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12.運命の予報

 

 光魔法通信で報告があった。

 懲罰会に出し抜かれたらしい。



「奴らめ、我々を利用した」



 懲罰会は王国中に犯罪者のネットワークを持つ。しかし、もちろん犯罪者は一枚岩ではない。

 別の勢力が存在した。

 懲罰会は魔法機動部隊の戦いで徐々に力を失い、それらの勢力との抗争に陥っていた。

 だが、それは罠だった。



「我らに別の勢力を摘発させ、その後を襲われた」



 巨大な盗賊組織の情報を掴み摘発。

 これまでに盗まれてきたお宝の数々を発見し、回収。

 しかしその道中待ち伏せを受けた。



 お宝の中には強力な魔道具の数々が含まれていた。

 おまけに弱体化した他勢力を吸収し、懲罰会の力は増大した。

 おそらくずっと以前から準備を進めていたのだろう。

 配下の者を敵対勢力に送り込んでいた。

 わかってはいたが一筋縄ではいかない。




「ついにこの時がきましたか」



 おれはベリアム男爵の元を訪ねることにした。



 ◇


 ベリアムはあきれた様子だったが普通に屋敷に招き、来客として扱った。


「まぁ、まぁ、ロイド卿! また来てくださったのねぇ!」


 奥様はおれを大歓迎してくれた。


 どうやら本当に夫が『懲罰会』の会頭であることは知らないらしい。



「ロイド卿と話がある。すまんが外しておくれ」

「はいはい。もう、しょうがないわね。ごゆっくり」



 彼女がメイドに手を引かれ部屋を出てしばらく、沈黙が続いた。

 おれたちは長机を挟みにらみ合う形で互いに立っていた。


「宣戦布告ということかな?」

「むしろ講和をまとめるためにきたと思って下さい」

「内務大臣と財務長官では私の負けだ。だが一つ取り返した。戦力は整っている」

「それはこちらも同じこと」

「ロイド卿、力を生み出せば欲する者が現れる。それは宿命だ。『魔導軍再編計画』、結構じゃないか。進めたまえ。私は君にとっての宿命となろう」

「宿命、確かにそうかもしれません」



 ここでベリアムを殺しても、犯罪者たちの枷を外して自由にするだけだ。

 かといって、懲罰会を野放しにして『魔導軍再編計画』を進めても、武器や人材の横流し、果ては乗っ取りも考えられる。しかも現状売り買いされている魔導士は救えない。彼らのビジネスを止めなければ魔法職の待遇は根本的に解決されない。


 貴族は彼らを買い、身代わりにする。

 そうやってどんどんこの国の魔法技術は後退していく。



「取引きしませんか、我が宿命」

「……それはお勧めしない。君は光であってくれ」

「別に賄賂を渡そうとかじゃないですよ。あなたが内務大臣になってくれたら、ぼくはあなたとあなたの家族を救います」

「ユニークな提案だ。だがあいにくと困っていないよ」



 ベリアムを表舞台に引っ張り出す。

 会頭ベリアムが地方の男爵であり続けているのはそれが懲罰会を動かすのに適しているからだ。

 傀儡を使って影で政治を動かす。

 用済みになれば消す。


 内務大臣ではそうはいかない。

 監視の目が上にも下にも存在する。

 軽率に部下の首を切れば、他の部下や王宮に目を付けられる。


 グスタの二の舞になる。



「私に貴族の説得をさせたいのだろうが私には何の得もない」

「そうでもないです」

「まさかこの私が内務大臣という要職を欲するとでも? これまでとやることは変わらず王都に拘束され監視されるだけだ」

「でも、懲罰会は残りますよ?」

「わからない。これは脅しか?」


「あなたはぼくの家族や大切な人を襲いませんでしたね」



 おれとエリンが一番危惧していたのはそこだ。

 ここには魔法力のある戦力が大勢いる。

 この本隊を動かせば、こちらも犠牲が出ていたかもしれない。

 だが、ベリアムはそれを他組織壊滅に使った。

 結果的に出し抜かれた形になったが。


「あなたは悪党だがフェアだ」

「買い被りだよ。君は私の家族を人質にできたのにしなかった。そういう戦いは望まないだけだ」



 おれは領地を後にすることにした。

 屋敷を出ると寒風が吹きすさび、雲が空を駆けていく。



「まぁ、もう帰ってしまうの? 泊まっていかれたらいいのに」

「ロイド卿はお忙しい身だ。引き留めるな」

「男爵、提案の件、考えておいて下さい。では……あっとそうだ。言い忘れてました」




 おれはベリアムに告げた。

 重要な情報だ。




「今日中に大雪になります。対策を講じた方がいい」

「君は神にでもなったつもりかね?」

「確かに伝えましたよ」


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