を隠して叫ぶ。相手が一国の王子であることを忘れて。

 裸の女性を見て、さすがのジルも素直に出て行った。

 それを見て、リリスは大きく深呼吸をして気持ちを落ち着いた後、コレットに向かい直す。


「すみません、コレット様。驚かせてしまいましたね」


 そう言って、にっこりと笑ったリリスは服を外し、自分の裸体を晒した。

 細身にふさわしいささやかながらも形の綺麗な胸。その二つの胸の間に大きな傷が一つ。


「コレット様はご自分の体が恥ずかしいとおっしゃいました。ですからわたしも勇気を出して、この傷をお見せします」


 マリウスと初めて会った時にできた傷。リリスにとって決して恥ずかしい傷ではない。しかし、自分の未熟さの証し。そして女としては恥ずかしい傷だった。


「……それは?」

「わたしがコレット様ぐらいの時に受けた傷ですよ。もう、一生この傷が消えることはないでしょうが、コレット様の体は元に戻るかもしれません。その手助けをわたしにさせていただけないでしょうか?」


 リリスは自分の傷を触りながら、コレットにお願いをする。同じ女性として、コレットが痩せ細った体を人に見せたくないと言う気持ちはわかる。


「元に戻りますか?」

「それは分かりません。しかし、コレット様に勇気を出していただけなければ、絶対に良くはなりません」


 リリスは嘘をついて、絶対に治ると言うべきなのかと思った。しかし、病気を治すと言うことは、長い時間が必要になる。そこを乗り越えるには病気に打ち勝つ勇気を持たなければならない。その勇気を出してもらうのに、ごまかしや嘘を並べたら、コレットはいつか気がついてしまう。一緒に病気に立ち向かうには、患者の信頼を得る必要がある。しかし今のリリスはその方法はただ、正直に隠し事無しに話すことしか知らなかった。

 それで駄目なら仕方が無い。リリスはじっとコレットの返事を待つ。


「……分かりました。お願いします」


 リリスのまっすぐな瞳に押されるように、コレットは布団から手を離して顔を出す。


「失礼します」


 リリスは布団をゆっくりとめくると、コレットの痩せ細った体が出てきた。見るからに栄養が足りていない。食欲が落ちていることは明らかだ。

 リリスは優しく体を触って、診断をする。


「コレット様、申し訳ないですが、こちらに座っていただいて良いですか」


 コレットがベッドに腰掛けると、リリスは膝をコンと叩いた。

 何も起こらなかった。

 リリスはマリウスを見ると、黙って小さく頷いていた。


「コレット様、ありがとうございました」


 リリスはコレットをベッドに戻す手助けをした。その細く軽い体を感じて、マリウスが言った言葉を思い出していた。「この病気はおまえさんの領民にも起こりうる病気だよ」リリスはようやくその言葉の意味を理解した。


「リリスさん、どうですか? コレットは治りますか?」


 シャーロットは上半身裸のまま考え込んでいるリリスに尋ねる。


「シャーロット様、まずは主人に服を着させてよろしいでしょうか?」


 その言葉にリリス自身も自分の格好に気がつき、慌てて服を着た。


「シャーロット様(小麦)、ジル王子(軍事)も交えてお話をさせていただいてよろしいでしょうか」


 その言葉でマリウスが部屋の外で聞き耳を立てているであろうジルを部屋へ招き入れた。


「それで、コレットは治るのか!?」


 ジルは部屋に入るなり、リリスの肩を揺すりながら叫ぶ。


「少し、落ち着いてください。痛いです。肩」


 その言葉にジルは落ち着きを取り戻し、手を離した。


「この病気の回復には家族の協力が不可欠です」

「わかった。コレットが回復するならばなんでもする。それで、何の病気なのだ?」


 リリスはどう説明すれば良いか、ほんの少し考えた後、口を開いた。

聡明な読者諸君には、コレットの病気が分かったはず。

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