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第11話 リリスと賢者の石

「いやーあの時は死ぬかと思いましたわ」

「いや、死んどったわい。儂が賢者の石を使ってなければな」


 焼き上がったナッツクッキーを取り出しながら、リリスがマリウスに話しかけると、マリウスは空のグラスにワインを注ぎながら答えた。


 あの時、矢はリリスの心臓を綺麗に貫き、服を真っ赤に染めた。

 誰もがその姿を見て諦めた。マリウス以外は。

 マリウスは壊れてしまったリリスの心臓の代わりに賢者の石をリリスの体に埋め込んだのだった。

 賢者の石とは奇跡を起こす石と言われ、空想上のアイテムだと思われていた。

 馬車の中でその話を聞いたリリスもマリウスのホラ話の一つだと思っていた。

 しかし、子供のリリスでも分かる、死んでいただろう傷が塞がり、リリスが今でも生きていることが、リリスの体の中に賢者の石があることを証明していた。しかし、賢者の石も完全ではなかった。リリスの胸には醜い傷が残った。

 そして、マリウスが他人の生気を吸い取り、若返ったのを実際見てしまうと、マリウスの言葉が本物だと信じるしかなかった。

 悠久を生きる魔法使いにして、世界を旅して知識を蓄えた賢者。

 それがマリウスの正体だった。


 あのときの山賊はマリウスが生気を抜いて動けなくなっていただけで、誰一人死んでいなかった。そして山賊達は約束通り、リリス直属の部下となり、マリウスのアドバイスの元、荒れ地を耕し、暑いロランド領の特性を生かし、サトウキビを大量に育てたのだった。

 聖ネオトピア王国の砂糖の多くは海外からの輸入で高価であった。マリウスはそこに目を付け、砂糖で財政を立て直すことにしたのだった。

 あれから、たった五年でなんとか財政は黒字に転じることができた。それは砂糖だけでなく、ラム酒や絞りかすから紙を作ったりしてなんとか収入を増やしていった結果だった。そのほとんどはマリウスの知恵と知識によってもたらされた。

 あのとき、一人の老人を助けたことにより、ロランド親子の命は救われ、なおかつロランド領はなんとか財政を立ち直したのだった。


 しかし、大きな問題があった。サトウキビでは領民の日々の食事にはならないということだ。

 あくまで嗜好品。金になるが、その金を領民の食料に替えなければ何の意味もなかった。

 そのためにも他の領地と友好な関係を結ぶ必要があった。

 領地の事で勉強することが山ほどあるリリス。勉強自体はマリウスが教えてくれるため、学院へ行くつもりは無かった。

 他の領地との絆を作るため、泣く泣くリリスは王立マルケニア学院に入学したのだった。

 そしてそんなリリスを心配してマリウスも従者として学院へやってきた。しかし、他人の生気を吸い取り生きながらえるマリウスの正体を隠さなければならなかった。そのため、わざわざ人通りの少ない一軒家を借りて、生活をする事となったのだった。しかし、リリス達ロランド領はまだまだ貧しく、本来貴族が住むような家は借りられなかったのだ。

 リリスの目的から、王都防衛軍を率いる立場になるだろうジルと仲良くなるメリットを、リリスは見いだせなかった。

 軍隊では、腹は満たされない。それどころか食料を大量に消費する。当然、最低限の武力は必要だと分かってはいるのだが……。


「しかし、なぜあの軍事バカはあんなところにいたのでしょうね? 確か王族が住んでいる王宮は反対方向でしょうに」

「さあな、王子には王子の事情があるのだろう。それよりも今度の日曜日は例の納品日じゃろう。大丈夫か?」


 リリスは学費捻出のため、いろいろな内職をしている。その一つが刺繍仕事だった。

 小さいものはハンカチから、服まで頼まれた刺繍をする。

 手の職は身を助ける、という考えのもと、両親が反対する中、リリスは刺繍をはじめ、料理など覚えられるものは何でも手を出した。

 そのため、勉強をしながらでも刺繍ができるまでになっていた。

 美しい花を刺繍しながら本を読んでいた。そして、万が一あの王子に出会わないように、明日は別のルートで学院へ行ってみようと考えていた。

第8話で出てきた賢者の石ですよ~

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