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第9話 五年前 山賊襲来

「山賊です! 馬車から決して出ないでください」


 御者が主を守るために、のぞき窓を開けて叫んだ。

 山賊? こんなところに? リリスが驚いている間に、護衛騎士長の指示が飛ぶ。


「サドラ! 馬車を出せ! 閣下達を逃がすのだ!」


 護衛騎士長の悲痛の声が響き、それに応じて馬車が動き始める。


「サドラ、外の様子はどうなっている?」


 ロランド子爵が御者のサンドラに声をかける。


「護衛騎士様に山賊どもを食い止めていただいておりますが、数が多く非常に危険な状態です。……ああ!」


 御者が悲鳴を上げながら馬車を止めてしまった。


「山賊が……」


 その言葉で小さなリリスにも外の様子が推測できる。どうやら待ち伏せをされていたようだった。

 ロランド子爵は家紋の鷹が施された愛剣を握り、愛娘を守ろうと馬車の外に出ようとする。

 いつもにこやかなロランド子爵が険しい顔をしている。その顔を見てリリスは今にも泣き出しそうになる自分を無理矢理、押さえつけた。

 そんなロランド子爵を老人が諭す。


「危ないですぞ」

「これでも剣術に自信はある。娘だけでも逃がさねば……」

「お父様……」


 ロランド子爵が馬車の扉に手をかけた時、老人がロランド子爵の肩に手を置いて止めた。


「私が行きましょう。私でも時間稼ぎぐらいにはなるでしょう。その間にお逃げください」

「恐らく狙われているのは私たち親子だ。あなたを巻きこむわけにはいかない」

「どこで野垂れ死んでも迷惑の掛からないこの老人と、未来と責任のあるあなた方とは比べるまでもないでしょう。ひとときでも娘を思い出させていただいたお礼です」

「申し訳ない……ではせめて、これを持って行ってくれ」


 老人は鷹の意匠の入った剣を受け取ると「お元気で」と言い残して、馬車の外に出て行ってしまった。


「……お父様」

「わかっている。しかし、ご老人の厚意を無駄にする訳にはいかない。サドラ、道がひらけたら馬車を出せ!」


 怒声、悲鳴、金属のぶつかり合う音が、馬車の外に鳴り響く。

 その中、ゆっくりと馬車が動き始めた。

 リリスは殺されるかもしれない恐怖と、老人を巻き込んでしまった後悔で胸がいっぱいになり、両手をギュッと握りしめていた。

 あの場所で看病だけをしていれば、老人は巻き込まれなかったかもしれない。

 たとえ、向かう方向が同じだとしても、老人ひとりを襲わないだろう。私たちが襲われたのを見て反対方向に逃げることもできたはずだ。

 なぜ、馬車に乗せてしまったのだろうか。

 リリスがそんなことをぐるぐると考えていると、御者席からサドラが大きな声を上げる。


「閣下! 援軍です!」

「なに、そうか! 助かった」


 ロランド子爵は馬車ののぞき窓を開けて、騎士団がこちらへ向かってくるのを確認するとホッとした表情を見せる。

 ロランド子爵は馬車から降りると、騎士団に指示を出した。その後ろをリリスが付いて来ていた。


「よし、急ぎ街まで戻るぞ」

「お父様! 先ほどの老人を助けに行きましょう」

「何を言っているのだ。危険だぞ」

「でも、その危険の中、あの老人がわたしたちを逃がしてくれたのですよ。お父様! 命懸けで助けてくれる人を見殺しにするような薄情な人間に、わたしはなりたくありません。今ならまだ間に合うかもしれません。万が一間に合わなかったとしても、お墓のひとつくらい立ててあげるのが、わたしたちにできることではないのですか!」

「リリス……」

「閣下! 恐れながら、我々も姫様の考えに賛成します。そのご老人を助けに行きましょう。山賊をそのままにしておくのも、街道の安全に関わります」


 騎士団長がリリスの意見に賛同してくれた。

 これだけの騎士団がいれば、山賊なんてへっちゃらなはず。リリスは先ほどまでの心細さが吹き飛んで父親の顔をじっと見た。


「お前たち……分かった。サドラ、至急引き返せ!」

「わかりました。閣下」


 騎士団と一緒に襲撃現場に戻ったリリスたちが見たものは、倒れた男たちの中に立つ一人の男性。年の頃は二十代後半だろうか。金色の髪の男性は手に剣を持っていた。

ロランド子爵、剣の腕には自信はありますが、施政は保守的、そして家族思いのお父さんです。

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